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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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26.吸血鬼の緊張

翌日――


アリシアは待ち合わせ場所へ向かうクガの背中を追う。


「……」


今日も会話はない。

恐らく自分(アリシア)が話かけていないからだ。

思えばクガは自分から話し掛けてくることはあまりなかった。


クガは今日のクマゼミとの話し合いに自分(アリシア)も呼んだ。


そこにどういう意図があるのだろうか……


アリシアは視線を落とす。



「おっす……」


「あぁ……昨日ぶりだな……」


クガが声を掛け、セラが応じる。


「っ……ここは……」


待ち合わせ場所……

そこは地下43層……隠しボス部屋の入口付近であった。


セラの後ろには、ユリアとミカリもいる。


普段なら飛んでいることが多いドローンも今日は飛んでいない。

要するにオフレコだ。


「悪いな……来てもらって……」


「いや、それでどうした? クガ」


「え、えーと……な……」


「……」


……


その瞬間、胸が跳ねる。

なんだこれ……? 緊張か……?

この私が……?

そうだとして、私はなぜ……緊張しているのか……?


……


クガの口元が開く。


「ヒーラーを探してるんだろ?」


「「「「っ……!」」」」


「サイオンのようなエリートではないが、心当たりがある」


「っっっ……」


「ん……? なに、にやけてるんだ? アリシア」


「へっ……? に、にやけてなどいない……!」


「そうか……?」


……


「クシナという再生士の女の子なんだが……」


クガがクマゼミに紹介したのは、コボルト達の城を攻めた時に出会った再生士のクシナであった。

昨晩、クガはクシナに連絡して、意思確認を行っていたのだ。


「え? 再生士?」


ミカリが反応する。


「あぁ、再生士なんだが、配信に挑戦したいみたいだ。ダンジョン経験は浅いが、本人によると学生時代はぶいぶい言わせていた(?)らしいからすぐに戦力になれるよう頑張るとのことだ。治癒能力については申し分ない」


「なるほど……」


「"ク"シナだから、パーティ名変えなくて済むね……」


ミカリがそんなことを言う。


「元々、変えるつもりなんてなかったけどな」


「……」


セラの言葉にクガは何かを考えるように少し沈黙する。


「クガ、ありがとう。本人と話してみたい。連絡先を教えてほしい」


「承知した」


セラとミカリは前向きのようだ。

ユリアは下を向いて黙っていた。


と……

セラのところに何やら通知が来る。


「ん……? リスナーからだな…………えっ……?」


「どうかした?」


「アラクネが…………イビルスレイヤーに討伐された……」


「っ……!?」


……


イビルスレイヤーとは、かつて、アリシアとクガが討伐したA級パーティ:モンスタースレイヤーの兄貴分と呼ばれるS級パーティである。

セラはリスナーから提供された情報を元に、イビルスレイヤーの動画を再生する。


その映像では、確かにイビルスレイヤーがアラクネを仕留めていた。

どうやらクガとの戦闘で弱っているところを狙われたようだ。


そして、さらに……


"おーい、吸血鬼ちゃーん、駄目勇者観てるかー?"


「っ!?」


アラクネ討伐後にイビルスレイヤーのメンバーがなんとアリシア、クガに向けたメッセージを送っていたのだ。


"最近、調子に乗ってるみたいだけど、結局、S級ボスは倒せてないよなー? お前ら……"

"なんやかんやチキってるんじゃねえの?"

"魔物ってのはこうやって分からせてやらないといけない"

"見えるか? このアラクネのだっせぇ姿が……"

"分かるよな? 次はお前らだ……"


そこで映像は終了する。


「ほほーん、なかなか活きがいい奴がいるじゃないか」


アリシアは口角をあげる。


クガは少し頭を抱える。面倒なことにならなければいいが……と。

いや、それは希望が薄そうだ。


と……


「あ、すまん……少しだけクガと二人きりで話してもいいか?」


セラが割り込むようにそんなことを言う。


「……? あぁ……構わない……」


そうして、クガとセラはその場を離れる。


「「「……」」」


残された女性三名……


若干、きまずい……




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