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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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19/99

19.実質眷属

「な、な、なんで?」


 アリシアは口をパクパクさせるようにしながら、眷属了承の理由を確認する。


「だって……」


 人狼はもじもじしながら頬を染める。


「だって……優しかったから……」


「っ!?」


「クガさんが私を連れ出してくれた時、『大丈夫か』『よく頑張ったな』『心配するな』と何度も励ましてくれたのです。私、そんな優しい言葉をかけてもらったのは生まれて初めてで……」


【え、それだけ?】

【おい、それだけなら俺でも言えるぞ】

【たったそれだけのことで?】

【クガ、そこ代われ】


 理由の実施難度の低さに、怒りのコメントが溢れ、クガは苦い顔をする。しかし……。


「……な、何だって……? 私はそんな言葉、かけてもらったことないぞ」


 アリシアは別方向でクガに抗議する。


「いや、アリシアは一度もそういう状況に陥ったことないだろ」


「ぬ……? た、確かに……」


 アリシアは何かを考えるように少し俯く。


【おいおい、吸血鬼さん、急に静かになってどうした】

【何人か犠牲になるかもしれない予想を言ってもいいか?】

【や、やめるんだ】

【吸血鬼さん(私も少しは弱いフリをした方がいいのだろうか……)】

【ちょっと横になります】

【チャンネル登録解除、さよなら】


「な、何を勝手なことを言っているのだ! そんなこと思って……ない」


【今の間はなんだ?】

【チャンネル登録解除、さよなら定期】

【ニヤニヤ】

【クガとかいう人類の敵は追放されて当然】


 そのようにプチ炎上している間に……。


「グレイ……」


 部屋の外からアリシアと対峙していた大型の偽人狼が現れる。


「お前……まだ足りぬか……?」


 アリシアがそんなことを言う。が……。


「あ、お兄ちゃん」


「「っ!?」」


【あー、ご兄妹でしたか】

【言われてみると確かに似てるかも】

【グレイは人狼ちゃんの名前かな?】


 どうやらグレイというのが人狼少女の名前であるらしい。


「グレイ……これは一体、どういう状況だ?」


「お兄ちゃん、私……運命の人を見つけたの! 私、クガ様の眷属になる!」


「っ!? な、なんだと……!?」


「この方なんだけど……」


「……グレイ……お兄ちゃん、小さくはないダメージを受けて、目が少しおかしくなっているのかもしれない。グレイが指差しているのが人間に見えるんだ」


「合ってるけど」


「ちょっ! グレイ……まてまてまて、正気か!?」


「とても優しい人で……ほとんど一目惚れだった」


「ひ、一目惚れ……!? ぐ、グレイ……落ち着くんだ……一目惚れなんて碌なことにならんぞ! ひどい浮気性でDV男の可能性だってあるんだぞ」


 言いたい放題だな……とクガは嘆息たんそくする。


「第一、相手はどう思っているんだ!? グレイの一方的な想いになっているんじゃないか?」


【どの口が言ってんだ笑】

【この兄妹、確かに似てる。盲目的なところが】

【クガはやべえ奴に好かれやすい】


「一方的でも構いません! というかお兄ちゃんの意見なんてどうでもいいです。ひとまず私はクガさんの眷属ってことでよろしいですか?」


 グレイがクガ、あと同じ方向にいるアリシアの方を見て、確認する。


「んー……私の眷ぞ……」


「嫌です」


 アリシアの発言の途中で、グレイはニコニコしながら即答する。更にクガにグイグイいく。


「クガ様、契約を交わしたあかつきには、いつ何時、如何なる状況でもお呼びください。できれば一日最低一回はお呼びください」


「え? お、おう……」


 グレイの勢いに圧倒されるクガを余所に……。


「……まぁ、いいか! 私の〝何者か〟の眷属なら、これもう実質、私の眷属でしょ」


 アリシアはよくわからない理論を展開し、メモに書き込んでいく。


 =========================

【SS級ボスになるには】

【済】侵略者を三〇人狩る

【済】A級パーティを狩る

 ・S級パーティを狩る

【済】眷属を従える(S級ボス) ← NEW

 ・ボスの城を構える

 ・SS級ボスの枠を空ける

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 いいのかそんなざっくりで……? と思うクガであった。





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