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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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18/99

18.vs人狼

 アリシアと人狼が対峙する中、クガは人狼に囚われていた少女を部屋から連れ出す。


「大丈夫か?」


「……はい」


 ひとまず言葉はしゃべれるようであった。その女性は比較的若く見えた。

 といってもダンジョンにはアンチエイジング効果があると言われており、特に女性でダンジョンに潜っている者は実年齢よりかなり若く見えるため、実際の年齢を推定するのは難しい。ダンジョン探索にそこそこ女性が多い裏の理由である。

 また、人狼の趣味なのかひどく傷んだ服を身に着けており、クガは気の毒に思う。


「ひとまずこっちへ」


「あ……はい」


 クガは彼女をひとまずもぬけの殻であった別の部屋に避難させることにする。


 ***


「っ……!」


 紅の触手が人狼に襲いかかる。人狼は頑強な爪でそれを弾くようにして防ぐ。


【やっちゃえ、吸血鬼さん!】

【魔物同士のガチバトルって初めて見るかも】

【悪役VS悪役って意外と燃えるな】


 クガはアリシアの方にドローンを残していた。理由はシンプルで、絵面を考慮してのことだ。ドローンさえ残しておけば、ドローンの抜粋コメント音声発信機能により、アリシアはコメントの一部を聞き取ることができる。


「悪役じゃないっての!」


 アリシアはコメントに少し不満気ではあったが、攻撃の手を緩めることなく、人狼を攻め立てる。


「っ……」


 やや劣勢に立たされている人狼は、力強く地面を蹴り、触手から逃れるべく、横に逸れる。


「っ……!」


 が、しかし、アリシアは瞬間移動でもって、その距離を詰める。

 人狼は避けることを諦めたのか、その鋭く巨大な爪をアリシアの華奢な身体に向けて、振り下ろす。

 しかし、そこにアリシアの姿はない。


「遅いな」


 再び瞬間移動を使い、今度は人狼の背中を取る。人狼はすぐさま下がりながら反転しようとする。しかし……。


「ぐぁあ!」


 アリシアの触手の先端、紅の刃が人狼の身体を捉える。


「い、痛えぇ……」


 人狼は左太もも、脇腹を損傷している。


【つっよ……S級ボスを圧倒か……】

【ボス強さ考察でも吸血鬼さんはS級ボスより強いってされてたけど、まさかここまでとは】

【うぉおおおおお! 俺達の吸血鬼さぁあああん】


「うーん……」


 コメントの盛り上がりとは裏腹にアリシアはどこか釈然としない様子であった。


「お前さ……なんか弱くないか?」


「っ……!」


【えっ……? どういうこと?】

【確かにいくら吸血鬼さんが強いとはいえ、S級相手に圧倒しすぎか】


「お前……本当にS級ボスか?」


「……クックック……いつ誰が僕がS級ボスだと言った?」


「……!?」


「そういえば、君が連れていた人間……戻ってくるのが遅くないか?」


「っ……!!」


【あ、クガ……(察し)】

【いつも災難だなぁ、クガは……】

 

 ***


「ねぇ、お兄さん……人狼ゲームって知ってますか?」


「……?」


 少女がクガにそんなことを聞く。

 なんだか随分と余裕があるのだなとクガは思う。


「あ、あぁ……やったことはないが、概要はな……」


「あのゲームって、人に化けた嘘つき人狼が夜に村人を襲うんですよね……」


「そうなのか……細かい設定までは知らなかったが……」


「ねぇ、お兄さん……」


「ん……?」


「えーとですね、私が人狼なんですよ」


「……?」


 ***


 クガはどこに行った……。


 アリシアは急いで部屋を出る。

 偽人狼はしばらくは動けないであろうレベルには痛めつけた。


「クガ!」


 アリシアはひとまず一番近くの扉を開く。しかし、もぬけの殻だ。


「っ……」


 アリシアは唇を噛みしめ、次の扉へ向かう。次々と扉を開けていくアリシア。そして……。


「っ……!」


【あっ!】

【よかった、まだ生きてる】


 八つ目の扉の中にクガと少女はいた。


「クガ……!」


「……お、アリシア……どうした? そんな顔して……」


 アリシアは今までに見たことないほど、焦燥を浮かべていた。


「気を……気をつけろ! そいつが本物の人狼だ!」


「あ……うん……さっき聞いた」


「あぁ……! …………え?」


 アリシアの顔から急にこわばりが解ける。


「じ、実はな……彼女からカミングアウトがあってな」


「COって言ってくださいよー!」


「あ、うん……CO……」


【本当にこの子が人狼なのか】

【なんかよく見ると、かわいいな】

【俺は最初から気づいてた】

【後だし乙】

【いや、かわいいことにはガチで気づいてたから】

【そっちか、すまん】


 リスナーからかわいいと評される人狼は、ふわっとした白銀の髪、身長は155センチ程度で魔物としてはやや小柄。意志の強そうな吊り目がちではあるが、大きな瞳は彼女の愛らしさを引き立てていた。タイプは異なるが、アリシアに劣らない程、整った顔立ちをしていた。


「それでクガさんが私を眷属にしたいって言うから……」


「いや、何度も言ってるけど、俺じゃなくて、アリシアな……!」


「なので、了承しちゃいました」


「は……? えぇええ゙ええ゙ええ!?」


【は……?】

【は……?】

【クガは魔物の美女に好かれる星の下に生まれたのか?】

【許せん。決めたぞ。クガとかいう背信者は俺が始末する】


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