表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/99

17.人狼の館へ

「ここが人狼の城か」


 目の前には古い洋館のような建造物がある。


 ダンジョン地下45層――。


 アリシアとクガはそこに来ていた。


【吸血鬼さんの行動力よ】

【まさか人狼も当日に攻め込んで来るとは思ってないだろうな】


 初めてのS級ボスに突如、挑むこととなり、クガも多少、緊張する。アリシアがいるとはいえ、たったの二人……通常であれば四人パーティで万全の準備を整えて挑む相手。あの人狼を眷属にするという目的自体にあまり乗り気になれないのもあるが、単純に戦力的に大丈夫なのだろうか……と思う。


「見張りもいないみたいだし、さっさと入場するぞ」


 アリシアにはそのような恐怖感はないらしく、正面からスタスタと入場していく。


「……? 誰だ……!?」


 アリシアがあまりに堂々と入場するものだから、中にいた者達は一瞬、戸惑い……そして警戒する。

 洋館に入ると、そこはかなり広いホールとなっていた。

 そして、二足歩行で上半身が狼の姿の魔物が数体いた。今日、ミノタウロスをストーキングしていた魔物よりは一回りか二回り小さな個体達である。

 人狼と区別するために、〝狼男〟と呼称されているようだ。


「誰って……吸血鬼ヴァンパイアだ。この城にいるボス、人狼を眷属にするためにやってきた」


「っっ……! 謀反むほん者だ! ボスをお護りするぞ……!」


 そう言うと、狼男達は一斉にアリシアに襲いかかる。

 しかし、次の瞬間には、アリシアから伸びた触手が次々に狼男達に穴を空けていく。


「ぐぁああああああ!」


「ふむふむ……これくらいの強さか……しかし数はそれなりにいるな……」


 洋館内部から次々に狼男達がホールに入ってくる。


「ならば……」


 アリシアは右手を前に出す。

 そして、その中指にはめられた契約の指輪がぼんやりと光り出す。


【ん? なんだ?】

【何が始まるってんだ】


 次の瞬間、アリシアの周りに大量のワープエフェクトが発生する。

 そして、ワープエフェクトの中からは、きりっとした表情の柴犬コボルト達が現れる。


「「「「「「わんおわんおー!!」」」」」」


【柴犬部隊きたぁああああああ】

【かわよ】

【なんだこれ? 召喚的なやつか?】


 コメントは盛り上がる。

 一方、急な出来事に狼男達もたじろいでいる。


「わんお」


 そんな中、柴犬コボルトのリーダー、コボルが重厚な「わんお」でアリシアの指示を仰ぐ。


「奴らをやれ……補助はする」


 そう言うと、アリシアは自身の左手親指を噛み、そこから出た紅い光を柴犬コボルト達に振り撒く。クガにはそれが強化バフの効果であるとすぐに理解できた。

 ミカリがかける付与魔法と類似のエフェクトが発生したからである。


【え、なにそれ? 俺にもかけて】

【吸血鬼さんのけしからん血液を浴びるように浴びたい】


 特殊性癖の持ち主達もにわかに活気づく。


「はぁ!? けしからんくないわ!」


 アリシアは少しぷんすかする。と……。


「有り難き幸せ」


「っ……!?」


【しゃべったあああああああああああ】

【さっきから何がどうなってんねん】

【めっちゃイケボやん】


 アリシアの血により強化バフされたコボルは言葉を口にする。なお、コボルの声はダンディであった。


「よし、コボル、奴らは頼んだぞ」


「承知しました。ただ、あるじ……一点だけ……私の名は〝ワワンオ〟になります」


「そ、そうか……す、すまない……」


 たじたじとするアリシア。


 やっぱり適当につけただけじゃないかと……クガ。


 しかし、そうなると他のコボルト達もワとンとオを組み合わせた名前なのだろうか……それは流石に覚えられない……と心配になるのであった。


「では、行くぞ! 野郎どもぉお! あるじに報いるのだ!」


「「「わんうおぉおおおおおおお!!」」」


 雄叫びと共に柴犬コボルト達が狼男達に向かっていく。


【うぉおおおおおおお、熱い!】

【頑張れ、柴ルト達ぃいい!】


「さ、ここはワワンオ達に任せて奥に行くぞ。クガ」


「お、おぅ……」


 アリシアはそう言うとホールの両脇にある二階へと続く階段の右に向かっていく。


「行かせるかぁあああああ!」


「っ……!」


「ぎゃいん」


「大丈夫ですか? あるじ


「あぁ……ありがとう」


 アリシアの侵攻を妨げようとする狼男を柴犬コボルトが仕留める。

 アリシアは何事もなかったかのように、歩いて階段を登り始める。

 階段を登り切るとそこは廊下となっていた。廊下の両脇は扉が続いている。アリシアは大して躊躇することなく、手前から次々に扉を開けていく。しかし、部屋の中はどれも、もぬけの殻であった。そして最も奥の部屋の扉を開く。


「あ……」


 そこにはミノタウロスをストーキングしていた魔物が大きな椅子に脚を組んで座っていた。やはり通常の狼男よりも一回りか二回り大きい。


「よぉ、また会ったな」


 アリシアはにやりと微笑む。


「くっくっく……まさかそちらから来てくれるとはね……僕のミノタウロスをたぶらかす君達を合法的に始末できる」


【僕のミノタウロスって……】

【俺のなんだが】

【いや、俺だろ】


 リスナー達がミノタウロスの所有権を主張していたその時、ドローンが何かを映し出す。


「ん……?」


 人狼の脇に、首輪で鎖につながれた人間とおぼしき女性がへたり込むように座っていた。


【誰かいる】

【え……? 探索者か?】


「……なんだ? その子は……?」


「あ? まぁ、趣味みたいなものだ……」


「悪趣味な……ミノちゃんもそうやって束縛するのだろう?」


「は? するわけがなかろう……! 彼女は特別だ……!」


「戯言を……クガ、その子を連れて行ってやれ」


「いいのか?」


「あぁ……人狼は私がやる」


「わかった。ある程度、安全なところへやったら戻る」


 そうして、クガは鎖を断ち、女性を部屋の外へ連れ出す。


 一方、残されたアリシアは人狼に向かって不敵に言い放つ。


「やはり、お前は少し分からせてやる必要がありそうだな」


「それはこっちのセリフだ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【作者新作】

<新作のリンク>

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ