紛争
ヨーズの眉間にはシワが寄っていた。セラのために紛争に出向いたのであるが。押し寄せる敵の大群を見て尚且つ叫ぶ。
「よええよグリム伯爵の軍隊い!」
まあ暁の星プラススヴァルトとウーシャン、紛争程度では負けるのが難しい。そもそもドラゴンより強い二人がいて戦場を蹂躙できないのがおかしいくらいだ。おまけにスーシェルが爆薬だのハイポーションだのマナポーションだのを無尽蔵に提供している。
ちょっとまあ敵側が学習能力なくて弱かったんだろうなとは思う。今その戦場にいるヨーズはがっかりしているのである。セラフィーってこんな気持ちなんだろうな。圧倒的に勝つのはつまらないものなのだ。
数千人の軍隊と聞くと脅威のはずなんだが、ヨーズも無双してるので雑魚である。横にはナイセントスことエルフの弓兵ナイスもいる。余裕だった。人の中では暁の星傭兵団は強者ばかりなのである。第一王子アレクの要請で動いているのでかなり自由に戦えてもいる。……相手が第一王子派なのだがいいんだろうか。まあ本人は王位継承権を降りたがっているのでいいんだろう。しかし敵の動きが不気味だ。
「逆に自領の人間を殺すために前線に出してるのか?」
ヨーズの勘は当たっていた。つまり人間を滅ぼすために前線に出してきている。セラフィーの里を滅ぼしたのはこいつらのボスの策略だったのだとなんとなく分かった。気持ち悪い。
後ろからは機人兵がじわじわ出てきているのである。流石にヨーズたちの弓でも一撃で倒すのは難しいのが機人兵だ。そして命なきゆえにいくらでも出てくるし回収されて再生されてまた出てくる。……命のある人間の兵士を前に出す必要あったか? 本当にここの領主は人が嫌いなようだ。グリム伯爵だったか。倒さねばならない相手らしい。
怒りと共に敵を殲滅しきれない自分達の弱さに腹が立ってくる。
「ウーシャンさん、スヴァルトさん、頼むぜ!」
「おっけーい!」
「ワホン!(任せたまえよ!)」
正直に言ってレベル百八十超えが二人もいるだけで楽勝ではあるのだ。機人兵のレベルアベレージは六十から八十だろうし。
「私の薬で強化してあげるわぁ!」
なんかヤバい台詞を吐いてる錬金術師もいる。まあ安全に魔力や力を強化してくれる薬らしい。
それでも数で圧されている。流石に千を超える命知らずの兵隊とはやっていられない。ヨーズも少しずつ前に出ていく。ダンジョンアタックで鍛えたのは別に前線メンバーのカートやカルヴァインたちだけではない。ヨーズたちもしっかり二十レベルほどあげている、のだが。
「くそったれ、多いし硬いんだよお!」
今回戦場に出てきた暁の星メンバーは後衛ばかりだ。武闘大会に出ているメンツは出てきていない。だが弱いわけではない。ヨーズもナイスもいればアイリスもこちらに来ていた。聖女になりかけている僧侶は攻撃も回復もバフもたっぷりかけてくれる。実に頼もしい。前線を張るメンバーがいないのが困っているところだ。味方の騎士も大して強くないのでアイリスは回復ばかりしている始末。スーシェルがマナホーションを作っているので支えられている。
後衛でいればポーションとかを飲むタイミングはあるが、物資も無尽蔵ではない。アンとハル、パーバルがいてくれるのでそれでも物資は多いのだが、どうにも機人兵が多い。徐々に圧され始めているのだ。味方の兵士たちが弱すぎる。しかも敵は魂のない機械の群れ。
「セラの気持ちが分かる気がするわ。気持ち悪いぜ、魂のない敵の群れ。ちょっとは怯みやがれっつーの」
徐々に押し込まれ、ヨーズも怪我を負い始めている。前線でスヴァルトとウーシャンが頑張っているがいかんせん数が多すぎる。攻撃も無尽蔵なレーザーだ。どういう原理か分からないがとにかく尽きることなく攻撃が放たれている。そんな中でスヴァルトが下がってきた。
「おいおい、どうして下がってきたの?」
「わふおん」
「狼語はわかんねえよ!」
「わふおん(セラフィーを連れてくる)」
次の瞬間、スヴァルトは消える。
「食らえ、四大元素砲」
前線ではウーシャンが大技を放つ。そのためにスヴァルトは下がってきたのか?
とにかく押され気味の展開が少し覆ったのは事実だ。しかし敵も本気だ。数は一万近くに増え、レーザーが無尽蔵に放たれ、味方兵士は倒れていく。ヨーズも流石に攻撃を受けすぎた。意識が遠退く。
その時、後ろに強い気配を感じ、ヨーズは振り向いた。
そこには黒いコートに白い革鎧を着けた、小さな少女が、あり得ないくらい馬鹿デカいハンマーを肩にかけて、炎に包まれた砦からゆっくり歩いてきていた。
「よく頑張ったな、助かるぜ」
「き、来たのか、セラフィー」
死人も甦ると言われるセラフィーのヒールが戦場の騎士たちにふりそそぎ、トリシューラ、生者が残らない破滅の大砲が戦場に放たれた。機人兵は殺す。彼女の望みはそれ一つ。
「わりい、手間ぁかけさせた」
「最初からスヴァルトにはヤバそうなら私を呼ぶように言ってたからな。しかしまた数が多いな。一万くらいいるのか? 雑魚でもここまで多いと辛いな」
セラフィーにしてみれば、雑魚は雑魚であるが。殲滅が始まる。
セラフィーの大好きな戦場です。ハッスルします。




