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強者

 つまんないな。それがセラフィーの感想だ。力だけやたら大きくなったところでセラフィーに勝てるはずもない。レベルが優位に働く世界ではあるが、実際に積み上げた戦闘経験がセラフィーは桁外れなのだ。流石にそれを埋める術は経験を積むしかない。力だけを積み上げても無駄なのだ。実質このスライム魔人の身体能力はセラフィーを超えている。しかし、無駄だ。ただ力だけ強くても届くはずもない。ただのでかいだけの的である。


 それで勝てるなら誰も苦労しないのである。レベル差を埋めるだけではセラフィーには届かない。そこまで戦闘経験を実際に積み上げてきたのだ。セラフィーの戦闘力は計り知れない。それを知った暁のメンバーは技を極めることに注力してきた。だからほぼ全員がこの大会で上位に食い込んだのだ。剣聖とか騎士団員はほぼセラフィーに倒されたがそれは仕方ないことである。


 セラフィーは戦場を望んで生まれ変わったのだ。戦いに身を置いて生きてきた。五才からゴブリンを殴り殺し、猪を殴り仕留めて生きてきた。セラフィーのセンスは伊達ではない。戦場で一人、戦い、勝つことこそが彼女の望み。ドラゴン相手に昼夜問わず戦い続けたのは伊達ではない。


「力だけで勝てるもんかよ。流石に侮りすぎだと思うぜ。積み上げたもんと手っ取り早く得た力で競合できると思われたら流石にムカつくわ」


 セラフィーの能力、それは戦闘センス、スキル、魔法、魔術、その全てを複合した積み上げてきた完成形。力だけで上回ろうなど、馬鹿にするにもほどがある。圧倒的な力だけで勝てると思われては困る。


「まあ生命力は感じるな。楽に死ねなくなっただろうが遊んでやる。せいぜい後悔するがいい」


 セラフィーの一方的な蹂躙が始まった。もはや語るまでもない、力だけではセラフィーには勝てないのだ。とは言え、セラフィーも魔力による力押しから入るのだが。


「ディバインサンダー、ディバインフレア。さあ、削れていく肉体を再生するといい」


「なんでだあー! おかしいだろう!! 力ではすでに我が上回っているはずだアーー!?」


「力だけで勝てるかよ。馬鹿なのか」


 かつてどこかの誰かが言ってたが、力持ちだから戦闘に勝てるわけではない。筋トレマニアが戦闘に強かったら武闘家はみんな筋トレだけしているはずだ。そのような事実はない。組手やカタをしない武道家なんてほとんど聞いたことがない。


 セラフィーのスキルは傍若無人なまでに力だけのスライム魔人を削る。そもそも物理攻撃はセラフィーの十八番ではないのである。魔法攻撃こそがセラフィーの真骨頂。バフなど加えて殴れば確かに物理的にも脅威なのだが、トリシューラなど魔法系の大技がセラフィーの奥の手なのである。物理無効などお笑い草にしかならない。魔法攻撃も無効にしてくるといい。打ち破るので。セラフィーのスキルの前では全て物理であった。レベルを地道に上げ続けることで磨き上げたテクニックを持って一方的に蹂躙するだけだ。レベルこそ強さだとセラフィーは思っているが、インチキでレベルだけ上げることが強くなる方法ではない。その過程、工夫、努力、計算、思考錯誤、経験が強さを作る。その過程があってこそ、レベルこそパワーと言っているのだ。


「セラフィーが強すぎる」


「団長、やはり三年はダンジョンに籠ろう?」


 兎獣人のマイトはセラフィーとの力の差が分かったようである。しっかり修行しなければ全くもってセラフィーの足手まといにしかならない。気付いたのだ。蜥蜴獣人のナガルは尻尾を振って賛成している。パールすら青ざめている。


「勝てるのかな、あれに」


 セラフィーは強すぎる。今更ながらにその差を思い知ったパール、カルヴァインたちであった。三年ダンジョンに籠るのは決まりだ。


「雑魚が力だけで勝てるとか意味分かんないこと言うんだよな。一億倍の力でも一発も当たらなかったらそりゃゼロだぜ」


 高空から光の翼で浮き上がるセラフィーはひたすらに神聖魔法攻撃を加え続けている。反撃など及ばない以上、勝てるはずもない。ただのサンドバッグだ。一応酸を吹き掛けたりしているが、上空にいるセラフィーは僅かな挙動で躱している。当たらない。当たらない以上ダメージはない。力が強くても意味がない。そこには絶望的な力、武力の差があった。


「さて、力だけならエルダードラゴンにも匹敵してるんだが全く技がつたねえ。それでどうやって私に勝つつもりか知らねえが」


 セラフィーは相棒の黒銀をもう一振もしていない。


「滅びる前に言い訳を聞こうか」


「き、き、貴様、なぜそこまで強いのだあっ!?」


「悲しみが最も人を強くする。ただ、それだけだ」


「私も身を捨ててこの力を得たのだ! 負けるわけにはいかぬ!」


「そりゃご苦労なことで」


 セラフィーは地球にダメージを与えないために地上に降り立ち、巨体の下に滑り込み厳かに唱える。


「神聖魔法太陽属性、太陽爆発(ディバインフレア)、星属性、収束(コンバート)拡大(ワイド)拡大(ワイド)拡大(ワイド)絶対(アブソリュート)、『太陽神の円環スダルシャナ・チャクラ』」


 セラフィーにはスライムを滅ぼす程度、造作もない。それが神の領域を脅かすものだとしても。絶対の術式によりあらゆる防御を貫く、絶望の光輪は会場を丸ごと引き剥がすように天へと放たれた。


「くそったれえええええええええ!!」


「貴様の神に祈れ」







 当たらなければどうということはありませんね。



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