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エルニアの頼み

 ある日、セラフィーは宿、かりんで一人酒を飲んでいた。もともと単独行動の多いセラフィーだが最近は人のいる場所で飲んでいることも多い。今日はしょうが焼きと、牛肉とキノコ炒めのサラダと枝豆で生ビールを飲んでいる。セラフィーは長く飲むのでおつまみも多く食べる。


「またセラが美味そうなの食ってる。ビール飲んでるのも珍しいな」


「カルさんも飯か?」


「トンテキもらおうかな、あと白飯と生中と」


「渋いな」


「和食好きだし」


 もともと日本のゲームに侵食されかけた世界なので醤油や味噌もダンジョンで取れる。百分の一くらいだがゴブリンが米とか小麦のカードをドロップする世界である。アイテムカードは破るとアイテムに変わるが、例えば米とか10キロとかもある。セラフィーはインベントリに米カードを五十枚くらい貯めていたりする。


 黒の森ダンジョンが植物ダンジョンなので米とか小麦とか野菜は大量にドロップしたし、ドラゴンも狩りまくったので食料庫のようになっているセラフィーのインベントリである。


「そういえばエルニアお嬢様からセラに依頼があるらしいから聞きに行ってくれ」


「エルニアさんか……」


 セラフィーはエルニアが苦手である。もともと貴族と付き合うのは好きではないが(好きな人いなさそうだが)、エルニアは好意を思い切り向けてくる。友達や恋人を作りたくないセラフィーは困っていた。しかし依頼となれば仕方あるまい。エリさんのコンサートが終わったら話を聞きにいこう。エリさんが舞台に上がる。


「今日もよろしくお願いしまーす!」


 セラフィーとカルヴァインがデレデレとエリの歌を聞いていると、ガラの悪そうな男がステージに向かう。エリが少し殺気を漏らすとその足は一旦止まった。一曲歌いきると殺気を弛めた。本気のエリの殺気なら殺してしまうので指向性を持たせた上でちょうど足がすくむ程度の殺気をぶつけたようだ。セラフィーはその技術に感心したが同時にエリさんのステージを邪魔されたことにハラワタが煮えくり返っていた。エリも気づかぬような無音の歩行で男二人のうしろに回り込み、一撃で気絶させてから宿から放り出す。目覚めの魔法を使って強制的に起こしたあと本気の殺気をぶつけてからOHANASHIする。


「テメェラどういうつもりだ? 死ぬ覚悟はできてるんだろうなぁ?」


「ひ、ひいえええ……」


「お、お許しをおおぉ……」


 許すかボケ、とすり潰しにかかろうとすると邪魔が入った。


「も、申し訳ない聖女殿、連れが失礼した! おら、てめぇら土下座せんかい!」


「は、はいいぃ……」


「すんましぇ~ん……」


 地元のマフィアかなんかだろうか、他人がキレてると落ち着いてくる。まあただで許す話ではないが。エリさんの二曲目聞き逃してるし。


「わたくし、ミリオンと申します、聖女殿とエリ様には接待させていただきますのでお暇な時にこちらまでお越しくだされば……」


「……カジノ?」


 名刺あるんだ。セラフィーは賭け事はそんなに嫌いではない。ドワーフたちは酒を飲んでは簡単な賭け事をしていたものだ。それに裏の組織と話ができれば深い情報が手に入るかも知れない。それにエリとのデートも魅力的である。すっかりセラフィーはミリオンの策略に乗った。分かってて乗る分には問題ないだろう。


「行かせてもらう。今夜は用事があるので、そうだな、闘技大会開催の前には行こう」


「有り難うございます。ご容赦感謝いたします。おら、お前ら、喧嘩は相手見て売れや!!」


「はいぃ……!」


「すぃやせん親分んッ!!」


 親分って言っちゃったな。たぶんわざと絡ませたな。こちらと縁を結びたいらしい。銀髪で眼鏡をしているので年が分かり辛いがずいぶんと若い親分である。


 おっと、三曲目前に帰るか。このイントロは「冒険者」だ。初めて聞いた時の曲である。あわてて引き返すセラフィーだった。二曲目なんだったのかなぁ。





「セラさまあ!!」


「おわあっ!?」


 その夜、エリの曲をしっかり堪能したあとでエルニアの部屋へ向かう。護衛が立っているが二人ともセラフィーのファンだとかですぐに通された。……なんのファンだ?


 そしてエルニアに飛びかかられるのである。しばらく胸に顔を埋めて猫ならゴロゴロ言いかねない感じで抱きついてくる。……ゴロゴロ言ってるな。


「ゴロゴロ……」


「猫じゃないんだから、離れてくれ……話を聞こう」


 どこかの殺し屋のような口調で依頼を促す。内容としてはいつもどおりの治療の依頼だが……。


「相手は私の友人なのですが」


「アウスローナに友人が?」


「こちらに来てから知り合いました」


「……貴族か」


「貴族ではないですね」


 貴族じゃないなら安心か、と一瞬思ったが、続けてエルニアは、王族です、と呟いた。


「勘弁してくれ……」


「けっこう重篤な症状のようでして、私がセラ様に治療を受けた件の話になって、ぜひに、と」


「マウちゃんもいるだろう……」


「お二人に診てもらいたいと」


「マジか……」


 どちらかといえばセラフィーもマウもいなか娘である。セラフィーは血だけは王族が入っているが本格的な教育を受けているわけではない。まあ傭兵聖女にそんなもの求めないとは思うが。


 服は治療院の聖女服があるので大丈夫だろう。いつものように無口を装っていれば大丈夫なはずだ。


 おそらくマウに話が通っているんだろうが、マウのことだから不安で震えているんじゃなかろうか。セラフィーからも話を通しておこう。あとアレク王子もそういえばそんな話をしていた、と思い出した。王城に乗り込むのは既定路線、か。






 エリの新曲は書いてますけど難しいんです。作詞は難しいなんて当たり前ですけどね。



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