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セラフィーの休日

 ちょっと可愛いです。



 一応カルヴァイン団長とガムマイハート副団長に許可を取って何人かメンバーを連れていく。なぜかウーシャンとスヴァルトも協力してくれた。頼もしい。ちなみに雇用主のアレク王子も了承済みだ。


 グリム伯爵領は先日レハナを攻めたベキヘム子爵にも援軍を出していたらしい。野心の強い人物のようだ。争っている相手のトリエント伯爵も半機人のため、この二人は表向きは敵対しているということになる。裏は調べなくてはならない。


 まずグリムに潜入するが、兵の数が多い。機人兵が普通にうろついている。適当に調べたら抜け出して仲間と合流し、当初の予定通りトリエント伯爵の傭兵として動くべきだろう。





 その頃セラフィーは暇を持て余していた。ギルドを訪れるも誰も暁のメンバーはいない。武闘大会組のルシアもいない。訓練をしているらしい。セラフィーは実力を隠すために大会まではもう訓練には参加させないとカルヴァインが決めた。第一王子との話し合いも向こうが忙しく、進んでいない。武闘大会時期に突然時間を取るというのは無理があった。


 ギルドに入ると二メートルほどのデカい男に絡まれた。


「なんだチビ、お前なんかがギルドになんの用だ」


「……」


 アウスローナは治安が悪いと聞いて、実はこういうのを楽しみにしていたセラフィーだが、他にやりたいことがあったのでとりあえず軽く殺気を当てた。いきなり殺気を当てれば決闘になってもおかしくはないのだが、セラフィーの殺気である。大男はすくんで足が震えていた。後ろに転けて失禁しなかっただけ大したものである。


「私はドワーフだから見た目どおりじゃない」


「お、おう、そうか、そういえば耳がちょっと尖ってるな。すまんすまん……」


 それだけいうと男は転げるように逃げた。セラフィーの殺気にその場にいる全員が当てられたので誰も笑わない。つまんないな、と、セラフィーはさっさと奥の酒場にいく。


 死神の気配を感じて振り返る。カウンター席に見知った法衣を着た骸骨がいた。箸で牛丼を掻き込むとビールをあおる。ここのビールはキンキンに冷えているが「かはーっ、生き返るぅ~!!」とか言ってる。あんた生き返ったら消滅するだろ。なんで普通に町に入ってるんだモンスター。「ヨハさんいいのみっぷりー! も一杯行く?」じゃないんだよ隣の見知ったダメエルフ師匠。なんだこの光景。骸骨がどうやって食ってるんだ。あと師匠はそいつ倒して。


 セラフィーはひとしきり心の中でツッコミを入れてからなるべく離れた席に着く。


 注文をしてからインベントリから裁縫道具を取り出す。ちくちくちくと凄まじい早縫いで、あっという間にぬいぐるみの熊さんができた。短時間なのに凄まじい完成度で見ていた女性陣は思わず拍手した。


 ぬいぐるみが縫い上がって少しすると注文したメニューが来た。出来合いの物なのかいやに速かったな、と思いつつもセラフィーはそれにフォークをつける。お供はグラスのブランデーだ。


「んふふ……」


 皆がいるところではなかなかできないひとときを過ごす。うしろからカルヴァインとガムマイハートとウィーが見ていることには気づかない。


「セ、セラがぬいぐるみと一緒にデザートを食べてる……!」


「チョコケーキにタルトだと……?」


「あのぬいぐるみ手縫いよぉ……!」


 セラフィーが病気になったのか、なにか悪いものを食べたのか、もともと乙女なのよぉ、と三人はついつい騒がしくなる。セラフィーはそれが聞こえてしまい、口いっぱいのチョコケーキをそのままに冷や汗を流す。バレてしまったら仕方ないので再びモグモグやり始めた。控えめな甘さがブランデーによく合う。没頭して食べているとすぐに無くなった。


 とりつくろうように手羽元の煮込みを頼んでぬいぐるみをインベントリにしまう。


「いやいや、ごまかせないからな」


「セラフィー、熱はないか?」


「隠さなくていいのにぃ!」


 熱ないわ。ガムマイさんはあとで話をしようか。そうセラフィーが思ったのも仕方なかろう。


 もともとセラフィーは戦闘以外では女の子らしいところがあるのだ。一人で部屋にこもる時もケーキなどを買ってきていたりする。エルフの友人セリナなどは部屋がいつも甘い匂いなのを知っている。一度は内緒にするからとご相伴に預かったこともあった。セリナも武闘大会に出るので裏の訓練所にいたのだが、出てきて三人と話をする。


「あれ、バレちゃったの? なんでセラ人目のあるとこでやっちゃったの?」


「……冒険者ギルド限定ケーキがお持ち帰り不可だったんだよぉ……っ!」


「切れなくていいじゃない。これから堂々と食べられるわよ」


「発想の転換……っ!」


「そうか、セラ甘いのもイケるんだな」


「中身がアイリスと入れ替わってないか?」


「セラちゃん一緒にデザート食べに行かなぁい?」


 上層部にバレたから仕方ないやという謎理論で、それからセラフィーは甘いもの好きを隠さないことに決めた。どのみちこっそりケーキを買っているところを見られるのは時間の問題だったが。


 開き直ってセラフィーはテーブルいっぱいのケーキを注文して四人に「食え」と、押し付けた。死なばもろともである。


「いや、実家でこの手のデザートよく出ていたから好きだけど」


 カルヴァインは貴族なのでとても食べなれた手つきだった。くそう、似合ってやがる。


「甘いものは胃にクルんだよな……」


 ガムマイハートはやはり見た目違和感がないがあんまり好きではないらしい。


「やっぱり甘いものが一番よねぇ」


 ウィーはオカマなので全く抵抗がない。


「また一緒に食べましょ」


 セリナに至っては普通にスイーツ仲間だった。


 ちょっと敗北感を感じつつもセラフィーは目の前のスイーツに熱中する。マンゴープリンうまい。ブランデーもちびちびやっているが。


「ケーキにブランデー使うから合うとは思うんだけど香りが変わっちゃうのももったいなくない?」


「まあな。でも甘いものとかフルーツはお酒に合う」


 アルコールを分解するのには糖質と水が必要だ。事前にお米を食べてからチェイサーを飲みつつお酒を飲むと酔いが覚めやすく長く飲める。まあセラフィーが酒好きなだけなのもあるが。


 そのあとは普通に飲み会に移行した。他の仲間が来るまでにスイーツは残っていたがセラフィーは気にしないことに決めたので、武闘会参加のメンバーにはセラフィーのスイーツ好きはバレた。ちなみにウーシャンとスヴァルトとルシアは同室になることが多いので知っていた。口止め料のお高めのスイーツが無駄になったと気づいてちょっと落ち込むセラフィーだった。






 のちに全員にバレる。



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