訓練、剣士
はっきり言って時系列が乱れる。朝から夜までやることが多すぎるのでまずは闘技大会前の訓練がどう運んだかを見ていこう。
セラフィーが全員の面倒を見る。誰一人反論しなかった。暁の星メンバーでもセラフィーは強さの桁が最低二つ違う。ただ実際に戦って実力を見せるのはやめておく。暁の秘密兵器だし仕方ない。
まずは有力なパール姐さんからだ。
「パール姐さんの得意な敵っている?」
「んあ? んー。……人型かなあ。ゴブリン、オーク、オーガ、トロール、この辺り」
「逆に苦手は?」
「スライム系は駄目だな。あと触腕とか多いやつ。虫も難しいな」
「つまりパール姐さんは、一撃にかけるタイプで手数が少ない」
「全くだ、その通り」
「解決策はある。手数の多い技を一つ作る」
「だよなぁ……」
「威力はレベルで上がるけれどまずはそのスタイルを作り身に染み込ませることを始めよう、どうする? 魔法ならどの属性にする? 物理はお薦めしない」
「まあ金がかかるもんな」
投げナイフは有効なのだが金がかかる上に使う技量を養わないといけない。これはとても時間がかかる。セラフィーは知っていたから身に付けた。思考の死角を突くのは戦闘では当然の作法だ。
「始まりから負けてるんだよなぁ」
「それは気にしなくていい。手なんていくらでもある。習熟することが大切だ」
なので、損ではあるが習熟度の高い投げナイフを結局パールにはやらせた。魔法をやるならじわりとやる。宿に帰ってから魔力の練り込みを教えよう。武道で言えば……四股? それが一番合ってるくらい。しんどいが。
「鬼か」
「鬼にもなる」
「そか、そうだよな」
大切なものを守るためなら、当然鬼になる。セラフィーは。
次にカルヴァインだが……。
「限界を見なきゃ越えられない。地平線の向こうに行くんだ!」
できておる。下手にセラフィーの技術を乗せたらかえって下手くそになるパターンだ。どこかの名門プロスポーツチームが選手を潰すのがこれだ。アドバイス要らないのである。むしろ健康管理のスペシャリストだけつけておけばいいのだ。自分で技を研究する。賢い手合いにあれこれ言うと迷うだけだ。求められたアドバイスだけする。
次はカートか。カートは伸び代多すぎて変な癖をつけなきゃ大丈夫だし、わりと素直で学習能力は高い。手をつけるところがないんだよなぁ。だから。
「なんで俺だけ走り込みなんだよおオオオオお!?」
「才能があるからだ」
「マジか?! よっしゃあああああああッ!!」
……素質があるからだ。他意はない。鯛食べたいな。カルパッチョにしよう。
剣といえばもう一度カルさんなんだけど。
「サンダーブレイド!」
「ぎょばばばばっ!?」
雷の魔剣、相手は死ぬ。哀れヨーズは犠牲になったのだ。
「カルさんこそ手をつけるところがないんだよなぁ。カートみたいに戦術が甘くないしバランスも読みも隙がない」
「ほめるね」
「ほめるしかないからな」
「打ち合う?」
「夜のベッドでならな」
「!?」
やった、口でカルさんに勝った。まあそんな気は毛頭ないのだが。
次はマイト兄さんだ。この人は上手い。後衛のマイト兄さんは時間稼ぎの守りの剣なんだがそれがいいのだ。昔将棋の名人に守りの名手がいたが、それを彷彿とさせる。
「当たんないね! なんだよマイトやるじゃん!」
「やらないと言った覚えはない」
「くっそ攻め辛れええ!!」
パールをして攻めあぐねている。前衛に回っても良いくらいだ。そうすると弓の腕がもったいないんだよねぇ。なんというか使いどころが難しい。後衛の要石ではある。そこに置くなら力がわずかに足りない。
「セラはよく見てる」
「いや、ほとんど直感だけどね」
マイトに挑んでくる者もいる。カートだ。走り込みばかりやらせても強くはならない。当然やらせる。
マイト対カートである。名試合の予感がした。その場にいる冒険者たちもわらわらと見に来る。小さい試合という雰囲気はない。
セラフィーは戦闘狂なのでもちろんかぶりついて見る。飲み物は自前のブランデーだ。
「いくぜえ兄貴!」
「来い」
ウサギと狼なら狼が勝つと思うだろうが、この勝負は狼がウサギに挑むものだ。その辺りも面白いなと思いつつドワーフはブランデーをなめる。
二人とも長剣なのでヒラリヒラリと躱しながら打ち込む。時代劇のように鍔迫りはしない。武器が傷むのに普通にやらないと思うんだがみんな大好きなんだよな。ロマンなのか。
足元を狙うカートに対し一対一なら有効な突きを放つマイト。どちらが上かは一目で分かる。実直なカートの攻めも悪くはないが明らかに経験値で負けてる。閃きで状況を打開するような天才ではない。
残念ながらカートでは勝てない。ウサギの兄さんやるな。セラフィーの回復をあてにして突っ込む人ではあるが、割合状況を見てのことだったのかもしれない。知恵も立つのかな。
剣士部門ではカルヴァイン団長とマイトの戦いで締めとしよう。団長には魔法剣無しで戦ってもらう。
「魔法無しはなかなか辛いんだよなぁ」
「オレも、普段は弓だ」
「負けられないよなぁ」
瞬間二人が消える。凄まじい速さで攻め合いつつ訓練場内を走り回る。セラフィーもこれを捕まえるのは大変かもしれない。
「やるなマイト! 給料安くない?」
「団長には夢をもらってる。高いくらいだ」
暁の団員には事情があるんだろう。その辺りをセラフィーも聞きたくなってきた。しかし、二人とも強いじゃん。セラフィーはひたすらに感心した。
セラフィーなら二人とも一撃だけど野暮は言うまい。
結果は接戦を制して団長が勝った。カルさんもやるなぁ。
武術大会にセラフィーを出してはいけない。それを思ったのは全日程を書き終わってからでした。




