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移動前会議

 もうすぐストック尽きます。



 暁の星傭兵団はついにクレイアーツ王国レハナを立ち、アウスローナ王都ローネルシアに向かう。目的はアウスローナで毎年開かれている武闘大会である。集まったのはカルヴァイン、ガムマイハート、ウィーギネストス、アン、ハル、パーバル、セラフィーだ。


「俺も飲みに誘ってくれ……」


「私もぉ……」


「飲み会したいですね」


「したい……」


「私は自分でやってるのが好きだけどねぇ」


「パーバルさんは料理できるもんな」


 ガムマイハートもウィーギネストスもアンもハルも口々に飲みの話をする。パーバルとセラフィーは一人でも自分でつまみを作って飲むつもりだ。なんとなくかわいそうである。


「はい、それじゃ始めるぞ。飲み物はそれぞれで頼んでくれ。深夜開催ですまんが長くなるぞ」


「目覚めの魔法と体力自動回復をかけておく」


「すまん、セラ」


 カルヴァインがまず進行する。この世界の僧侶の魔法は便利である。ブラック企業でもへっちゃらだ。そもそも深夜になるのは、休みだと昼間は全員の集まりが悪いのだから仕方ない。バラバラに飲みに行ったりする。


「今後の予定だが、大目標としては魔王国、その後、星王国に戻る。ここまでは良いだろうか」


「意義ありません」


 議長役のガムマイハートにアンだけが答えた。他も首を縦に振る動作だけ見せる。まだ眠いのかも知れない。明日からは一週間の休暇なのでこのタイミングが良かったらしい。その後は旅立つのだ。面倒ごとは先に済ませたい。


「直近の目的はアウスローナ首都、ローネルシアだ。そこで武闘大会に参加する。セラにも出てもらうが暁の主要メンバーは全員出てもらう。逃げるなよ?」


「今の段階じゃあ全員(セラに)一撃だからな」


 ガムマイハートとカルヴァインは自分達が実力不足なのは十分感じているようだ。これでも上位の傭兵団なのだが、セラフィーのレベルが高すぎる。


「目的はここである程度地力を探っておいて、魔王国での訓練が主目的だ。勝つ必要はないから力を尽くしてもらいたい。これは出発式で言っておく」


「発言を」


「ハル」


「一週間の最初の数日、買い出しに回りたいけど必要なものは」


「食料とかなら私もかなりストックがあるので日用品を買っておくといいですね。あと武器のストックは必要です」


 ハルにはアンが答えた。


「武器はセラに頼って大丈夫か?」


「それくらいはする」


「どのみち、買い出しにはセラフィーにも来て欲しい」


「いいぜ」


 みんなで買い出しと聞いて、実はワクワクしているドワーフ。中身は人大好きな少女のままだ。少しずつ回復していく。


「ローネルシアは治安もよろしくないが貴族も質の悪いのが集まっていると聞く」


「間違いないが……」


 ガムマイハートの懸念にはカルヴァインが答える。そういえばカルヴァインはアウスローナ貴族である。質の悪い貴族が多いなら決闘用の手袋を五十本くらい用意しておこうとセラフィーは考えていたがアウスローナが滅びるのでやめておいた。


「カルさんはなんでアウスローナを出て星王国へ? 山越えだし一人で?」


「ああ、うん。その話はまた今度な」


「わかった」


「仲のいいカップルだねぇ」


「からかうなパーバル。食料はどれくらい?」


「リーダーも意外と奥手だね。食料は私のインベントリにも入ってるしハルにも持たせてあるよ」


「私は、日用品、服飾、アイテムを、主に運搬する。アンは、売り物を入れている」


「ローネルシアで高値で売れそうなものはだいたい仕入れましたよ。主に薬品でかさばらないので余剰はあります」


 インベントリには同じ製品ならいくらでも詰め込める機能がある。最大九十九個だが。これが流通を破壊しないのは道中に魔物が常に現れることやそもそもダンジョンには多様性があり、地方特産品が大陸全土に渡りきらないなど理由がある。物価は安定している。パーバル、ハル、アンだけでも相当な量だ。


「武器は私が持ってもいいが」


「いや、俺も持ってるからね、インベントリ」


 セラフィーの申請をカルヴァインが突き返す。なんのことはない、ここに集まっているのは全員転生者だ。


「私も持てるわよぉ」


「戦略物資に関してはウィーとハルに任せる」


「オッケイよぉ」


「わかった」


 アウスローナ首都まで東よりに北上し、たどり着くまでわずか一週間。南の小国家群は小さい。しかし。


「私の調べたところではゾンビダンジョンがスタンピードを起こしたものの戦力が足りなくて駆逐に至ってないらしいわぁ」


「ゾンビか……」


「ガムマイさんなんで苦い顔してんの? 私がゾンビごときに負けるわけないじゃん」


「はは、専門家の聖女様がいた」


「確かにな」


 聖女セラフィーはアンデッド退治の専門家だ。むしろゴブリンよりやりやすい。カルヴァインもガムマイハートも一瞬で納得した。


「聖女ちゃうわ」


「最近は逆に無理がある気がする、そのセリフ」


「まあでも確かにハンマー振り回す聖女もあんまりいないわねぇ」


「むしろ最近は拳で殴る聖女とか主流ですけどね。野蛮聖女ばかりです」


「なんか言ったかアン」


 カルヴァインはセラフィーを聖女として掲げたい。むしろ神殿では聖女服をまとっているし間違いなく聖女なのだが。ウィーは最近の聖女感が壊れていると思っていた。アンはオタクである。当然最近のムーブメントが殴り聖女なのは知っている。セラフィーの規模の聖女はこの大陸にはいないが。そもそもこの聖女人命を尊重しない。じろりとアンをにらんでいるし。


「聖女がいるからアイテムも魔力回復中心」


「買うよ」


「緊急措置、なので、無料」


 ハルの物資は暁の星のものではあるが、主力はセラフィーである。出し惜しみはしない。セラフィーが立っていれば団が無くなることはない。ハルレシオルは小人である。同じくらいの身長のセラフィーが暴れまわるのは爽快でもあった。


「そもそもセラの魔力って尽きるの?」


「当たり前だろ。むしろドワーフだから魔力少ねえ」


「へえ、そうなのかい。無尽蔵に見えるがねぇ」


「パーバルさんは私が全力で戦ってると思う? 回復が追いつく範囲でしか魔法を振るってないよ」


「そうなのかい?」


 セラフィーは魔力回復大を持っているのでそうそう魔力切れにはならない。それでも魔力切れに備えて投げナイフやポーション類は常備している。だが普通にこれまでの戦場でセラフィーが三割以上魔力を使ったことがないのだ。無尽蔵に見えても当然である。


「物資は十分、スタンピード対策もある、セラ抜きでも行けそうだし、物資購入に関してはアンに一任する」


「承りました」


「じゃあ、そろそろ寝るか。解散」


 カルヴァインは少し旅を楽しみに思った。しかし、平坦な道のりになるとは思ってもいない。カルヴァインもまごうことなき軍人である。


 アンデッド退治ではすまない冒険が始まる。






 この章が終わったらしばらくストックを貯める予定です。



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