レハナ伯爵家の動向
面倒事はだいたい貴族が受けます。
「暁の星が近日中にレハナ出るってよ」
「本当ですかお父様!」
「アウスローナの武闘大会目当てですか」
レハナ伯爵、ローレットの言葉に娘、エルニアは慌て、息子ユーティーもいつもの無表情を崩して意表を突かれたような顔をした。
「そうみたいだねぇ」
「私もアウスローナに行きますわ!」
「傭兵じゃないんだから戦争した国に行けるわけないだろぉ」
「くっ、貴族なのが憎いですわ!」
「身分を隠して行くとか」
「それですわお兄様!」
「いやいや、普通にバレたら不味いからね?」
娘が敵国に密入国するのも不味いけれど戦力が一気に減るのも不味い。傭兵団がいくつもアウスローナに向かうことになっている。逃げた魔人族のこともあるし機人兵に狙われてるらしいのも不味い。しかし国の兵じゃない傭兵にどこそこに行けとかどこにも行くなとか命令できるものでもない。騎士にでもしておけばよかったか。セラフィーの目的がある以上はいつか出ていったのだろうが。まあ爵位をつけなくてももぐらの里には帰るんだろうが。
「ぶっちゃけ大使派遣することになってるからお前ら二人なら行けるんだよなぁ」
「お父様、後で折檻ですわ」
「なんで!?」
「俺も聖女様とコミュニケーションしておこうかな。嫁に来ないかな」
「お兄様はいろいろセンスがないですからね……」
「妹が辛辣!」
というわけで、アウスローナに親善大使として二人が派遣される。戦争したのはレハナ領だけではあるので、セラフィーが粉ミジンコに引き潰したとか関係なく、国家の利益を得るために!
たぶん。
レハナ伯爵家から二人が派遣される。
「お前らさあ、逸りすぎて貴族の力を解ってないだろ。暁の星に護衛任務依頼しておきましたぁ~」
「さすが父上!」
「さすちち!」
「刺さないで」
レハナ伯爵は娘に刺されて死亡。なんてことはなかったが、レハナ伯爵の二人の子供は暁の星に帯同することになった。英雄との旅、はしゃぐ娘。息子も少し浮かれているようだ。珍しい。
「まあ守れって言うなら守るけどさぁ」
「セラに責任を負わせたりしないから」
「いや、別に私暁に席を置いてないからな?」
「そうか、セラは暁の団員が嫌いなのか」
「そういうズルい言い方すんなよ。好きだよ、好き。大好きだ」
「セラがデレたぞー!」
「知ってるか、足の指骨折すると死ぬより痛い」
「いた、い」
カルヴァインの足の骨を踏み潰しつつなんでこの人たまにギャグキャラになるんだろ、とセラフィーは思った。
「まあ傭兵団として依頼受けたんだろ。なら私も借宿とは言え暁にいるんだから守るさ」
「セラって政治交渉上手かったりする?」
「知らん。ウィーの旦那の方が上手いんじゃね?」
セラフィーは声高に言わないが父親のハガネはドワーフの王族だったりする。鍛冶だけ学んだわけではない。政治に関わらず様々な分野で優秀だった。
「ドワーフ万能説ぅ……ぐぬぬ……」
虫かごでなにかが叫んだが本編には関係ないのでスルーした。
ともあれ、暁の星はエリとイェフタンと貴族子女二人の護衛としてアウスローナに向かう。なにからなにまで仕込まれていて、ヘイヘイとセラフィーは従うのである。可愛い。
そもそもセラフィーを妨害するとトリシューラが飛んでくるのだ。貴族とか王族とか関係ない。セラフィーは止められない。ぶっちゃけ世界を滅ぼせる。地上の神さえいなければ。
セラフィーの願いはその一柱を叩き折ることのみだ。暁もそのための道具である。
……セラフィーが本心から人を道具扱いすることなどない。敵は全部殺すが。
「セラさまあー!」
「ぐふぉっ!?」
セラフィーにエルニアミサイルが突っ込んできた。もとい、レハナ伯爵の娘、エルニアがセラフィーの胃腑を抉るような頭突きで飛び込んできた。酷くなってない? まあエリに狂ってるセラフィーの言えたことではなかった。
「お嬢様、ちゃんと守るから」
「セラ様のボイスは耳が犯されるようですわ~!!」
「あれ? こんな変態な子だっけ?」
「はあはあ、おっぱいぷにぷにぃ」
「お、おう」
黒銀のセラフィーもドン引きである。
「そこまでですよ、妹よ」
妹エルニアの奇行に戸惑っていると兄が出てきた。確かユーティーだったか。
「政略的に有力なので嫁に来ていただけませんか」
「まったくやる気ない勧誘有り難う。お断りします」
ユーティーは伯爵家嫡男なので政略結婚なんて吐き捨てたいほど話がくる身分である。本気で好きならこんな勧誘はもちろんしない。ただ、セラフィーの生き方には興味がある。
「権力も貴女が思ってるよりいろいろ動かせるんで、興味を持っていただけませんかね」
それは圧倒的な事実ではあるが、身は一つしかないので、なかなか難しいことである。世の貴族令嬢は実は可哀想なんじゃないかと度々思うほど。
セラフィーが好きな人も八歳も年上なんだよなあ。と、気がついてわりと年は関係ないんだなと思った。
どちらにしろ恋をするには、セラフィーのトラウマが重すぎるのでない話であるのだが。
北へ、より機神に近寄る道へ、セラフィーたちは歩き始める。
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