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スタンピードを起こすもの

 そろそろストック切れまぁーす。


 応援よろしこ!



 セラフィーはエリと並んで帰還しつつも状況の把握を怠らなかった。星属性の通信の魔法がローレット伯爵から全体に飛んでくる。


「中央は機人兵が出たものの有志によって鎮圧。北から来る予想のスタンピードに警戒だって」


「私はライブの準備をしておきますね」


「楽しみです!!」


 スタンピードなどセラフィーにしてみれば前菜に過ぎないようだ。エリは予定どおりコンサートする気でいる。はっきり言って三方四方から攻められる今回の戦いはピンチであるはずだが、いささかも、小揺るぎもしない。力があるというのはこういうことだ。セラフィーもライブに遅れるわけにはいかないので本気を出す。


 商店は豪胆なのか避難警報が出ているのにどこも普通に営業しているのでゴミどもが邪魔にならないようにスタンプしては回収、スタンプしては回収と綺麗にゴミ掃除していく。兵隊よりもセラフィー一人の方が仕事も丁寧である。


「セラフィーちゃん茄子もっておゆき!」


「ありがとう!」


 八百屋のおばちゃんが茄子をくれた。ベーコンを挟んで焼いてもうまいしそのまま焼いてケチャップとマヨネーズをかけても美味しい。酒のつまみにもなるしね。セラフィーはカゴごと受け取った茄子をインベントリにしまった。セラフィーもすでにこの町のアイドルである。悪徳商人マルジグラを追い詰める過程とは言え、聖女ムーヴやりすぎた感はある。


 さて、北のスタンピードが始まった。情報通な町の商人たちはすでにその動きをつかんでいるようだ。


「ダンジョンが溢れた形のスタンピードか。初めてではないな」


 レハナはダンジョンが多いため、数ヵ月に一度と言う頻度でスタンピードが起こる。町の人たちも慣れたものである。が、今回はタイミングが悪すぎる。他領から攻められ機人兵に攻められその上でスタンピードとなれば、計画性を疑わざるを得ない。どこが攻めてきた。誰の陰謀か、町中がその話題である。


 セラフィーにしてみれば知ったことではない。エリさんのステージに間に合うように駆逐するだけである。茄子も食べたいし。


 北、ダンジョンから溢れたゴブリン、オーク、ヒルジャイアント、植物(プラント)系。うーん、芸がない。頭蓋骨を全部砕いていく。植物も砕いていく。セラフィーにしてみれば日常のような作業である。


「理性で人が救われるならとっくに世界から問題はなくなってるわ。死ねや」


 暴力でも問題は解決しないが、押し寄せる魔物にそんな理性はない。砕くのみである。


「巨人とも何度かやりあったけどさぁ。質量以外で巨人のメリットってあるか?」


 足の親指を黒銀でへし折ればだいたい行動不能になる。弱い。


「雑魚がさー。数揃えて勝てる気で来るのって本当に阿保かと思うよねー。勝てないものは勝てないからさ~?」


 セラフィーの体力は無限に等しかった。ゲームのキャラのようにひたすら雑魚を駆逐する。心にも肉体にもダメージを与えられる要素がなかった。


「あんまり遅くなるとライブに間に合わないじゃねーか! トリシューラ、拡散!」


 あちこちが戦場となっているため、北方を守っているのはほとんどセラフィーだけである。二、三百人の冒険者が魔物を退けんと戦っているが……セラフィーが来なかったら負けていた。


「東もそろそろ片付いただろうに兵隊少なくねえか? このスタンピードも数多すぎだっつーの」


 セラフィー一人でさばけてはいるが、明らかに魔物の数が多い。二千は下らないだろう。冒険者たちもギルドに増援要請に走った。ここは人間要塞の技の冴えの見せ所であろう。


「めんどくせえ。神聖魔法、太陽属性、放射性結界ラジオアクティブバリア、星属性、広域エリア拡大ワイド拡大ワイド拡大ワイド道標ガイド、『魔法城塞マナフォートレス』!!」


 出たな、人間要塞! 味方内から上がる歓声。セラフィーの本気の軍隊防御バリアである。全員に結界が張られた。


「いいから攻撃しろや!!」


「イエッサー!!」


 セラフィーのバリアの裏から攻撃魔法も弓矢も打ちたい放題である。すでに戦いの趨勢は決している。


「雑魚がしぶといんだよぉー!!」


 悪役のような台詞を放ちつつセラフィーのディバインサンダーが敵陣を焼いていく。ワンサイドゲームは長く続かなかった。


「エリさんの、コンサートがあるんだよぉ~」


 セラフィーは必死であるし敵は雑魚しかいないのだが。エリさんのコンサート、スタンピードで中止、とかなったら泣く。ベッドでだだっ子のように泣く。なので長く続かなかったのである。セラフィーが珍しくやる気を見せていたから。


「き、貴様、一人でこのスタンピードを押さえたと言うのか……!?」


 空から角が耳の上から上に生えた色黒のイケメンが飛んできた。ガムマイハートに似ている。


 どうやらこのスタンピードを起こした元凶が現れたようである。さっさと駆逐してエリさんのライブを見よう。早く帰ろう。セラフィーの思考は固まっていた。


「魔人族の名をかけ、貴様を打ち倒す!!」


 魔人族の名? セラフィーは首をかしげた。思わないところからボールが飛んできた感覚である。


「魔人の総意なら魔人族は滅ぼさないとな」


「総意な訳があるまい!」


「まあさ、人族の盗賊が人族の総意ですとか言わないけどね。犯罪者を駆逐する程度の話でいいんだよね?」


「誰が犯罪者か! 我が思想を砕かんとするお前こそが犯罪者であろう!!」


「うわ、きも。逆ギレもここまで来ると犯罪だよね」


 おそらくスタンピードを起こした者なので犯罪者確定であるが、魔人族なのが気になった。なんでレハナを攻めた?


「人族に聖女が生まれ、この地から隆盛を極めていく、その過程を打ち破る!! 正義は我にあり!!」


「うん、なんとなくわかった。キモい」


 ようするに、セラフィーが邪魔なんで襲いました、ってことだ。阿保か。聖女なんか何人もいるわ。魔人の総意ではなさそうである。ガムマイハートに毒を盛られたことないしね。


 手っとり早くセラフィーの膂力で二、三回地面を殴り付けてみせると、できた幾つかの巨大クレーターを見て魔人族の男は汗だらだらで逃げていった。弱い。


 ちなみにガムマイハートに伝えたら盛大に頭を抱えていた。魔人族絡みだったからじゃなくセラフィーが開けた穴の補修費が飛んできそうだったからだ。犯罪者の動機なんて気にする傭兵はいなかった。殺るだけだ。お金になるしね。


 ガムマイハートがローレット領主に報告すると「来たかっ!」とか意味の分からないノリだったので補修費の請求書だけ置いてきた。頭が痛いガムマイハートだがちょっぴりローレットは寂しかった。懐もちょっと痛かった。







 魔人族って新勢力が出てきたんですよ。



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