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ダンジョンに闘争を求めるのは間違っている

 よろしくお願いします!



 そんなレハナ伯爵家の動向はつゆ知らず、暁の星傭兵団は着々とレベル上げを進めていた。


「こいつら硬いじゃん? 普通に斬りかかってどうするって話」


「面目ない」


 カートは自前の長剣をへし折られ、セラフィーに説教を受けていた。セラフィーはなぜか大量にインベントリにしまってある長剣を取り出し、渡す。


「これなら魔鋼だからそうそう折れないけど、真正面から行ったり捻ったら折れる。転ばせて関節を魔力をまとわせてから突き刺せ」


「いいのかこれ、高そう」


「なかなかの業物だったから拾ったが店主が間抜けだったのか弟子の会心の作だったのか、数打ち物に入っていた」


「マジで? お得じゃん」


「ドワーフの目はごまかせない」


 ドワーフ万能説か、とウーシャンが反応したので虫かごに入れたが、武器のことで遅れを取ったらドワーフの名が廃る。さすがにここは譲れない。良いものというなら一番良いものを見てきたのだ。神匠の膝の上で。


「機械的に作られた量産型ゴーレムなんてものは脆いところがあるんだよ。炙った上に凍らせてハンマーで殴ったら簡単に割れると思う」


「魔法はまだ勉強中なんだよなぁ……」


「実戦で試すチャンスだろ。敵がヌルいうちに試せ」


「……やってみっか」


 単純な性格だが、素直なのがカートの良いところだろう。しかし見てみると、カルヴァインやパール辺りの実力者は軽々と鉄人形を砕いている。レベルの高さ、魔力の強さもあるが技も巧みだ。ちょうど良い訓練といったところか。それを見てカートはへこんでいる。


「レベル上げるしかないだろ。へこんでる暇ねえぞ」


「わかってる」


 立ち直り、カートはセラフィーにもらった剣を携えて走り出す。単純なのは良いところだ。


 魔鋼の剣にはセラフィーが祖母の錬金術師マワタに教わった自動修復や魔力硬化などの術式がいくつか刻んである。魔力に反応して剣を強化してくれるという錬金術師の技だ。魔力を剣にまとわせられるなら、ここで折れることはないだろう。


 とにかくセラフィーは暇だった。神殿の治療院が最近は息吐いきつく暇もないほど忙しいのでダンジョンアタックは休暇のようなものであった。


 ダンジョンの生物は蟻とほぼ変わらない。己の意思や理念は持たず、ただ相手を排除しにくるだけである。


 ダンジョンに闘争を求めるのは間違っているというのはわかる。ここにあるのは原始的な争いでしかない。生きるということにこだわらない相手との戦いの、なんと空しいことか。なのでセラフィーにとってみれば、ダンジョンアタックはゲームにすぎない。命をかける方が間違っている。


 ただ、それは危険がないことを意味しない。セラフィーは回復魔法を飛ばしまくる。


「マイト兄さん、後ろに私がいるとか思わないでくれる?」


「すまんな」


 兎獣人のマイトは狩人だ。セラフィーにしてみれば趣味が合う兄貴分である。だが、剣が使えるからか無茶な突進をすることがあるのでセラフィーは心配していた。弓も得意なのだから後列から戦えば良いのだ。しかし、いいタイミングで前に出る。セラフィーが後ろにつくようになってからはその傾向が顕著だ。兎のくせに武闘派なのである。


 セラフィーは暁の正式メンバーに加わるつもりはない。自分の業を他人に背負わせる気などハナからないのだ。しかし暁メンバーもお人好しの集まりだ。セラフィーは辛くなる。みんないい人だ。失いたくない。でも、私は戦乱を求めてこの世界に降りた。戦いは大好きだ。しかし、他人を巻き込みたくはなかった。


 セラフィーに必要なのは守る戦いであった。暁は奇妙にセラフィーの心を満たしていた。割れた器にも満杯になっていく。……失いたくない思い。


「そこどけや、うらあっ!」


 なので鉄ゴーレムを粉砕していく。後ろで見ていて満足するほどセラフィーは大人しい蛮族ではなかったのだ。ドワーフの瞳で鋼鉄の急所を殴り抜きすべての攻撃がクリティカル。暁メンバーはその技巧に惚れ込むだけである。


「強い」


「頼ってはいかんぞ。あれは住んでる世界が違う」


「……なにがあればあそこまで桁違いの強さを得られるんだ」


「カルヴァイン、焦ることはない。セラ自身が言っているではないか」


 ガムマイハートはカルヴァインを嗜めたが、レベルを上げればだいたいどうにかなる、それはこの世界の真理だ。しかし世話焼きなセラフィーの前で苦戦すれば割り込まれる。それは仕方のないことだ。セラフィーの深い愛情を受け取らない術はない。


「過保護なおっ母さんみたいだな」


「いい得て妙だが」


 セラフィーも暁の訓練なのは分かってるので下がってきた。強敵を全て倒すとセラフィーだけが戦うことになってしまうから。いつものようにブランデーの入ったスキットルを取り出し舐める。


「どうしたらそこまで強くなれるんだ?」


「面白いこと言うなカルさん」


 私は強くない。それはセラフィーの真実。物理的には馬鹿みたいに強くても、心は常にほころんでいる。


「俺はセラフィーが好きなのかもしれない」


「勘弁してくれ」


 愛など、失う恐怖しかないのだ。






 だんだん絆されてきています。共にいる時間が長くなるほどに。


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