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レハナ伯爵の思惑

 二話目です、珍しいキャラのお話です。よろしくお願いします!



 一方その頃、レハナ伯爵領ではレハナ伯爵……ローレットが不気味にニヤニヤしていた。


「父上、ものすごい悪人面になってますよ。元からか」


「ほっとけ」


 父に忠言したのは上の息子ユーティだ。十八才で父と同じ茶髪に茶眼、目立たないカラーリングだがかなり顔立ちは良い。中央の貴族向けの学園を卒業してからは父の政務を手伝っていた。


「東のユグイツ伯爵がブルーム公にレハナ攻略を願い出たらしい。ブルーム公は後ろからは攻撃しないが兵も出さないと伝えたそうだ」


「ブルーム公もトンネル村の事業にお金出してましたよね。ああ、中継点の人口が減れば商人が直接ブルーム公の領地に商品を運ぶから安く買い叩けると」


「なにもしなくても美味しいところを持っていけるんだから公爵ってのは良い身分だよな」


「確かに良い身分ですね。王族だし」


「冷めてるねお前は。こうもっとさ、聖女様可愛い結婚して!とかないわけ?」


「感謝はしてますが顔も合わせてませんし」


「そうだったか? まあ聖女さん人嫌いらしいからな」


「誰にも助けられなかったばかりか火事場泥棒のせいで皆殺しですからね。そりゃ人そのものを恨みたくもなるでしょう」


 ローレットはじろりと息子の顔を見る。こいつもセラフィーとは別の意味で無表情だ。


 今のセラフィーはエリにメロメロになったり妖精を虫かごに放り込んで笑ったりするくらいに回復しているが。自分が人を守れていることは少なからずセラフィーの自信になっているのだろう。


「うちの軍全部出したら聖女様倒せると思うか?」


「エルダードラゴンをうちの軍で仕留められますかね?」


「無理だな」


「無理ですね」


 無理だった。セラフィー自身にはまだその自覚はないし、伯爵を敵に回すことなどないと思っているが、ローレットは政治家なのだ、あらゆる可能性は考える。


「機神を打ち倒すって志がある以上うちにはとどまってくれんだろうし、神殿勢力も魅力的とは思いつつ無理はしていない」


「そこでなにを思ったかユグイツ伯爵が乗り出してきたと」


「ピエロだよなぁ」


「伯爵軍を持ったピエロです。うちがせいぜい千五百なら向こうは二千五百は出してくる。傭兵も王都に近い方が多いです」


「北が慌ててくれたから助かったよなぁ。挟み撃ちなら不味かった」


「話聞いてます? 父上。すでに不味いって話ですよ」


「この上で機人兵と連携を取られたりしたらぁ、ああ不味ぅい」


「そういう台詞は不味そうに言ってください」


「機神嫌いの移動要塞がいるからなぁ」


「一ヶ月ダンジョンに潜るのでは?」


「神殿の仕事があるのにそんなわけないだろ」


「! 釣りましたね?」


「入れ食いよぉ。俺漁師になったら良かったかな」


「領主で我慢してください。だとすると……」


「傭兵団ふたぁつ、『勝利の翼』と『精霊の風』を抑えといたぁ」


「大きいところばかりですね。総勢二百人を超える傭兵団……」


「デカい傭兵団はフットワーク重いんだよなぁ。暁ならソッコー逃げたりしそうだが」


「……滞在費用払ってないんですか」


「本人たちはレハナのダンジョンうめぇ、って喜んで滞在してるらしいよ?」


「きたねえ、これが貴族のやり方か!」


「オマエモナー」


 実際ローレットは息子のユーティの方が絶対に腹黒いと思っている。金や権能が及ばないから目立って動かない(・・・)だけだとも。その辺りがいやらしい。実際にレハナも一枚板ではなく、伯爵位を狙う貴族の動きもある。知られてる時点で終わっているが。ユーティ暗殺の動きもあったが本人が事前に潰しまくっている。まったく腹黒い。こいつが領主になったら街門に幾つか貴族の首が並ぶんだろうな、そう思いながらニタニタしているローレットは間違いなく楽しんでいる。


 これで聖女様とか話題性のある嫁をもらってくれればとは思うのだが、当の本人たちがまったく恋愛に不向きな性格をしていた。政略なんだから押せよと思うのだが、その辺り変に清廉なユーティだ。実はシスコンではないかと言われている。


「敵勢力の動きは?」


「思ったよりはやいぞぉ? もう傭兵団はこちらに来ている。傭兵だからな、どこどこの所属だろう、止まれ、とも言えん。証拠はないしな」


「ふむ、毒は仕掛けてないんですか?」


「ほらこれだよ、腹黒い。仕掛けてる」


「汚い大人だ。こうはならないぞ」


「お前も提案しとるがな」


 子は親に似て、さらに親を超えるものだ。ユーティは悪い方向に超えているが。


「それでな、残念なことにスタンピードの兆候もある」


「この間起こったばかりなのに?」


「そこよ。人為的だろこれ」


「うわあ、不味いですねお父さん」


「気持ち悪い」


「セラフィーさんが出てきたら面談しないとですね」


「スルーかよ。呼んである」


「しばらくは城に留まってもらうと」


「神殿がうるさそう」


「そっちは放置ですか?」


「うん、所詮なにもできんよ、神殿には政治不介入の方針があるしな」


「実際の神の元に作られた宗教の強み?ですね」


「まあそんなルール知りますぇんって生臭はいっぱいいるんだが」


「神殿に変に権力のある生臭坊主が来ないかは」


「見張ってる」


「やっぱり腹黒い大人だ。大人は汚いなぁ」


「だから、お前も提案してるからね?」


 普通の、どこにでもある貴族の親子の会話だった。






 貴族の話し方は難しいですが、こういう軽い感じは好きです。


 ブックマークと評価をよろしくお願いいたします! 最近停滞期でして……。



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