戦争の思い出
二話目です。よろしくお願いします!
カートとヨーズ、パールという珍しい組み合わせの三人がひとつのテーブルに着いていた。話のネタは人間との戦争だ。
「この前のベキヘム子爵との戦いもすごかったよな。城門をハンマーで砕いたの初めて見た」
「あんなの誰にでもできるもんじゃねぇだろ。比べるだけ無駄だっつぅの」
「大剣で城門を切り裂くのは楽しそうだけどねぇ。あ、生中三つね~!」
「唐揚げ頼もうぜ」
「カートはそればっかりだなぁ。オレはエビチリにしとくぜ!」
「うまそうだな。私は肉野菜炒めで」
「意外と可愛いの食うんだな」
「ダイエットかぁ?」
ぐしゃりと音がしてヨーズが土下座体勢になった。頭の上に犬娘の足が乗っている。だいたい要らんことを言って殴られている小人の男、ヨーズ。馬鹿じゃないのに馬鹿である。
「お、生中きた」
「乾杯しよう」
「ヨーズは?」
「しばらく目覚めないと思うぞ」
「哀れ」
ヨーズが白目を向いたまま二人で乾杯しようとすると慌ててヨーズも起き出した。
「ひでえや姐さん」
「ひどいのはお前の頭だ」
「小人族って石頭だよな」
「そういう意味じゃない。まあ乾杯!」
「ごきゅっごきゅっ」
「はやっ! 小人族って酒強かったっけ?」
ドワーフの親戚のようなこの世界の小人族である。酒も強いのかもしれない。つられて二人も冷たいビールを一気にあおると爽やかさで生き返るような心地である。
「つまみ食べてから飲まないと体に良くないぞ」
「そういうの気にするんだなぁ姐さんは」
「健康志向?」
「獣人はあんまり長生きじゃないからな。気にするさ」
「俺も気にしなきゃ」
「小人はドワーフくらい生きるぜぇ!」
「ドワーフとの違いが分からん。草原に住んでるくらいじゃないか?」
この世界の小人族は草原で狩猟採集生活を営んでいる。風の精霊と相性が良いので空を飛んだりする個体も多いらしい。ちなみにドワーフよりさらに平均で十センチほど背が低い。ヨーズもセラフィーより小さかった。
「それはおいといて、ベキヘム子爵との戦争の話な。酒の話始めたら一気に話題が反れるな」
「あの戦いは最初からセラが前に出たから団員ほとんど目立つとこなかったよな」
数百人ほどで出てきた敵の先陣はセラフィーの光弾の雨で半分ほど蹴散らされ、セラフィーを仕留めようと取りつく部隊は片端からハンマーで吹き飛ばされた。セラフィーのハンマーが尖端を尖らせた物でないのはこういった集団戦でノックバックで相手を薙ぎ倒すためだ。三人も殴ったら十人くらい吹き飛ぶ。近寄れたものではない。離れれば光弾かナイフが飛んでくる。セラフィーにしてみればトリシューラ一発撃てば終わる戦いなのだが、それだとますます楽しめない。全力の一パーセントしか出していないのは事実である。能力強化を入れまくってようやく五パーセント。必殺の一撃で五パーセントから一割。全力を出すと寝込むので出せないのもあるが、そもそも必要ない。五割も出したらすでに災害だ。
「雑魚を一気に蹴散らして、敵将も雑魚もよく分からなかったねぇ」
「セラフィーとの能力差がありすぎて全部同じに見えた」
「だんだん戦い方も変わってきたよねぇ。最初は敵の攻撃を避けたりしなかったのに」
心境の変化があったのか、セラフィーは受けたり躱したりもするようになった。訓練をつけてくれたりもする。この辺りはセラフィーの元々の人懐っこさがあってどうしても人を遠ざけきれなかったのもあるだろう。そもそも本人は、自分が派手に戦えば味方が人を殺さなくて済むとか、恐れてくれれば相手の死者も減る、とか考えている。
「強くなりたいな」
「カートはまだ若いんだから行けるだろぉ」
「あたしだってまだ強くなるさ」
敵がはけて怯んで下がり、あるいは広がって、セラフィーは砦に進む。雑魚が避けたため逆にセラフィーは弓矢や魔法の格好の的になった。
「全部シールド魔法だけで弾いてたな~。ああ、ここの唐揚げはうめぇ。生中もう一杯!」
「あいつの職業そういえば僧侶なんだよな」
「あんなのバーバリアンだろぉ。システムバグってねぇ?」
「でも回復も助かってる。あいつの回復魔法って初級のヒールしか見たことないんだけどどうなってんだい?」
事実、中級のミドルヒール、上級のハイヒール、特級のエクスヒール、蘇生のリザレクションは使っていない。システムによるレベル補正でレベル五十前後相手では使わなくても全快してしまう。セラフィー自身は魔法の防御が高すぎてかすり傷を癒すだけなのでオートヒールで済むし、強力な回復魔法はほとんど必要なかった。自動蘇生は自分にかけていたりするが、使われるのかは不明だ。
「致命傷でも一発で治してたような……」
「機人兵のレーザー腹に受けたやつか」
「あれはさ、本人に聞いたけど、オートヒールと細かく二、三回ヒール使ったらしいよ」
「一発じゃなくて良かった……のか? あ、ビールこっちでーす」
対人戦争の時は敵の矢や魔法が尽きるまで一人で壁になっていた。一人要塞の二つ名が与えられた。その次の瞬間。
「あれ機人兵にとどめ刺す時の技か?」
「うん、確かあんな技だった」
「メテオストライクだったか、あれで城門を破壊したんだとしたら、機人兵すごく硬くない?」
厳密には機人兵がぺしゃんこになるまで破壊する目的で使っている技なのでオーバーキルではある。どちらにしてもあそこまで破壊力を出せばゴーレムでも吹き飛ぶ。トリシューラが奥の手としても中々に凶悪な技だ。
「あんな馬鹿威力の技を持ってるのにセラフィーのやつまだ新技開発してるってさ」
「真面目よのう」
「真面目っていうか、俺とおんなじで、なんか焦ってるというか」
そのカートの言葉にパールとヨーズは声を揃えて聞き返した。焦ってる?
「自分が弱かったから、無力だったから大切なものを失ったって……」
「あー、確かにあいつそーゆーとこあるよなぁ」
「戦いだけでは癒せないんだろうねぇ。悲しいねぇ」
「あれ、珍しい三人ですね、なんの集まりですか?」
「アイリス。あんたも飲むかい?」
「いただきます」
結局なんの集まりか分からないまま一人増えて、四人は朝まで飲み明かすのだった。セラフィーはなにも知らずに一人酒を飲んで寝ていた。その日からなぜかヨーズが絡んでくるようになってセラフィーは首を傾げるのである。
こういった三人から五人で集まって駄弁ったり戦ったりのお話は好きなので増やしたいです。
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