死闘
五話目です。強い奴ほど倒しがいがある!
追い詰めた獲物はとてつもなく恐ろしい。それは狩りをしていたセラフィーにとっては常識だった。ウサギに脚を折られた狩人を知っている。猫に指を千切られた狩人を知っている。猪に命を取られた狩人を知っている。よって相手が強力な竜であるならば、もはやその領域ではあるまい。
当たり前に油断していない。敵は強い。高レベル帯だと数十レベル差を覆すことは自分が実戦で経験していた。セラフィーは、だから、強い。
エルダードラゴンはそれでも命を諦めるつもりなどない。当然だ。今まで強者として優雅に獲物を狩り、暮らしてきた。今さら獲物になったとして、逃げる選択肢はなかった。狩ってやる、強者!
幾筋もブレスを放つ。ブレスは前述の通り、魔法ではなく魔術。よって使用者のスキルにより効果が変わる。広がり、球のように収束して壁を突破するように放つ。しかし相手は小さくも自分を上回る魔力保持者。勝ったなどとほざくのは相手の死体を見てからだ。集中した。負ければ死ぬのは自分なのだから。
「光の翼、加速! 逃がさない!」
『お前から逃げれると思うほど増長していないわ!!』
エルダードラゴンは魔力を溜めるために体を縮小した。十分の一、およそ数メートルにまで体を圧縮。一気に爆発的に高まる魔力圧力。
セラフィーは背筋に走る悪寒を感じた。こいつはヤバい!と。同時に感じるのはどうしようもない多幸感!!
体を翻し距離を取る。魔法による防御壁を展開。
「神聖魔法、太陽属性、光の壁! 月属性、魔力壁、星属性、増殖! 貫いてみろ! 『多重魔法壁!!!』」
『食らえ! 我が魔力による死の暴流を! 死神の吐息!!』
反応しても躱しきれない黒い魔力の塊。それはまさに自然災害だった。多重に張られた光と魔力の結界があるも、セラフィーは巻き込まれその小さな身体は木の葉のように舞った。
「ちょ、つよっ!!」
壁が身を守っていてもなおセラフィーはダメージを負う。やはり雑魚などではなかったか。油断を排してなお、手に余る力を感じる。……これを待っていたのだ。
必然、セラフィーの口許に凶悪な笑みが浮かぶ。楽しい!!
セラフィーは生まれる前から戦闘凶である。もはやこのゲームを止める理由がない。
手強い竜がプライドを捨て、スモールスケールでの勝負に挑んできたのだ。応えてやらねば、名が廃る!
エルダードラゴンは押してはいけないスイッチを押した。そこで命運は決まってしまったが、足掻く。
『我が最強の一撃をもってしても致命にはほど遠く、かすり傷しか負わせられない。ふふふ、これは困ったぞ、お前のように強いもぐらなどいてたまるものか』
「私は生まれた時からもぐらだよ! そこに愛と誇りを感じてる!」
『もはや勝負がついたとは思ってなかろうな?』
「今狩ろうとしている獲物は最強に強い! 狩人は油断などしない!」
『なるほど、強い! 貴様が生涯最後の敵となるとしても、誇らしく感じるほどに!!』
ドラゴンは喋りつつ黒い閃光を放ってくる。その一撃一撃がセラフィーの壁を突破するレベルだ。焦る。いや、そりゃそうか。死の間際で見せる本気はレベルの差など跳ね返す。これが当たり前だ!
セラフィーは僧侶である。ついでに言うならこの時点で職業聖女になっていた。つまり、最強の魔法壁。しかしそれを貫いてくる。セラフィーは笑った。戦いが楽しくて。この時を待っていたのだ。十五年。
失ったものは筆舌に尽くしがたく、重い。でもこの世界を望んだのはセラフィーだ。恨み、呪う相手など、一人しかいなかった。
だが戦いが、セラフィーの苦痛を消してくれる。そして今、最高の相手と殺りあってる。
それが、とても、幸福だ。
「いくぞおおおおおおおおっっ!! 神聖魔法太陽属性、神性の雷、星属性、収束、拡大、拡大、拡大、増殖! 三本の死の指、食らえ、『破壊神の槍!!』」
『な、なんだその馬鹿魔力ううううう!?』
黄金に輝く光の波動。それはまさに壁だった。いや、壁などと生易しい。山だった。セラフィーの放った魔法は地に数発も向ければ世界に氷河期をもたらすほどの一撃。およそ個人が持って良い力ではなかった。幸いにも今回は、空に、そして不幸にもエルダードラゴンに向けて放たれた。必死に躱そうと体を捻り飛びずさるドラゴンではあったが、魔法範囲が広すぎた。明らかなるセラフィーの最強の技、もはや死を決定づける一撃だった。
「貴様の神に祈れ!!」
『……ぐがああぁぁ…………』
こうして、エルダードラゴン討伐は終わる。幸いか不幸か、エルダードラゴンの強靭な肉体は死してなお形を残した。一部しか手に入らないダンジョンと違い、フィールド上では素材が取り放題だ。
セラフィーは良い獲物を手に入れたとばかり、それをインベントリに仕舞い込む。仕舞えたので、死んでる。
その時に、懐かしい声が響く。
『殺ったね~、セラフィーちゃん。お役目ご苦労様~』
「あ、サミーさんだ」
訪れたのは呑気なエンシェントドラゴン、サミーだった。その背中には狼と妖精が乗っている。どうやら戦いの波動を感知してきたようだ。まああれだけドンパチやれば地震さえ起こっていたはずである。
当然ヤミンの町まで振動は伝わって大騒ぎになったが、それはまた余談である。
セラフィーはトリシューラを上回る攻撃も持っていますけどエルダードラゴンを倒せる一撃以上が必要になるのはずっと先なのでこればかり使います。まあ破壊神の一撃以上が必要になることは無いかもしれませんね。一応三つくらい考えてますが使いどころ無いんですよね。ちなみに結界の方もいくらか上がありますが使い勝手が悪かったりします。マルチプルバリアをさらに重ねたりもできます。
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