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巨神対魔神

 いつも応援ありがとうございます。



 セラフィーは先の先で打ち込んでいく。


「おらアッ!!」


「グボアッ!?」


 先述のバフの話の通りだ。急激に強大な力を得ても扱う経験がなければ使いこなせないのである。セラフィーは敵が自分の力に慣れる前に仕留めればいい。簡単な作業だ。


 黒銀にはディバインサンダーを星属性でエンチャントしているため、魔神に一撃食らわせ、殴りつけるたびに爆発する。腕が吹き飛び、腹がはじけ、脚が刈り飛ばされる。魔神の再生能力はなかなかだが外神やセラフィーに比べれば遅い。スピード型のファイターではないセラフィーでもレベルと強化バフで圧倒的なスピードで翻弄していく。しかしなかなかにしぶとい。


 魔神は飛びずさると周りの教徒やその死体を取り込んでいく。どうやらスキルも取り込めるようだが使いなれていないスキルなど足手まといにしかならない。どうもこのテロリストたちは強さを勘違いしている。


 強さとは積み上げるものだ。自分の肉体を危険にさらした果てのレベリングより、強くなる道は他に無い。


 使ったことのないスキルを組み合わせるのはおろか、どのタイミングでどのスキルを使えばいいのかも分からないのでは迷いを生むだけにしかならないのだ。戦場で迷ったりおしゃべりを始めたら矢が飛んできて死ぬ。迷い悩むのは平時のベッドの中ででもやればいい。戦場はコンマ一秒に支配権が移り変わるのだ。迷えば負ける。


 セラフィーは何日も不眠不休で戦い続けたこともある。考えるより先に直感が最適解に体を動かしていく。勝てるか勝てないかなど考えない。倒さねば死ぬのは戦場の常だ。逃げるにも余裕は必要だ。一撃を加えられる相手でなければ逃げても追いつかれ回り込まれる。まずは倒す、それだけを考える。


 シンプルに横に薙ぎ途中で上に振り上げて落とす。受ければエンチャントした雷で焼く。カルヴァインが得意な戦法だがセラフィーも十全にこなす。


 何度も魔神をノックバックで壁に叩きつけた。


「うぬああああああああッ!!」


「こんなもんか? 無駄な研究だったな」


 この薬の研究には相当な金がかかっていたはずである。その資金の出所はこの国の悪辣な貴族たちだ。つまりレハナ伯爵領でテロリストや機人兵を含めた三勢力が一度に襲いかかってきたことにもアウスローナ貴族が関わっていたのだろう。全部今回で潰すが。


 人為スタンピードの方法もここを調べたら出てくるはずだ。幹部の逃げ回っていた者の半分は魔神に食われ、もう半分はヨーズたちに捕縛された。マイトとナイスはセラフィーの援護で絶妙なタイミングで矢を放つ。そのためセラフィーも多少隙の多い大振りぎみな攻撃を放っていける。ここに連携が生まれていた。人を突き放していたセラフィーからすればかなりの成長と言えよう。


「回復力だけは一人前か」


「ぎざっ!まっ!? グボアッ!?」


 たまらず魔神は飛びずさり全身に雷をまとう。どこから攻めても雷撃を返すつもりだろう。


「知るか」


「ぐふぉあっ!?」


 辛うじてスピードで攻撃を和らげたり躱したりはできるはずなのだが、なぜかことごとく攻撃が当たる。おまけにカウンターの雷撃は濃密な結界に逸らされる。魔神は手も足も出ない。


 セラフィーの力は百倍以上跳ね上がっているし魔力の強さも十倍を越えているのだ。なんの強化もなければそれは勝てない。無理だ。しかしこの辺りが一般の限界である。ここから踏み込めるものは神か、いつでも神の座につけるような化け物だけだ。


「ふんッ!」


「がっ、くらえええええっ!!」


 苦し紛れに魔神は魔力の塊を純粋な光にして放つ。しかしセラフィーの防御結界は神聖魔法太陽属性、つまりは光属性だ。光の技では相性が悪すぎた。闇にしても力負けしている以上相性が最悪だが。


「ぐうぅぅぅ……もっと、練り込まねば……」


「ようやくか」


「セラのやつまた手加減してるうぅ!!」


「悪い癖だ」


「戦闘狂」


「まあセラフィーだしね~」


「わふん(まだまだ負けなそう)」


 さすがにちょっと冷静になって術理を考えだしたくらいで勝てるようにはならない。今のところ無尽蔵に補給される魔力や再生する肉体くらいしか勝てるところがない有り様だ。魔神は焦っていた。必勝の策と思い用意した薬は人としての在り方を終わらせるものだ。もう魔物として生きるしかない。後がないのである。


 そこで魔神はさらに残った死体や戦闘能力のない生きている信者までかき集めて吸収していく。テロリストたちの悲しい絶叫が響く。助けて、死にたくない、痛い、苦しい、恨めしい、許せない、奪いさる、食らう、食らう、食らう!!


「おいおいエグいな」


 幾人もの人間の記憶やスキルまで奪った結果またブクブクと膨れあがった体をまた人型まで戻す。圧倒的な魔力だがセラフィーに届かない。


「なぜだ……お前の魔力はレベルに合っていない……?」


「分かるか? まあダンジョンで出た魔力強化カードとか独占したしな。あとはちょっとした修行もしている。私のレベルのドワーフ僧侶の魔力を二千五百としたら四千くらいある」


「ば、倍近くあるだと……!?」


 さすがに巨神能は魔力を食いすぎるのだ。そのための備えが必要だった。よってセラフィーは買い取りなども含めて徹底的に魔力を強化したのだ。一回の強化でほんの1~5ポイントの魔力を伸ばすカードを千五百まで積みあげたのはセラフィーの不断の努力の賜物である。よって。


「神聖属性魔法、封印結界(コンテイン)太陽面爆発(ディバインフレア)神性の雷(ディバインサンダー)増殖(インクリース)増殖(インクリース)増殖(インクリース)、焼却炉の完成だ。滅せよ、『炎獄封印(インフェルノ)』」


「バカな、こんな力を持って貴様はなにを成そうと言うのだ……あっづいいッ!?」


「貴様の神に祈れ」


「あばづいっ、げぶあッ!? とげるうヴヴぅ…………」


「……まだ神には届かない……」


 外神の戦いを見ていれば分かった。物が違うのだ。魔術による強引な魔法改編は神の技を可能にしたが、神のそれはスキルだ。効率も速さも違いすぎる。


 まだ届かない。セラフィーは魔法の光により赤く輝く天井を見上げ、唸った。 







 テロリストとの戦いはひとまず終わりました。


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