009【昇級試験開始】
まずは、木剣での打ち合い。ハルキとエイジは、なかなかだとの評価。キヨミはまぁまぁ。マナミはダメ。
次に魔法を的に当てる。ハルキとエイジは出せず。キヨミだけ、ファイヤーボールを連続射撃。
「魔法使いか。ほかにも撃てるか?」
「まだあれだけです」
使えるけど、あまり手の内は見せない方がいい。
「わかった。おまえは」とマナミを見るギルマス。「魔法は使えないのか?」
「アタシは治癒魔法です」
「ほう。やってみろ」
そういうとギルマスは、ナイフを出して、自分の左二の腕を傷付けた。すぐに血が出てくる。
「ほれ、早くしろ。心配するな。治らなければ、ポーションで治す」と腰のポーチを叩く。そこにポーションが入っているのだろう。
マナミは渋々ながら十字架に左手を当て、右手を患部に添えて、詠唱した。
同時に、光が右手に集まり、患部に移る。
終わるのを待って、マナミは離れた。
ギルマスが患部の血を拭って、キズの様子を見る。
「おお、きれいに治っているな。これなら冒険者にならずとも食っていけるぞ」
「その気はありません」
「だが、冒険者は自分の身を守れなければ、やっていけんぞ」
「対人ならば、経験はあります」
「ほぉ。言うじゃねえか」
ギルマスは、マナミに手を伸ばした。もうすぐ手が触れる、と思った瞬間、ギルマスの身体が宙を舞い、背中から地面に叩きつけられた。
観戦していた一同、信じられないものを見て唖然としている。
だが、それで終わりではなかった。ギルマスが上半身を起こしたところをマナミが背中にまわり、ギルマスの首に両手を添わせた。締め上げるほどではない。
ギルマスはすぐに意識を手放した。
グッタリしたギルマスの姿に誰もが声を出せない。
マナミがハルキをちょいちょいと手招き。ハルキがマナミに教えられて、ギルマスに活を入れると、ギルマスは気が付いた。だが、まわりをキョロキョロして、何が起こったのか、理解できていない。
「な、何が起こった!?」
「あなたは」とマナミが解説。「自分の力で倒れました。そこを私が頭に血がいかないようにして、あなたは失神しました」
「ということは……オレは負けたのか」
「はい」
「そうか、参った」
観客たちが我に返り、“ギルマスが倒された”と騒ぎ出す。
オレ、聞いてないよ? 何あれ? ギルマスが勝手に空中を舞ったよ? 別に背負投げしてないよ? そのあとの頚動脈を押さえて失神? どういうこと?
オレも混乱中。
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