079【自然のことわり】
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少し短いため、3話連続投稿します(1話目)
「そういうのが、ふつうにある世界なんだよ。キヨミが馬車を浮かべた浮遊魔法があるじゃないか。そこから考えれば、別段、不思議でもないだろう? 規模が大きいだけで」
その言葉でランドルフは、考え直したらしく、うなずいた。
「言われてみれば、確かに。だが、魔法もないのに、どうやって?」
オレはノートから白紙をナイフでカットして、それで紙飛行機を折る。
「獣皮紙じゃ、こんなものは折れないかな。よく見ていろよ」
紙飛行機を飛ばす。紙飛行機は、スーッと飛んでいく。ランドルフの頭が、それを追っていく。紙飛行機はやがて下降して、地面に胴体着陸した。
ランドルフは唖然としている。
「弓矢の矢もこれと同じことをしている」
矢を出して、ランドルフに渡す。
「矢羽のない矢を射ったこと、あるか?」首を振るランドルフ。「狙ったところに飛んでいかないんだ。しかも毎回、別の場所に飛んでいく。ところが、矢羽を付けることで安定して的に当たる。これは魔法ではなく、空中を矢が回転してブレなくなっているんだ。わかるか?」
ランドルフはうなずく。
「なぜ回転するのか。それは空中を進むあいだ、矢羽が風を受けて、動こうとするんだ、横方向に。だが、根元が固定されているから、回転しようとするわけだ。どうだ?」
なるほど、と矢を持って、考えるランドルフ。
「剣だって自然の理を使っているんだぞ、ランドルフ」矢からオレに視線を動かす。「剣の腹で斬れるか?」
「斬れないだろう?」
「まっ、せいぜい峰打ちだろうな。斬ろうとしたら刃を使う。斬れるからだ。なぜ斬れる?」
えっ、と固まるランドルフ。
「説明できないが、斬れることは知っている。だろう?」
うなずく。
「みんな、そういうことを自然と知っているんだよ、ランドルフ。説明しろと言われても無理だ」
「そうか」
「だが、オレやあの四人は、そうしたことを教えられてきた。実際に使うためではなく、いい将来を求めてな」
「いい将来?」
「うん。水や食事の心配なく、家でダラダラできる生活。したいことをする生活。まわりに煩わされない生活。おまえだって、わかるだろう、これがいい生活だって」
「ああ。自分のしたいように生きる。いい将来だな」
「まぁ、実際は、そこにどうしても他人とのしがらみが発生するんだがな」
「確かに」
オレたちは、四人の魔法発動をただ眺めた。
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