068【宿屋の厨房と調理】
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少し短いため、2話連続投稿します(1話目)
案内された厨房は、まぁまぁの広さ。清潔感もある。まぁ、小汚い厨房だったら、案内しないか。
水道は当然ながらなく、江戸時代の長屋住まいと同じく、水瓶。そこに大きめの柄杓。水底を覗くと、きれいな銅貨がいくつもある。
「あの銅貨ってなんです?」
「あぁ、水が腐らないためのものさ」
「あぁ、そういうことか」
「銅貨は、ビネガーできれいにしてから入れてるよ」
「偉いですねぇ」
「水が腐っていたら、お客に失礼だからね」
「どうして」とキヨミがオレに聞く。「銅貨で腐らないんですか?」
「銅イオンが、雑菌の繁殖を防ぐんだ」
「そうなんですか」
「うん。でも手入れを怠るとダメだから、こまめに手入れは必要だけどね」
「へぇ」
火は、キッチンストーブの中で、薪を使っていた。暖炉よりはよさそう。
コンロは三口ある。ちょっと使い方にクセがありそうだ。オーブンもある。鳥の姿焼きくらいは焼けそうだ。こっちの鳥って魔獣だよな……入るのか?
見ていたマナミは、ちょっと苦い顔。
「ダメそう?」と小声で尋ねる。
「火力が調整できない感じ。やっぱり魔導コンロを使いたい」
「わかった」女将に向く。「ここで調理は大丈夫なんですよね?」
ああ、と答える女将。
「器具はこちらのものを使いたいのですが」
「いいよ」
魔導コンロを出す。最新版だ。
それを見て、パッと笑顔になるマナミ。
「なんだい、それ?」
「魔導具です。これを部屋で使っていました」
スイッチをオン。小さな火が円に並ぶ。調整ボタンを押すと、段階的に火が大きくなる。となりのボタンで小さくなる。最初のスイッチをふたたび押して、スイッチオフ。
「前のよりいいだろう?」とマナミに尋ねる。
うれしそうにうなずくマナミ。
オレはバッグから、道具や調味料をテーブルに出していく。それから食材も。
その光景に唖然とする女将。
そんな女将を差し置いて、さっそく調理に入るマナミ。手際よく、ナイフで食材を切り分けていく。
今夜は、薬草を香辛料代わりにした蒸し野菜とオーク肉の薄焼きになるらしい。
出来上がりとともに、コンロなんかをオレがバッグに入れ、終了。
「厨房をお借りしてすみませんでした」とマナミは女将にお礼する。
女将は、ああ、と生返事。
彼女をおいて、自分たちの部屋へ。
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