645【模擬戦】
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今話は、少し短めです。
ここから、【大会編】になります。
大会前日。
オレは、従僕の男性に連れられて、廊下を歩いていた。
陛下がお呼びです、と。
その日は、朝食後、マクレガウスもジョージと一緒に部屋を出ていて、そのあとにオレにも声が掛かったのだ。
それなら“一緒に来てくれ”って言えばいいのに、と思わないでもなかったが。
案内されたのは、室内訓練場らしく、さまざまな人間が集められていた。兵士も幾人かいたが、多くは冒険者だ。
従僕が担当官に話を付けると、訓練場を出ていった。
担当官は、オレに箱を差し出した。
「お引きください」
くじ引き?と思いながらも、箱の中に手を入れて、木札をひとつ取り出した。そこには番号が書かれていた。十二番。
「そのままお持ちください」
えっとぉ、訓練場で大人数でくじ引きで……やることといったら……トーナメント!?
ヤバい! 逃げなきゃ!
振り返り、入ってきたドアへと走り出そうとしたが、すでに閉じられていた。兵士がドア前に立つ。
「では」と担当官が声を上げる。「これより大会前のBブロック予選を行ないます。この大会では冒険者ランクで上位および中位の者だけが参加を許可されております。ギルドの方で申請時に確認されておりますので、おわかりかと思います」ここで一拍置き、続ける担当官。「番号をお呼びしますので、呼ばれた方は、中央へとお進みください。こちらで無作為に選んだ方との試合をしていただきます。武器はこちらのものをお使いください」と横に並べられた武器を差す。「刃を潰してありますが、扱いにはお気を付けください。勝敗は、倒れるまで、または降参するまでとします。力が拮抗していて、時間が掛かりそうな場合は、こちらで声を掛けますので、直ちに試合をやめてください。引き分けといたします」
はじまっちゃったよ。
まぁ、おのれの力量を計ると思ってやりますか。先日のマクレガウスの言葉どおりに。
やるからには、本気を出すか。
マジックバッグから出すふりをして、装備を身に着ける。とはいえ、魔導具装備は出さない。魔導具を使うわけにもいかないし。
番号が呼ばれ、ふたりの冒険者が中央に進み出た。どちらも中堅どころ。
担当官の声で、試合がはじまった。
鉄剣同士がぶつかり合う音が、訓練場に響く。
そうして、自分の番になった。
ショートソードを手に取り、中央へと進む。
対戦相手は、身長二メートルほどのほどよい筋肉質の男だ。手にした武器は八十センチほどの長さのあるロングソード。
お互いに構える。
「はじめ!」
担当官の声に、お互いに、一歩踏み込む。
ロングソードの間合いだ。だが、振り下ろしの速度がなく、容易に懐に飛び込めた。
迷わず、下からアゴ先にショートソードの柄を当てた。
「そこまで! 勝者、十二番!」
離れて、相手に一礼した。
向こうは、クソッと呟いて、ロングソードをもとの場所に戻した。
すべての試合が終わると、負けた者たちが指示されて出ていく。
残された者たちでの試合がはじまる。
そうして、四名の勝者が残った。オレもそのひとり。
「お疲れ様でした」と担当官。「この四人で、明日の予選に出てもらいます。明日のために体調を整えておいてください。以上です」
ドアが開かれ、そこから出ていく四名。
ドア横に、ここへ連れてきた従僕がいた。オレを見つけると、近寄る。
「お疲れ様でございました。お部屋までご案内いたします」と先に立って、歩きはじめた。
そのあとを付いていく。装備を外しながら。
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