642【暴竜被害】
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今話は、短めです。
「ふむ。暴竜はどうだ? あれは夏場に襲ってくるが、前兆はあるのか?」
“暴竜”というのは、台風のことだ。あまりにも風雨が酷く、被害が甚大だから、それをドラゴンの仕業にしていたのだ。もちろん、今ではドラゴンではなく、天候だとはわかっている。名前だけが残されたものだ。
「暴竜か。あれは夏場に来るとわかっているから、事前対策するしかないね」
「どのような?」
「雨や風が凄いだろう。それから逃げるとすれば、頑丈な石造りの建物――城とか砦とかだな――そこに逃げ込む。そうしたものがない場合は、洞窟だな。木造の家だと強風で倒れるかもしれないから、危険だ。貴族のお屋敷くらいにしっかりしていれば、違うだろうが」
「村くらいだと無理か」と肩を落とすマクレガウス。
「被害が出ているのか?」
「毎年な。我が国は、島国だが、大きい。子どもたちを兵士見習いとして、鍛えているのは、そういう災害に対する知識を与えたり、復旧作業をできるようにさせる目的でもあるのだ」
「なるほど。若者が兵役を終えて、自分の村に戻れば、即戦力ということか」
「それで少しは被害を減らせている。しかし、暴竜に対しては無力だ」
マクレガウスは、その国の出身で、こちらに渡ってきて、冒険者になった。そこには、外国の自然災害に対するノウハウをと願う気持ちがあるのだ。
さすがに冒険者になっても、そのノウハウは少なかったようだが。
やがて、自国の王が人々を苦しめていることを知り、立ち上がった。冒険者たちを引き連れて。
「今は、どうしているんだ?」
「高台に避難していたりや一番頑丈と思われる家屋に集まって、暴竜が過ぎるのを待っているそうだ」
「それではダメなのか?」
「高台は木々があり、暴竜によって、枝が折られて落下し、ケガをする。家屋に集まるのは屋根が飛んでいってしまう。それで飛ばされてきた物がぶつかり、ケガをする。まぁ、ふつうに自宅にいたら、ケガでは済まないがな」
「大雨での洪水は?」
「川の氾濫があるな。高台に避難するから命は助かるが、小舟は流され、家も流され、作物も流される。開拓村へと逆戻り。いや、もっと酷いな」
「高台にある程度の備蓄は用意してあるんだろう?」
「ある。しかし、当座を凌ぐ程度だ。それと畑を耕す道具や種籾なんかだな」
「そこは大丈夫なのか?」
「たいていはな。一部、やられるところもあった。そういうときは、大きな村にある商業ギルドに知らせが届いて、兵士が集められ、復興支援に入る」
「小さい村じゃ、商業ギルドもないか」
「そうだ。まぁ、そうした村からは、狼煙を上げてから、大きな村へ知らせに行くがな。だが、大きな村も被害はあるだろうから、狼煙に気付いてもらえない場合もある、そのための知らせだ」
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