641【ランダの存在】
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今話は、少し短めです。
部屋の中に戻り、マクレガウスにも聞いた。
「ランダか。そのような名前には聞き覚えはないな。その村は特別な場所とは聞いておらんし」
「そうか。知らなければ、それでいいんだ」
「失礼ながら、先王陛下」と護衛のひとり。
「なんだ?」
「ランダという名に聞き覚えがございます。確か、いにしえの魔法使いの老婆で、天変地異を引き起こすとか。小さいころに母親から、悪いことをする子は、ランダが拐って食べてしまうと脅されました」
「おまえは、悪ガキだったのだな」とマクレガウスが笑う。
「いえ、まぁ、はい」とゴニョゴニョと肯定する護衛。
「そのおかげで、予は良き護衛を得たのだ。気にするな」
「ハッ」と背筋を伸ばす護衛。
「つまり、ランダは恐ろしい存在として、話されていたのか?」
「はい。私が若い頃は、母親の想像の産物だったのであろうと考えていたのですが、あちこちから来る兵士見習いのほとんどが、そうして親から脅されていたそうです」
「何か」とオレ。「言い伝えみたいなものなのかもしれないな、土地特有の」
「そういうものか?」
「森神様のことはわかる?」うなずくマクレガウス。「森を守る魔獣が、近くの村人を助けるとかして、恐れとともに敬いの対象になる。老婆という外見の魔獣とすれば、そういう気持ちにもなるんじゃないかな」
「しかし、そんな魔獣がいるのか? 老婆のような魔獣が」
「さぁな。容姿的に猿系魔獣かもな。子どもを拐って連れ去るってのもありそうだし。悪ガキが連れ去られたら、そういう話にもなるだろうし」
「だが、魔法は? 天変地異などを起こすことができるというのは」
「それはたまたまだろう。日食は知ってるか?」
ここでも日食があるのは、歴史書からわかっている。完全に隠すということはないが。
「日食?」
「昼間で雲もないのに、太陽が陰っていくこと」
「あぁ、あれか。あれを見て、何か悪いことが起こると、みんな戦々恐々としていた。我もだが。で?」
「あれも天変地異だろう?」
「うむ」
「あと、雷が落ちたり、大きな雹が降ってきたり、竜巻が発生したり、地面が揺れたり、大雨が降ったり、津波が来たり。全部、天変地異だよな」
「うむ」
「どれもが自然に発生するものだ。ただ、頻度がそれほどでもないから、驚くし、対処もできない。それだけの話だ。それとたまたまいたランダを結び付けたんだろうよ」
「なるほど」
「魔法はある程度の魔獣なら、ふつうに使えるだろうし」
「そう言われると、納得できるな。ちなみにそうした天変地異を避けるには?」
そう言って、身を乗り出すマクレガウス。
「自然災害だから避けられない」
「なんだ」と呆れて、ソファーに突っ伏すマクレガウス。
「まぁ、そうは言っても、予測しておくとか、前準備はできる。魔獣のスタンピードは、ならないように間引きしたりするだろう?」
マクレガウスが、ゆっくりと身を起こす。
「ゴブリンなんかの集落を見つけたら、すぐさま討伐しておくからな」
「そういうこと。もちろん、自然災害は突然来る。だが、天気は前兆があるし、津波は地揺れが来たら、すぐさま高台に避難するようにすれば、被害は少なくなる」
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