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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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640【バロンケのいた村の祭り】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


今話は、少し短めです。

 落ち着いたところで、ジョージが話しはじめる。

「大会のことだが、サブ、おまえにバロンケ様のそばにいてもらいたいのだが」

「理由は?」

「念話で話の補足を願いたいのと、バロンケ様のテイマーとして、いて欲しいのだ。もちろん、テイムする必要はない。見せ掛けだけの話だ」

「まぁ、そうなるだろうな。覚悟はしていたよ」

「助かる。さすがに手綱のない魔獣を解き放つわけにはいかぬからな」

「念のためのプレートは用意しておいてくれ」

 そう言って、首のところに親指と人差し指でそれをイメージさせる。

「そうだな。手配しておこう」

「それと、オレの身元がバレないようにしておきたいな」

「なぜだ?」

「だって、バロンケ様はグラデウス国から来ただろ? それなのに、ゴウヨーク国の冒険者であるオレがテイマーというのは、おかしいだろう?」

「それもそうか」

「マクレガウス、グラデウス国で仮面をかぶるような風習はないか?」

「仮面はないな。顔に入れ墨を入れるのはあるが」

「入れ墨は却下。仕方ない。それっぽいのを作るよ。その代わりに、グラデウス国の服を貸してくれ。それを着るから」

「わかった。すぐに必要か?」

「そうだね。仮面の作りを合わせたい」


 ジョージは執務に戻り、マクレガウスは残った。代わりに護衛のひとりに指示して、服を用意してくれた。

 その服を着て、アイテムボックスに入れっぱなしの大きめの鏡を出して、姿見にして、確認する。

 姿見とはいっても、そこまでの大きさはない。せいぜい洗面所の鏡程度の大きさだ。それを角度を変えながら見る。

 そのようすをマクレガウスは、不思議そうに見ている。

「まるで、女のようだな」

「ん?」

「いや、服をそうやって確認している姿が、そう見えてな」

「ああ。まぁ、ふつうは着られればいいくらいだがね。でも、仮面を作るとしたら、ある程度の強さとか恐ろしさとかを強調しなければならないからさ。それにオレの体格は、冒険者としては、細身だからな。装飾品も必要だ」

「なるほど。それでもサブはそれなりに強いのだろう?」

「従魔が強いし、多いからな。それでB級に上げられた。それがなければ、C級でもどうかじゃないかな。知らんけど」

「ひとりで討伐した魔獣は?」

 軽く挙げていく。

「おいおい、そこまで行けば、C級以上だぞ」

「そう? でも実感がないんだよねぇ。パーティーのほかのメンツが強いから」

「ならば、一度、模擬戦をしてみるか? 実力を確認するために。おのれの力量を知っておくことは、今後のためになるぞ」

 そう言われると、確かにそのとおりなんだよなぁ。と考える。

「対人戦をしたことは?」

「対人かぁ。多少だなぁ。やったことがあるって感じ?」

「ふむ。ならば、やってみるといい。得物は何を使う?」

「ショートソードが主かな。あと、弓矢も使えると思う。人に教えてたから、覚えちゃってな」

「ふつう、自分が弓矢をやっているから教えるものだが? おまえは逆なのか」

「うん、いろいろあってね」

「それも勇者特典なのか?」

「まぁね」

 服の上から装備を着けてみた。ダメだな。ゴウヨークの冒険者に見える。

 すぐにしまった。

「グラデウス国の冒険者、じゃなくて兵士は、どんな装備だ? 彼らみたいな軽装じゃないだろう?」と彼の護衛を見る。

「革鎧か、金属甲冑だな。あとはそれの組み合わせだ」

「冒険者装備か?」

「まぁな。もともとは冒険者が兵士になって、そこから発展したからな」

「あぁ、そうだったな」

 良さげな仮面のデザインがイメージできない。

 オレは、中庭に出て、バロンケに声を掛けた。

「バロンケ」

『なんだ、サブ?』

 そばには、メアリが座っている。

「バロンケがいた人間の集落には、祭りはあった? あるいは、バロンケを祀り上げるとか」

『なにかと祝っていたな』と思い出し笑いするバロンケ。『面白い仮面と装束だった』

「どんなの?」

 その姿を言葉にするために考えるバロンケ。

 その言葉を書き留め、簡単な絵を描いて、バロンケに見せ、修正を繰り返す。


『そんな装束だったな』

「バロンケを模したものかと思っていたけど、まったく違うな」

 イメージとしては、老婆が魔獣になったような感じだろうか。長い白髪にギョロ目、長く垂れた舌、垂れた乳房。

 鑑定さん、わかる?

「ランダという名前に心当たりはある?」

『ランダか。それに近い発音だったと思う』

「オレの鑑定で調べたら、魔女だそうだ」

『なんだ、それは?』

「魔法を使う薬師ってところかな」

『薬師かはわからぬが、魔法は何度も食らってきた。魔獣も人間も使うからな』

「この格好で、人々は何をしていたんだ?」

『焚き火のまわりを踊っていたな。何か呪文を呟いていたが、意味があるようには聞こえなかったな。その踊りが終わると、みなが楽しげに踊っていた。中には求愛の踊りになった者もいたな』

「男も女も?」

『うむ』


*魔女ランダ

  ウィキペディア参照。

  聖獣バロンと永遠の闘いをする魔女。


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