638【呼び出しの理由】
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今話は、少し短めです。
「しかし、相談してよかった」とマクレガウス。
食事を終えて、お茶休憩。
「バロンケ様を見て」とジョージ。「頭に浮かんだのが、サブだった」
「それで呼び出される身にもなって欲しいな」とオレ。「理由も書かれてなかったんだぞ」
「すまんな。だが、そのまま書くわけにもいかなくてな」
「シャーラちゃんのサインを入れたのは?」
「屋敷に来てもらうためだ。内容が内容だけに、マナミ嬢も一緒に登城させるのも気が引けたのでな」
「なるほど。シャーラちゃんは、ジョージが国王だって、もう知ってるの?」
「いや。手紙には先にサインを書かせた」
「そうか。まぁ、いい。でも、いつまで隠すつもりだ? デビュタントは、さすがに隠せないだろう? アイーシャ嬢やリリアス嬢が、わかっていて言わないとはいえ」
「頭の痛い問題だ」と苦笑い。
「シャーラというのは」とマクレガウス。「ジョージの娘のことか?」
「ああ。シャーラは、ずっと病で寝たきりだったんだ。それをサブに薬師からの薬を届けてもらって、元気になった」
「そういうことか。その娘には、爵位のことは?」
「公爵家だと言っている。それとオレは王城で仕事をしていると話してはある」
「ふむ」
「その教育係というか」とオレが補足。「別々の侯爵家の娘がふたり、そばに付いているんだ。どちらもシャーラ嬢よりも年下だが、教育レベルを考えると、適切な相手だと思う」
「なるほどな。話からすると、その薬を届けたときからの付き合いか、ジョージとは?」
「ええ。そういうあなたは、冒険者時代からジョージと近しい関係?」
「冒険者だったと話したことがあったか?」と怪訝な顔。
「登城する前に、事前に調べたら、冒険者が王位に就いたと聞いたので」
「そういうことか。上位冒険者だったよ。ジョージとはそのころからだな」
「でしょうね。話し方から、そういう関係なのかなと思っていました」
「グラデウス国を奪取する際は、ジョージにも手伝ってもらった」
「オレは」とジョージ。「ちょい役だよ」
「何を言う。おまえのパーティーが率いた冒険者たちは、みなおまえを慕っていたではないか」
「そこまでのヤツラじゃないよ。ただ、力量のあるメンツに集まってもらっただけだ」
「こいつはな」とオレに向くマクレガウス。「戦端を切り開くのがうまくてな、大剣で目の前の敵を屠って、道を作った。オレはそのあとを付いていったのだ」
「それは」とジョージ。「おまえが先頭に立ったら、国王になる者がいなくなるからだろうが」
「ありがたかったよ、ジョージ」と笑うマクレガウス。
「ともかく、おまえが無事に国王に就いて良かったと、みんなで胸をなで下ろしたよ」
「そのあとが大変だったがな」
「それは知らん。国の長になったなら、あとはそいつの責任だ」
「聞いたか?」とオレに向く。「これだから、こいつは支えるヤツが必要なのだ」
「それでもよくやってるよ?」と返すオレ。
「そうでなければ、今ごろは、国がひっくり返っているわ」と大笑い。
「確かに」とオレも笑う。
ジョージは、ムスッとしている。
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