637【昼食の料理と海の魔獣】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
今話は、少し短めです。
昼食前に、国王ふたりがやってきた。すでにテーブルには昼食の準備がされている。
「わざわざ、ここで食べなくてもいいだろうに」
「そう言うな」と苦笑するジョージ。
「バロンケ様のようすも知りたいのでな」とマクレガウスも。
「別にいいけどね」
今日の昼食のメインは、魚だった。イワシよりもアジに近いかな。
「この魚は、海の?」
「そうだ」と答えるジョージ。「漁港で捕れたものだな」
オレの食べ方を見て、マクレガウスが驚く。
「なんだ、その棒は?」
「これは、“箸”というカトラリーだよ。アズマノ国のカトラリーでね。オレの故郷のものと同じなんだ。骨付きの魚料理だから、こっちの方が慣れているんだ。あっ、使いたいとか言わない方がいいよ。扱いは大変だから」
「容易く扱っているように見えるが?」
「小さいころから使っているからね」
魚から骨をきれいに外す。身を少し摘んで、食べてみる。ふむ、焼いたあとに煮たのかな。
そこにソースを掛けてあるので、ソースに付けて、食す。これ、肉用のソースか。
「これは、どっちの国の料理?」とふたりに問う。
「ゴウヨークのものだな」とジョージ。
「そうか。グラデウスの料理だと、どうする? 調理法なんかは」
「我が国か? 焼いたり、蒸したり、あと煮たりか」
「こうしたソースなんかは?」
「ソースか? 魚を漬け込んだものの上澄みを使ったり、イカなんかを塩漬けにしたものを使ったりもするな」
「“魚醤”と“塩辛”か。いいねぇ」
「知ってるのか?」
「オレの故郷にもあるよ。“塩辛”は、酒が進むよな」
「おお、わかるか。我が国では、クラーケンジュースと呼んどるよ」と言って、大きく笑う。
「クラーケンジュースねぇ。本物は?」
「クラーケンか? たまに出てくるが、大きな魚を捕まえていたりで、大型船に近付くことはない。小型船はそこまで沖には出ぬしな」
船を襲うイメージがあったが、そこまでではないということか。そういえば……
「クラーケンって、イカ? それともタコ?」
そう、昔はイカだったりタコだったりと描かれていた。
「どちらもクラーケンと呼ばれとる。タコの場合は、巨大ダコと呼ぶのがほとんどだがな」
「そういう巨大魔獣は、ほかにも?」
「おう、おるおる。だが、船にぶつかってくるヤツはいない。せいぜい並走するくらいだ。しかも、少しすれば離れていく。仲間と勘違いしたのかもな」
「ときおり」とジョージが口を開く。「港に来る魔獣がいて、追い出すのが大変だという報告があるな。なんでも三歩から五歩ほどの大きさだとか」
「焦げ茶で、胸ビレと尾がある魔獣だろう」とジョージに確認するマクレガウス。「ほっとくと、群れが現れて、そこを住処にするからな。一匹のうちに追い立てるしかないぞ」
「群れは困るな。まぁ、そうなる前に、追い立てているがな」
オットセイとしては大きいから、トドかな? それとも別の生物? いや、哺乳類とは限らないが。
そんな話をしながら、食事を進める。
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




