634【国王ふたりとの夕食】
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今話は、少し短めです。
そういえばと思い、侍従長に話し掛けた。
「すまないが、国王陛下に確認をお願いしたい」
「はい」
「仲間への連絡は、どうなっているのか、と」
「畏まりました」とそばに侍従に指示する侍従長。
侍従長は、人を使ってなんぼのものなのだな。うん、知ってた。
「いまさらだが」と問う。「バロンケ様が怖くないのか?」
「正直に言えば、怖いです。しかし、メアリがあれであれば、問題はございません」
「なるほど」
変な意味で、彼女は信頼されているんだな。
その後、さきほどの侍従が戻ってきて、侍従長に報告する。
「サブ様、お仲間には、宿泊することを伝えてあるそうでございます」
「ありがとう」
そうだよね。こんな案件を持ち帰らせないよね。はぁ〜。
しばらくは、部屋を整える侍従やメイドさんたちで、忙しなくしていた。
その後、中庭では、バロンケの身繕いをメアリとほかのメイドさんたちでしていた。長年、ひとりだったこともあり、バロンケの体毛はかなり汚れていたようだ。
メイドさんたちも、メアリのおかげでバロンケを恐れの対象ではなく、客人として扱っているので、バロンケもよろこんでいる。
侍従長から、ふたりの国王が夕食に訪れると知らされた。
すぐに支度がされていく。
オレに拒否権はない。まぁ、拒否するつもりもないが。
ふたりが部屋を訪れたのは、こちらの準備が終わって、十分ほどしてからだった。
「お邪魔するぞ」とジョージ。
「どうぞ」と迎える。
ふたりのほかに、当然護衛が付く。
「バロンケ様のようすは、どうだ?」
「みんなのおかげで、よろこんでいるよ」
「そうか」
ふたりが中庭のバロンケのようすを伺う。
「ほぉ、毛艶がよくなったな」とマクレガウス。
「メイドさんたちが、きれいにしたからね」
「この部屋のことは、どのように?」とジョージ。
「狭いが、中庭にいれば、大丈夫だろう。ずっとは無理としても」
「そうか」
ホッとしている。
食卓に三人で座る。まずは食前酒のワインをいただく。それから料理がひと皿ずつ出され、食べていく。
「そういえば」と口を開いたのは、マクレガウス。「サブは、何級だ?」
「Bです。従魔が強いので、ほぼ強制的に」
「確か、ケルピーとホワイトタイガーを二頭ずつだったか」
「ええ」
「詳しく教えてくれぬか」
ジョージに確認すると、すでにオレのことは話してあるそうだ。
なので、テイムした経緯を話して聞かせる。
「変わっているな。ふつうは魔獣を屈服させてのテイムなのに」
「そうらしいですね。魔獣と話せるというのが大きいのかも」
「そのおかげで、バロンケ様との仲介をしてもらえた。助かる」
「いや、それは違います。オレも最初は、それで話そうと思っていましたが、バロンケ様からの念話があり、驚いたのですよ」
「そうなのか」
「ええ。その前に鑑定されましてね。隠蔽していたのに、看破されてしまって、それに驚いていたら、念話で話し掛けられたんです」
「念話が通じるのがわかった上で、念話をしてきたと」
「はい。本来は、従魔とのつながりだけのはずだったんですがね」
「まぁ、相手が聖獣では、それも仕方あるまい」
食事は続く。
「サブが」と口を開くジョージ。「言っていた大会での件だがな、そのまま採用することになった。明日、発布する予定だ」
「上位者のみが、闘う権利を有する」とマクレガウス。「例え、負けても、挑戦した者にはそれなりの金子を与える。もちろん、バロンケ様から“参った”と言わせたら、大金を出す」
「なるほど。ところで聞いてもいいかな?」
「ん?」
「なんでそんなに大金を掛けられるの?」
「あぁ、知らないのか。我が国は、ミスリル鉱山を抱えているのだ」
「グラデウス国は、あちこちの国と交渉していて、金持ちの国なのだ」
「だからといって、それだけに頼っているわけではないぞ。我が国特有の産物も売っていて、それぞれの国からのさまざまなものを買い入れたりしているのだ」
「そういうことか。でも、なんでゴウヨーク国で大会を? 自国でやればいいんじゃ?」
「海を渡らねばならぬし、我が国に冒険者はおらんのだ」
「へっ?」
「みな、冒険者ではなく、兵士となる。そのため、冒険者ギルドもない。商業ギルドがあるのみだ」
「狩人もいないの?」
「いや、狩人はいる。兵士を辞めた者がなることが多いがな」
なるほど。地元の狩人ならば、素材採取は地元に還元するのがふつうだ。冒険者も冒険の旅に出なければ、それと同じようにする。
しかも兵士を辞めた者ともなれば、基礎戦闘技術を持っているから、ある程度の魔獣なら討伐できるだろう。できないとしても、ある程度抑えておける。そのあいだに、人々を逃がせる。
「我が国は、徴兵制を敷いていてな。教育とともに鍛錬を課す。別に戦争をしたいとかではなく、魔獣も多いので、その対応策としてだな」
「なるほど。基本的なことを教えておけば、いつでも魔獣相手になるということか」
「それだけではなく、出会いの場でもあるのだ」
「男女の?」
「それも含めてだな。辺鄙な土地では、相手もいないだろうし、友人も少ない。両方を得られれば、何かあっても助け合えるからな」
良さそうだな。
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