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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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633/648

633【巫女】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


今話は、少し短めです。

 そうして、バロンケの部屋には、水の用意と人員が配置された。

 人員は、まず、宰相配下の侍従長が訪れた。

 バロンケを見ても動揺せず、オレと話をしたあと、付いてきた侍従にいくつもの名前を伝えて、下がらせた。

「バロンケ様のおそばでも失礼ない人員を集めます」と侍従長。

「大丈夫ですか? こんな魔獣のお世話など」

「驚きはすれ、安全だとわかれば、きちんと仕事をする者たちです。最初は未熟な者を当てはしますが、ご心配には及びません」

「未熟な者?」

「はい。未熟者でございます。が、きっかけにはなりますゆえ、ご心配には及びません」

「はぁ」

 なんか押し切られた。手強い。


 最初の人員は、しばらくしてからメイドが来た。ひとりだけで。

 バロンケは中庭に出ているので、メイドはすぐには、驚かない。

 というか、何も聞いていないようで、侍従長の話を聞いている。

 肝心の客人の話を聞くと、バッと部屋の中を探し出す。

「落ち着きなさい、メアリ」

 と侍従長に言われた瞬間、ビシッとするメイドさん。侍従長は怖い存在なんだな、わかるわかる。

 注意点をひとつひとつ言われるメイドさん。それにきちんと応える。

「では、あとは任せます」

「はい、侍従長」

 侍従長から離れ、オレのところへ。

「メアリと申します。聖獣様のお世話係になります。よろしくお願いいたします」と一礼。

「サブだ。よろしく。さっそく引き合わせよう」

「はい、よろしくお願いいたします」

 なんかワクワクしてないか?

 ともかく、中庭へ。

『バロンケ?』

 バロンケがこちらを向く。

『彼女が君の世話係だそうだ。名前は、メアリだ』

 中庭でくつろぐバロンケを見たメアリの目が輝く。

 あれ? これは、“うわぁ、本物だぁ”的な眼差しだな。

「メアリ、紹介しよう。聖獣バロンケだ。魔獣とは違い、人を襲うことはない」

「はい」としっかりとうなずく。

「バロンケ、メアリだ。君の世話係だ」

 バロンケはそこから動かない。

「バロンケ様、よろしくお願いいたします」と眼差しを外さずに、お辞儀する。

『よしなにな』

 まぁ、念話は通じてないから、意志の疎通は成り立たないが。

 ところが、メアリは、バロンケの前で、ペタンと座り込んでしまった。

「メアリ?」

 ほうっと、ため息を吐くメアリ。

『コヤツ、巫女か』と驚くバロンケ。

『巫女?』

『うむ。たまにしか出会えぬが、我のような存在を恐れず、敬う心を持つ者だ。そばにいてもらいたい』と切望の念。

『わかった。話してみる』

 オレは侍従長を呼び寄せる。

「はい、サブ様」

「どうして、彼女を?」

「あれは変わった娘でして、魔獣を恐れないのです。本人もわからぬようで」

「なるほど。バロンケによると、彼女は巫女、聖獣に仕える素質を持った人間のようです」

「なるほど」と納得する侍従長。「メアリであれば、適切でございますか?」

「おそらく、バロンケはそばに置きたがるだろう」

 彼がうなずく。予想どおりというところか。


 そのあと、次々に侍従やメイドが現れる。彼らは、中庭のバロンケを一瞬恐れ、だがすぐに客人として対応することを決心する程度には、できた者たちだった。

 その判断材料として役立ったのが、メアリの存在だった。

 中庭で、彼女はなんとバロンケの顔や身体を笑顔で撫でているのだ。

 バロンケも満更ではない表情。

 これは魔獣を前にした行為とは違う、と誰でもわかる。いい判断材料だった。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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