624【ふたりの冒険者登録】
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今話は、少し短めです。
冒険者ギルドに着くと、受付嬢がすぐに対応し、そのまま執務室へととおされた。
「忙しかったか?」と問うオレに、いや、と応えるギルマス。書類仕事をやめて、立ち上がる。
「このふたりが、例のふたりだ」
「ご苦労様」
オレは背負っていたテリーをその場に降ろした。
「テリー、ムーナ、彼が冒険者ギルドのギルマスだ。挨拶して」
テリーは。オレから降りると、ギルマスを見てから、口を開いた。
「よろしくお願いします」とテリーは一礼した。ムーナちゃんも。
「これからは、ギルドが責任持つ。そのことについては、わかっているか?」というギルマスの言葉に、ふたりともうなずく。
「よし。この町は、おまえたちを歓迎する」と厳しい態度で、接するギルマス。「ただし、悪いことをすれば、罰するからな。それだけは気を付けてくれよ」
じっと見つめるギルマスに、ふたりは固くうなずく。
「よし。サブ、まずは、例のものを」
オレはうなずいて、注文の絵板を、ムーナちゃんに渡す。
彼女は、それがどういう意味かを悟り、ギルマスに差し出す。
ギルマスは、その板をマジマジと見つめ、それからうなずいた。
「よし。条件どおりだな」と板を納める。
それから彼はお金の入った革袋をムーナちゃんに差し出す。
そうされたムーナちゃんは、オレを見る。
オレはそれにうなずいて応える。
それから彼女は、前に踏み出し、ギルマスの前に立つ。そうして、革袋を受け取った。
「ムーナ」とギルマス。「これからもよろしくな」と表情を崩さず、問う。
ムーナちゃんは、大きくうなずく。
ギルマスもうなずいた。
「よし。ふたりには、冒険者ギルドがカネを貸す。そのため、まずは、冒険者として登録してもらう必要がある。名前は書けるか?」
「はい」とテリーが答える。
「字は読めるか?」
「あっ、よ、読めません。まだ、字の練習中で――」
ギルマスがテリーを止める。
「心配するな。きちんと読める方がいいというだけだ。ウソを言われるよりはいい。仕事を割り振って、あとからできませんは通じないからな」
「は、はい」
「ムーナ、おまえもだ」
大きくうなずくムーナちゃん。
ふたりの冒険者登録が済み、ギルドカードが渡された。
「これでふたりとも冒険者ギルドの一員だ。頼むぞ」
ふたりともにうなずいた。
「ふたりとも、サブたちとはここでお別れだ」とギルマス。
それを聞いて、えっ、とふたりがオレたちに振り返る。
「オレたちは、旅の途中でな。いつまでもここにはいられないんだ」
ムーナちゃんがマナミに駆け寄り、抱きつく。その瞳はぬれていた。
「サブさん、マナミさん、本当にありがとうございました」とテリー。「ここまでしてもらえたこと、忘れません」
「あとは、ふたり次第だ。絶望するなよ」
「はい」
マナミが屈んで、ムーナちゃんを強く抱く。
「ムーナちゃん、さよならは言わないわ。また、会いましょう」
うなずくムーナちゃん。それから、離れた。兄のところに行く。手をつないだ。
オレたちに向き、ふたりして、一礼した。
「ギルマス、任せた」
「任された」
オレたちは、執務室を出ると、ギルドをあとにして、町門を潜り、街道へと出た。
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