623【ふたりの年齢】
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今話は、短めです。
翌日。快晴。
朝食後に、テリーの容態をマナミとふたりで診る。
「風邪はもう大丈夫ですね」
「ああ。あとは、体力が戻れば、健康体だ」
「ありがとう、ございます」と頭を下げるテリー。
ムーナちゃんも頭を下げる。
「テリー、念のために聞いておきたいんだが、歳はいくつだ?」
これは鑑定さんで、すでに知っている。が、さすがに、何も聞かずに、言うわけにもいかない。
「たぶん、十四?」
「わからない?」
「はい」
「なら、先日、十五になった、ということにしなさい。大人として扱ってもらえる」
「大人?」とピンときていないようす。
「十五歳で成人だ。つまり、大人の一員となる。将来、何をするかは知らないが、少しは考えた方がいい」
「すぐに、働かないと?」
「そういう意味じゃない。冒険者ギルドの一角を借りて、冒険者として登録して、まずは手仕事をしてもらうことになると思う。お金は、冒険者ギルドが貸してくれることになっている。あとは少しずつ返していけばいい」
お金の話に、ホッとするテリー。
「冒険者ギルドのギルマスってわかるか?」
「あ、はい。一番偉い人、です」
「そう。そのギルマスには、おまえたちのことを話してある。酷い扱いは受けない」
「わかりました」
「ここまでの話で、わからないことは?」
「えっと」と考えるテリー。
手を上げたのは、ムーナちゃん。
「なあに?」
書字板に十五と書き、テリーへと矢印を書く。
それから自分を指差す。そして、指を振る。疑問を意味する手話だ。オレの知ってる手話だ。
「ムーナちゃんは、いくつかわからない?」
うなずくムーナちゃん。
「十歳というところだな。どう、マナミ?」
これは前に話し合っていた。
「そうですね。タヌキ獣人は幼く見えるという話でしたし」
マナミがそう言うと、ムーナちゃんは膨れた。“幼い”というところにむくれたのだ。
それにふたりして笑う。
「ムーナちゃんは、見た目以上にしっかりしているから、本当のムーナちゃんを知ったら、みんな驚くよ」
「ええ。驚かせてやりなさいな」
オレたちふたりで、彼女を励ます。
それでムーナちゃんは、機嫌を取り戻し、両手を握って、フンスと鼻息を荒くする。
冒険者ギルドに、みんなで行くことを話す。ふたりは緊張してはいたが、うなずいた。
お昼過ぎに、小屋をしまい、テリーを背負って、町を歩く。
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