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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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618/648

618【ムーナちゃんの仕事】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


今話は、少し短めです。

 翌日。

 朝食して、お茶休憩。

 テリーには、重湯が与えられた。水餃子ひとつが添えられて。

 ムーナちゃんがテリーに、身振り手振りで、自分が作ったの、と言っている。マナミと一緒に作ったのだろう。

「そうか。お手伝いできてえらいな」

 兄に褒められて、満面の笑顔のムーナちゃん。


 横になっているように言って、小屋を出た。あとをマナミに任す。

 そのまま、冒険者ギルドへ。

 この町にも、商業ギルドもあるが、孤児を連れ込むのはやめた方がいい、とエッサには言われた。

 それなりに対応するだろうが、どんな商人がいるかわからないため、揉め事になるだろうと。

 冒険者ギルドなら、基本的に外から来るのは、旅の冒険者。ほとんどがここ出身の者たち。つまり、町の中のことならば、彼らの方が親身になってくれる。

 基本的に、どこの冒険者ギルドも同じだ。


 冒険者ギルドに到着。すぐにギルマス執務室へと案内された。

「おはようございます」

「おはよう、サブ。どうだ?」

「目が覚めた。それでだいたいの話が聞けた」

「良かった。それで?」

「森の中に、両親とともに住んでいたそうだ」

「森の中に?」

「両親もタヌキ獣人で、父親が狩りに行って戻らず、母親が狩りに出たが、大ケガで帰ってきて、町に行けと言われたそうだ。それで死んだ。そのあと、おそらく商人の馬車に忍び込んで、この町に来た」

「そういうわけだったか」

「あとは、わかるよな」

「ああ。しかし、よく今まで見つからずにいたな、その家族は」

「ああ。それでどこの森かはわからないらしい」

「まぁ、子どもではそうだろうな」

「以上がわかったことだ。そちらは?」

「芳しくない。特に妹の方がな。簡単な手仕事がないわけじゃないが……」

「決め手に欠ける、と」

「そうだ」

「文字が書けるとしたら?」

 ギルマスが首を傾げる。

「ん? 書けるのか?」

「まだだ。でも、自分の名前は書けるようになった」

「名前がわかったのか?」

「ああ。ムーナと言うそうだ。連れが発音していって、それでな」

「また、時間の掛かることを」

「この町にいる限りは、ヒマなんでな」

「わかった。それで文字を教えていると」

「まだ、名前だけだ。だが、覚えるのは早そうだ。あとは、教材と教師次第だろう」

「そんなもん、どこにある?」

「冒険者ギルドでやれよ。冒険者研修会とかやってさ」

「誰が集まるんだよ」呆れてる。

「冒険者であれば、自分の名前くらいは、書けなきゃ、失格だってくらいは言わないと。それに商人との契約をするのに、契約書が読めなければ、いいようにされるだけだぞ? この町の冒険者がそうなってもいいのか?」

「んぐ」と何も言えなくなるギルマス。

「それに依頼書だって、きちんと読まなきゃ、冒険者の命にも関わるだろう?」

「そうは言うが、簡単なことじゃないぞ」

「なら、ムーナちゃんに絵を描いてもらえ。そこに文字を書くんだ。それを冒険者が見て、覚えていく。それなりにやってきた冒険者なら、その対応に気付く。彼女には、それで対価を支払えばいい。彼女も勉強になるだろうしな」

「そこまでの絵なのか?」

「まだまだだ。だが、書字板を渡したらよろこんでいた。好きこそもののなんとやら、だ。やらせてみよう」

「それでもダメなら?」

「練習させるさ。お金を稼げると知れば、頑張るだろう」

 とりあえず、依頼書用の板を数枚もらい、広場に戻った。


 小屋に戻り、全員にそのことを話して聞かせた。

 テリーは苦々しい表情をしているが、妹の意思に任せるつもりのようだ。

 ムーナちゃんもやる気だ。

「まずは、書字板に描いてみて。ものは……これだな」

 オレは、常設依頼に多い薬草を彼女に渡す。

 その薬草の特徴をわかるように教える。

 薬草を見ながら、書字板に描いていくムーナちゃん。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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