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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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616/648

616【この町の特色】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


今話は、少し短めです。

「獣人? なんの?」

「タヌキ獣人だ」

「タヌキ獣人か、珍しいな。アライグマ獣人ではないのだろう?」

「ああ。尻尾も短いし、縞模様もない。タヌキ獣人だ」

「なら、確かにそうだな。それで、どうする? つまり、今後は」

「オレたちも先を急いでいて、兄の回復を待つほどの余裕がない。連れて歩くわけにもいかないし。ともかく、兄の目覚めを待つしかない」

「それでギルドか」

「おそらく、そうなる」

 ふむ、考え込むエッサ。

「最初は、君たちに話をするつもりだった」

 そういうオレを見る面々。

「だが、信頼できるとはいえ、子どもふたりを預けられても、困るだろうと思ってな」

「ありがとう」とゲダル。「オレたちも子どもふたりを助けたい」

「だが」とエッサ。「現実は、難しいというのが、正直なところだ」

「わかっているさ。気にしないでくれ。それとも何かあるのか?」

「まぁ、秘密でもなんでもないが、そろそろ武器防具を誂え直したいと考えていてな」

 全員の装備を鑑定さんで調べる。

「あぁ、確かにくたびれているな」

「わかるぅ?」と情けない声を出すレトル。腰に佩いているショートソードを優しく叩く。「安物を買ったつもりはないんだけどさ、もうボロボロで、いつ折れるか心配なんだよねぇ」

「私も」とビビアン。「こないだのゴブリン討伐で、革鎧を斬られて、応急処置はしたけど、ちょっと不安」

「そういうわけで」とエッサ。「まとまったお金もあるし、装備を整えようかと話し合っていたところだ」

「それでふたりの子どもを世話するのは難しいと」

「そういうことだ。装備を整えたら、ほぼ一文無しになる」

「装備は冒険者の命を守るものだからな。何よりも優先すべきだ。わかるよ」

「助かる。それにしても孤児か」

「何か?」

「いや、この町では、冒険者のこともあって、孤児になった子どもは必ず誰かが保護するようにしているんだ」

「孤児院がないのは、そのためか」

「あってもいいとは思うんだが、慣習でな」

「まぁ、仕方ないさ。話は変わるが、この町で装備を誂えられるのか?」

「正直な話、王都で購入しようかと思っている。高いがそれなりのものが手に入るはずだ」

「知り合いがいるのか? いないと数打ちものになるぞ」

「それなりの工房を探してみるさ」

 こりゃ、本当に安物で我慢することになりそうだな。ここでは、何も言わないが。


 広場に戻って、小屋に入る。

「お帰りなさい」

「ただいま。ようすは?」

「さきほど、目を覚ましましたけど、意識朦朧で、ムーナちゃんの顔を見たら、また眠ってしまいました」

「ムーナちゃん?」

「女の子です。呼び名をどうしようかと思って、それであいうえおを言って、名前の発音にうなずいてもらって、それでわかりました」

「そうか。名前がわかるだけでも助かるよな」

「はい。それでギルマスはどうでした?」

 話して聞かせる。

「やはり、結論はまだですか」

「うん。それでも、風邪が良くなったら、ギルドで受け入れてもらえるそうだから」

「ですね。食事は?」

「腹ペコ」

 そのひと言に、クスリと笑うマナミ。

「すぐに用意しますね。ムーナちゃん、手伝って」

 マナミに呼ばれて、そばに行くムーナちゃん。書字板は兄のところに置いて。

 その書字板を見る。彼女の名前が書かれていた。マナミが教えたのだろう。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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