606【初日の野営】
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今話は、少し短めです。
その後は、コースからズレることはなくなり、夕方に野営場所を見つけて、着地した。
そこは、街道から少し入ったところ。街道からは注意して見ないと、わからない場所だった。
木々の密度が薄く、ぽっかりとした感じで、空間があった。
魔獣も小型がいるくらいで、それほど心配するほどでもなかった。
その空間に、野営を設営しようと、動き出したときに、マナミが上空を見上げた。
「サブさん、雨が来ます」
オレも見上げると、真っ黒な雲が覆っていた。
オレの顔にポツリと大粒がぶつかる。
「ヤバい! 小屋を出そう!」
バイクをしまい、そこの空間に小屋を出す。広さがギリギリではあったが、収まった。
急いで、小屋の中へ。
雨音が凄まじくなった。外を見ると、土砂降り。
「危なかったな」
「ですね」
雨音が酷くて、魔導具で遮音する。
「これで良し。おそらく、春になって気温が上がったことで、気象が不安定になって、それで降り出したんだろう」
「そうですね。あの、調理しても大丈夫ですか?」
「ああ」
この小屋には、台所はない。だから、テーブルを出し、そこに魔導コンロを出しての調理になる。それでも外での調理に比べれば、手間が掛けられる。
事前に野営での調理については、マナミから相談されていたので、決めてあった。
通常の野営では、基本的には作り置きを。小屋を出したら、自由に調理を、と。
マナミが食事を作っているあいだに、オレは小屋の中にいろいろと準備していく。
この小屋には、トイレとお風呂がないのだ。そこで、個別に作り、設置する形にした。さすがにバスルームは無理だが、シャワールームは大丈夫。その分、狭くなるが、ふたりが少し生活する程度なら、不自由には感じないだろう。
夕食を終え、お茶休憩。
「今日は予定どおりの距離ですか?」
「おおよそね。明日からは、ポイントを決めて、直線距離で飛ぶつもり」と地図を出して、指差す。「途中、森の奥をとおることになるが、高度を上げて、魔獣を刺激しないで行く」
「明日も雨だった場合は?」
「ふつうの降りなら飛ぶ。大雨ならここで待つ。この雨だと、危なそうだからね」
「いいと思います」
「不寝番は、どうします?」
お茶を啜っていると、そう聞かれた。
「索敵さん任せにしようと思う。この雨で、動きまわる魔獣もいないだろうし。いても近くに来れば、索敵さんが起こしてくれる」
「そのときは、起こしてくださいね。ひとりで倒そうとしないで」
心配そうにそう言われては、無下にもできない。
「わかったよ」
「本当に?」と怪訝そう。
「本当に。約束します」
「よろしい」と笑顔を向けてくる。
マナミには、叶わないな。
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