600【魔導雪掻き機と男同士の恋バナ】
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今話は、少し短めです。
それからは、ランドルフも雪掻きに出掛けてくれた。
その代わり、オレとマナミは、ランドルフからナターシャのことを頼まれ、屋敷に留まることに。毎朝、チェックしていて、容態が急変することはないと確信していたのだが。
だから、ビガーとともに屋敷の雪掻きをすることにした。とはいえ、魔導雪掻き機を使うので、たいした時間も掛からない。
「何を作るんです?」とマナミ。
執務室で作業を開始したことに、彼女は首を傾げているのだ。
「冒険者ギルドに貸し出すための魔導雪掻き機を作るんだ。そうすれば、雪掻きが早く済む。その分、あちこち行けるようになる」
「あぁ、そういえば、私たち、かなり羨ましがられていましたからね」
「まぁ、単にヒマを持て余しているだけだけどね」
「いいと思います。それじゃ、ナターシャさんのところに行ってますね。ちょっとお話してきます」
「うん」
そうやって、作業を進めるあいだ、たまに、ソニンがお茶を淹れに来てくれる。お礼を言って、啜る。そのくらいの余裕はある。
ちなみに魔導具を作る際に、魔法陣を書き込むのだが、書き込むインクは単なるインクではない。電気回路が電気をとおすのと同じように、魔法陣に魔力をとおすインクを用いる。
このインクは、炭と魔石を砕いて、粉末状にしたものを、粘度のある液体に溶いて混ぜている。
この粘度のある液体は、乾いても柔軟性があるため、魔法陣を描いても、湾曲させることができる。
この液体を鑑定さんと知識の書で調べると、なんと高分子ポリマーだった。
液体を作るのも特別な材料は必要なく、森の浅いエリアに自生する魔木から得られるものだった。
本当に、よくこんな素材を見つけたな、と感心する。歴代の魔導具師に感謝を。
みんなが帰ってきたところで、出掛けた。
冒険者ギルドに到着。受付嬢に要件を伝えると、一度、二階へと行ってくれて、すぐに戻ってくる。
一緒に二階の執務室に入る。
「どうした、サブ?」とギルマスのドネリー。
「お疲れ様。雪掻きの道具は、いらない?」
「雪掻きの?」と怪訝な顔をしたあとで、すぐに気付いたらしい。「おまえたちのか!」
「そう」
「欲しい!」
「貸し出すよ。浮遊の魔導具と同じく」
そこで貸し出し料金の値段交渉。
すぐに契約。
「それを作ってて、来なかったのか?」
「いや。患者の容態を見ててな」
「ああ。それで?」
「すでに処置した。今は経過を見ているところ。今のところは、大丈夫だ」
「よかった。結局、ランドルフとは、どういう関係だったんだ?」
「ランドルフが昔、結婚を申し込んだ女性。そのときは断ったんだが、死ぬんだったら、最後は彼のところでってことらしい」
「あぁ、それで有り金はたいて、来たわけか」
「ランドルフはランドルフで、忘れられずにいたみたいだね」
「それがここでふたたび出会えたってか。いいねぇ、若いもんは」と年寄り臭いことを言う。
「ドネリーは?」
「断られ続けてるさ」
「想い人がいたのか」
「ああ。長年の付き合いだ。ここから先は言わないぞ」
「ひとりしか思い当たらないな」と笑む。
「そこまでにしてくれ。オレたちの仲は、オレたちが決める」
「了解。みんなにも内緒にしとくよ」
「そうしてくれ」
屋敷に戻ると、もうすぐ夕食の時間だった。
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