597【地図と行き先】
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今話は、少し短めです。
そんなこんなで、一時間が経過して、ナターシャが目を開けた。
彼女の身じろぎに、イスから立ち上がり、彼女のところへ。
「起きた?」
「ん? あぁ、サブさん」
起きようとするナターシャ。それを制する。
「手術は、成功したよ」
それを聞いて、ホッとする彼女。
「ありがとうございます」
「痛みは?」
「なんとなく、ぼんやりと」
「診ますね」とマナミが彼女の腹部に手を当てて、魔力の流れを診る。「魔力は大丈夫です」
「鑑定さんもだ。おそらく、手術跡の引きつれだと思います。すぐに気にならなくなるでしょう。少しでも気になることがあったら言ってください。悪化させないために手を尽くしますので」
「はい」
「今、人を呼びますので、そのままで」『ウーちゃん?』
『うむ』
『ランドルフに、彼女を運んでくれって言ってもらえる?』
『わかったのじゃ』
ランドルフは、すぐに駆け付けた。ダッシュしてきたらしい。息が切れてる。
「無事に終わったから、落ち着け」
「お、おう」
「深呼吸して」
すーはーと息をするランドルフ。落ち着いたところで、中に入れる。
手術台の上のナターシャを見る。
「なぜ、マスクを?」とオレを見る。
ナターシャには、不織布のマスクをしてもらっている。
「病のもとを吸い込まないようにだ。手術あとで身体の抵抗力が落ちているから、その病のもとを吸い込むと抵抗することができない。それでマスクをしてもらっている」
「そうか」
ナターシャに向き直るランドルフ。彼女の髪を撫でる。
「ランドルフ」と声を掛ける。「部屋まで頼むよ」
「わかった」
彼がナターシャをお姫様抱っこして、部屋のベッドまで運ぶ。
数日後。
ナターシャに屋敷内での散歩を許可した。ここからは、体力回復のリハビリになる。
まずは、リビングに案内する。そこで全員を紹介するためだ。
「何人かは、知っているよね。これが、C級冒険者パーティー《竜の逆鱗》の全員だ」
ひとりひとりを紹介していく。
「よろしくお願いします」と一礼してくれる。
よろしく、とみんなからの明るい返答。
ソファーに座らせる。
そこにソニンがお茶を出す。
「ありがとう」
「サブからは」とダルトン。「容態は聞いてるよ。無理はしないでね」
「はい。無理して、ご迷惑をお掛けするわけにいきませんから」と苦笑い。
「まぁ、ランドルフがいるから、大丈夫だろうけどね」
「多少、過保護ですけど」とクスクス笑うナターシャ。
ランドルフは、苦笑いで頭を掻いている。
「それにしても」とナターシャ。「パーティーとしては、大人数ですね」
「そうなんだよねぇ。サブが次々と仲間にしちゃうからさ。いつのまにかねぇ」
そこで、どうしてこうなったのかを話して聞かせた。
「まあ。それはまた、すごい出会いですね」
「うん。それぞれに理由はあるけどね。これも縁かなと」
「でも、これだけの人数になると、旅をするのも大変でしょう?」
「まぁね。だから、春からのこともそろそろ考えておかないと、とは思っているんだよ」
「そだね」とダルトン。「まだまだとはいえ、考えておいた方がいいよね。それでサブは、何か考えがあるの?」
地図を出して、テーブルに広げる。
「何、この地図、だいぶ歪んでない?」
「鑑定さんにこれまで行った場所を中心にして描いてもらった。それを書き出したものだ。ふつうの地図よりも正確だよ」
「なんでまた?」
「ふつうの地図だと、正確な位置関係がわからないし、掛かる時間も経験から導き出されてて、正確じゃないだろう?」
「そんな違わないでしょ?」
「空を飛ぶと、ふつうの地図は当てにならないんだよ」
「あぁ、そういうことね」
「空を飛ぶ?」と小声が聞こえた。ナターシャだ。
「あぁ、ランドルフ、話してなかった?」と彼を見る。
「さすがにな」
「そうか。どう説明するかな? ナターシャ、これはオレたちパーティーのよく使う手でね。魔導具で空を飛ぶことができるんだ」
「魔導具で? 魔導具を多用するのは、ランドルフに聞いたけれど」
「この町の雪掻き作業にも使ってる」
「そんな魔導具をどこで買ったの?」
「オレが作った」
「サブさんが?」
「こいつは」と笑いながらランドルフ。「なんでも作るんだ」
「なんでも?」
「そ、なんでも」とダルトンも。
ほかのみんなもうんうんうなずく。
「わかりました。話を遮ってごめんなさい。続けてください」
「まぁ、詳しくはあとあとということで。さて、まずは、アキタ村とサナル村には顔を出したいよな」
「アキタ村は絶対ですね」とマナミ。「食材を買わなくちゃ」
「そうそう。サナル村は、大工さんが家を建てるだろうから、それも見たいしな」
「見たいです」と食い気味エイジ。
「だな。ほかは特にないよな」
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