595【手術の決定】
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今話は、短めです。
ときおり、ナターシャが痛みに耐える場面もあったが、ランドルフがそばにいたおかげか、おおむね元気にしていた。
代わりにランドルフが少し痩せたが。まぁ、心配することしかできないからな。
毎日の検診をオレとマナミでやる。マナミが魔力で魔素の流れを確認。オレが鑑定さんで確認。
その日、検診を終えたオレたちは、お互いに顔を見合わせ、それからうなずいた。
ナターシャに向き直る。
「ナターシャ、数減らしは功を奏した。あなたさえ良ければ、明日、大物を仕留める」
彼女とランドルフが笑顔で向き合う。それから、オレを見た。
「お願いします」
「わかった。オレたちも最善を尽くす。だから、最後まで諦めないで欲しい」
「もちろんです!」
力強い返事をもらった。
オレもうなずく。
執務室に明日の手術スタッフを集めた。
「明日、手術する」
みんなも硬い表情でうなずく。
「これまでの練習で、失敗の可能性はほぼなくなったと思う」
手を上げたのは、エイジ。
「ひとつ、気になっていたんですが」
「言ってくれ」
「もしも出血が止まらなかったら?」
「そこはオレもどうするか悩んだ。そこで」オレはアイテムボックスから、あるものを出して、テーブルに置いた。
「これは?」
「彼女の血を使った専用のポーションだ」
「専用の?」「血を使った?」とエイジとケイナが怪訝な表情になる、
「ふつうのオレのポーションは、効きすぎて、ガンの増殖につながるんだ」
「あっ、そうか」とエイジ。「人体の細胞を活性化して、患部を治すから、そうなるのか」
「そうだ。そこで、彼女の血を入れて、彼女の身体に合わせたポーションを作ったんだ。ガン細胞は、もとは同じ細胞だが、それが変異してガンとして増殖する。変異してしまっているから、これが効くことはない」
「だから、専用なのか」とケイナも納得する。
「そう。しかも大量に作ったから、大量出血でも対応できるはずだ」
「それを切除後の肝臓に掛ければ――」とケイナが続けようとするのを遮る。
「いや、掛けない。もともと肝臓の回復速度は早いんだ。そこに掛けてしまうと、異常な速度で増殖して、肥大化する可能性がある」
「言われてみれば」
「ただ、縫合したあとには使うつもりだ。手術痕だけでもなくなれば、身体も健康に近くなるからな」
「なるほど」
「縫合糸は数日後に抜糸する。念のためだ」
うなずくみんな。
「唯一の懸念材料は、本番だということだな。ウルフとの違いとか、患部の状態とか、その他想定外のことだな」
「そこは」とマナミ。「最初からわかっていたことです」
「そうだな。ともかく、道具の用意もできた。練習もしてきた。念のためのポーションも用意した。あとは、やるたけだ。頼む!」
おう!と応えが返ってきた。頼もしい。
「えっ、明日やるの?」とダルトン。
夕食後のお茶休憩で、そのことを話した。
「ああ。ナターシャの身体も、道具の用意も、オレたちの練習も、すべて準備完了した。あとはやるだけだ」
ダルトンが手術スタッフ全員を見回す。
「みんな、いい顔してる。イケそうだね」
「もちろんだ」
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