表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

592/648

592【ナターシャが来た理由】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


今話は、ふつう。

 ドネリーが、冒険者からスタッフが聞いたことをまとめて、教えてくれた。

「理由を知らないそうだ。ただ、彼女に護衛依頼を高額で受けたんだと」

「なんで?」

「聞いたそうだが、話さなかったそうだ」

「目的地は?」

「ここだ」

「ここ? ランドルフに会いに、ということか?」

「そう考えるよな。それでもランドルフを訪ねる理由は、彼女から聞くしかない」

「ランドルフ?」

「ん?」

「理由はわかるか?」

 首を振るランドルフ。それでも彼は彼女を見たままだ。


 ドネリーやみんなが部屋から出ていったところで、ランドルフに問う。

「どういう関係だ? 一緒に闘った以上の何かがあるよな?」

「鑑定さんか」

「人生経験」

「そうか」彼がため息を吐く。「彼女は、オレが一緒にいたい女性だ。それでわかるか?」

「彼女もその気持ちを?」

「知っている。だが、一緒にはいられない、と断られた」

「理由は?」

「教えてくれなかった」

「そうか」

 何も言えないオレは、彼の肩を叩いて、部屋を出た。


 ナターシャの容態は落ち着き、ランドルフがオレたちを説き伏せ、屋敷へと連れ帰った。

 ドネリーの話では、彼女の護衛依頼を受けた冒険者たちは、空いている宿屋へと入ったそうだ。動きようもないしな。


 連れ帰ると、ランドルフはナターシャのそばから離れず、看病をはじめた。

 そのようすから、ランドルフにとって、ナターシャがどういう存在なのかは、みんなには何も言わずともわかっていた。赤ん坊のベルは別として。


 後日、雪掻き作業の際に、冒険者ギルドのドネリーから、オレだけが呼ばれた。

 ナターシャの護衛依頼を受けた冒険者からの話をまとめた、その報告だった。

 彼らは、ナターシャからの依頼を通常の倍で受けた。

「護衛任務とはいえ、彼女も力量のある冒険者だから、護衛対象を守る必要がないため、悪くない条件だと受けたらしい」

「まぁ、わからなくもないが」

「大半の荷物をマジックバッグに入れての雪中行軍だったらしい」

「それなら行動が楽になるか」

「大型魔獣の多くは冬眠するし、ウルフなんかも街道に人間がいるとも思っていないから、襲われにくいしな」

「なるほど。で?」

「それでも魔獣に襲われた。ウルフの群れだそうだ。それで闘った。彼女も一緒にな」

「無事に着いたってことは、討伐できたんだな」

「ああ。だが、そのあとから彼女のようすがおかしくなり、彼女自身が行動できなくなったそうだ」

「魔力の枯渇と内臓の痛みか」

「心当たりが?」

「鑑定でな。それで?」

「とにかく、彼らは護衛対象である彼女を簡易的なソリに載せて、ここまで来たんだそうだ」

「それが到着時の状態か」

「ああ。彼女の状態を考えて、急ぎ足で来たらしい」

「状況はわかったな」

「それで彼女、今は?」

「安定しているが、まだ目を覚まさない」

「そうか。目が覚めたら?」

「内臓の腫れを取らないと、死ぬ」

「おいおい、大丈夫なのか?」

「わからん。ここの医者では、扱えない病だからな」

「それで? それがわかるってことは、治療の目処があるんだろう?」

「なんとも。なんせ、やるのがオレだからな」

「サブが? いや、そこまで言えるってことは、やれるんだな」

「わからん。道具を少しずつ作っているところだ。薬も」

「手伝えることは?」

「祈っていてくれ。本当は、シファー様あたりがそばにいてくれたらうれしいんだが、無理だしな」

「メカタ村の薬師か。来てくれたら、こっちも助かるんだが、そうもいかんだろうな」

「ともかく、話が聞けてよかったよ」

 それで、執務室をあとにして、みんなの担当地区へと向かう。


 屋敷へと戻ると、セバスさんから、ナターシャが目が覚めた、と報告があった。

 部屋には、オレだけが向かうことに。


 部屋の扉は開いていた。それでも軽くノックして、顔を覗かせる。

 こちらを向いたふたり。

「お帰り、サブ」

「目が覚めたと聞いてね」

「ナターシャだ。彼はサブと言って、冒険者パーティー《竜の逆鱗》のリーダーだ」

「初めまして」と会釈。

「このたびは、ありがとうございます」

「目覚めて、よかったです」

経緯(いきさつ)は話してある」とランドルフ。

「こちらもドネリーから聞いてきた。魔獣に襲われ撃退したが、そこで倒れてしまったとか」

「はい。酷い腹痛で気を失ってしまいました」

「そのようですね」

 ランドルフに目線を移す。彼と目が合う。うなずいた。話はとおっているようだな。

「その腹痛に関する話はランドルフから聞きましたか?」

「はい。治癒できるかはわからないと」

「ええ。それとオレがやる、ということも?」

「はい。腹を裂いて、内臓の一部を切り取るとか」

「簡単に言うとそうなります。しかし、そうする前に、内臓の腫れを小さくする必要があります。そのための薬を飲んでもらいます。小さくなれば、腹を切る大きさを小さくできて、回復が早まります。その後も治癒の効果を高めるための薬を飲まねばなりません。それなりの期間か掛かります」

「わかります」

「それから」と一拍置いてから言う。「冒険者には戻れません」

 間髪入れずにうなずく。

「彼から話は聞きました。少しでも生きられるなら、冒険者に執着はありません」

「わかりました。それで、野暮な話ですが、ご家族は?」

 首を振る。

「彼女は」とランドルフ。「幼いころに両親を亡くした。その後は、冒険者のひとりに養われた。その関係もあって、冒険者になったんだ」

「なるほど。ここで問題にしたいのは、彼女のその後だ。ある程度、元気になれば、ここを出ることになる」

「ここに置いてもらえないか?」

「理由は?」

 ふたりが顔を見合わせ、うなずく。

「オレと彼女は、結婚する」

「断られたんじゃなかったか?」

「彼女が受け入れてくれた」と彼女の手を取る。

「ふふ、おめでとう、ふたりとも。みんなにはどうする?」

「関係を言ったのか?」

「言わなくてもわかるよ」

「そ、そうか。任せていいか?」

「こういうのは、自分で言いな」

 恥ずかしそうに、頬をポリポリ掻くランドルフ。

「わかった」と苦笑い。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ