585【ふつうの女の子?】
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今話は、短めです。
商店街の雪は、雪掻きしたのか、道脇に積まれていたが、人が歩ける程度には道ができていた。
店に入る。とドアベルが鳴り、来客を知らせると、奥から女性が出てきた。
「いらっしゃい。あら、いつも皆様にご贔屓いただいています」
あぁ、みんな、ここに買いに来てたか。
「こちらこそ。今日はこの子たちの服をお願いします。下着に靴下、室内着、それと外出着。あと、靴もあれば」
「ありますよ」
外出着と靴以外をとりあえず三つずつ。
「あの」とビガー。「いいんですか?」
「必要だから買う。それから髪も身体も洗ってもらうからな、毎日」
「ま、毎日!?」
「何を驚く? ここは、温泉街だぞ」
「いや、でも」
「清潔にしろ、と言っているんだ。身ぎれいにしていないと、いくら働き者でも置いておけないぞ」
「あ、はい」
ふたりを女性に任せて、オレも服を見繕う。それなりに着替えはあるが、くたびれてきてもいるのだ。ここらで新調しよう。
新調とはいえ、中古服も多い。それに日本のように既製品とかのサイズ表示もない。着てみないと、それが自分に合っているかもわからないのだ。
まぁ、ここはほかに比べて、新品も多いから助かる。中古服も仕立て直ししているから、風合いもいいのだが、日本人としては新品を求めてしまうのも無理はない。
ひととおりの服を台に置き、女性が見繕うのを待つ。
そのようすを見ていて、気付いた。
ソニンがどこかしら笑顔で、服を取っ替え引っ替えしているのだ。やはり、女の子だからなのかな?
反対に、ビガーは早々に決めてしまっていた。
彼を手招きして、持っていた服を取り上げ、台に置く。
「ソニンは、服が好きなのか?」
「わかりません。あんなソニン、初めてで」と自分の妹を首をひねって見ている。
「初めて?」
「……実は」とオレを見てから、口を開くビガー。「母が死んでから、ようすが変わってしまって」
「どんな風に?」
「なんか、ソニンではあるんです。でもソニンではないんです。どう言えばいいのか」と眉間にシワを寄せるビガー。
「ビガー、それはソニンが人に危害を加えるとかではないんだろう?」
「はい。ソニンも戸惑っているみたいで」
「ともかく、今は問題にするようなことではなさそうだ。気にするな」
「はい。ありがとうございます」
ようやく、服が決まって、買い物を終了。マジックバッグに買い物をしまい、店を出て、道を歩く。
ソニンは新しい靴を汚したくないと、古い靴を履いて歩く。それに倣い、ビガーも。
商店街を外れると、さすがに雪が積もっている。子どもが行けないこともなくはない。しかし、オレまで、それをするのもイヤだ。
雪の上に、大型ソリを出す。護衛任務で雪に降られることを想定して用意していたものだ。結局、使わずに済んだが。
「さぁ、乗って」とソニンを抱き上げて乗せる。
ビガーも戸惑いながらも乗る。
オレは腰にソリのロープをくくりつけ、浮遊の魔導具を起動。
屋敷へと向かう。
ほへーとしているビガーと違い、ソニンは声を上げて楽しそうだ。
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