577【オーガたちのことの報告とお土産】
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今話は、少し短めです。
ミゼス町へは、門をとおらずに入る。出る際は、潜っていないからな。
オレは、仲間たちと分かれて、冒険者ギルドに。ドネリーに説明しておかないと。
冒険者ギルドに入ると、飲んでる冒険者がちらほらいる程度。
受け付けカウンターに行く。
「珍しいですね、こんな時間に」
「ギルマスは、いる?」
「はい。お話でしょうか?」
「オーガの件で、報告があるんだ」
すぐに執務室へととおされた。
「それで?」とドネリー。疲れた顔をしている。
「オレたちで調査してきた。その報告だ」
「オレに何も言わずに、か?」
「すまんな」
「いや、いい。それで?」
「サンタナ村は、取り戻した」
「オーガは? 討伐したのか?」
「移動してもらった。もとの集落にな」
「どういうことなんだ?」
そこで、オーガたちが、なぜサンタナ村を襲ったのかを説明する。
「アーマードベア三体にやられていたのか」
「ああ」
「しかし、タイミングがおかしくないか?」
「どうやら、襲撃後、次の集落にする土地を探して、うろついていたらしい。まっすぐにサンタナ村に向かっていたわけではないそうだ」
「そうか。しっかし、サブのスキルはすごいな。オーガとも話せるなんて」
「片言だけどね」
「それでもだ。ともかく、助かる。ありがとう」と頭を下げるドネリー。
「いいよ。村人たちに早めに知らせてやってくれ」
「そうする。報酬はどうする?」
「勝手にやったことだ。あるとは思ってないよ。もしも、くれるんなら、サンタナ村復興のために使ってくれ」
「いいのか?」
「アーマードベア三体とキラービーの報酬で、充分だ」
「わかった。そうする」
それで執務室をあとにした。
屋敷に戻ると、お風呂で、汗やホコリを流す。それですぐに出た。
みんなに、夕食を待たせていたから。特にウーちゃんを。
夕食後、お茶休憩。
「みんな、今日はご苦労だった」
「疑問が払拭できて良かったですよ」とエイジ。「昨日から気になっていましたから」
「だな」と同意するハルキ。「オーガにしては、受け身にまわってた感じだったよな」
「言われてみれば」とマナミ。「腰が引けてたわね」
「たぶん」とオレ。「戦士級は門に集められていたんじゃないかな。強そうなヤツが多かった」
「なるほど。一点突破しようと考えたんですね」とエイジ。
「そこをサブが」とダルトン。「煉獄の粉を撒いた。そしたら、仲間を襲いはじめたからね」
「あれには」とオレ。「助かった。噴霧が少なくて済んだからな」
「残り少ないのか?」とランドルフ。
「いや。煉獄の実はあったんだ。ただ、粉の取り出しをするのを忘れてて、あのオーガ全員に噴霧する量がなかったんだ」
「危ねえなぁ」と呆れるダルトン。
「用意しとくよ」
「そうして」
「でも」とキヨミ。「アーマードベア三体は、あちこちで悪さをしてましたね」
全員がうなずく。
「大きいのは」とランドルフ。「キラービーとオーガで、小さいのもありそうだな」
「生態系が」とケイナ。「乱されているかもしれないな」
「生態系?」とミリンダ。「何?」
「簡単に言うと、食う者と食われる者との関係だな。肉食魔獣は草食魔獣を食べ、草食魔獣は草を食べる。これはわかるだろう?」
うなずくミリンダ。
「そうした関係が崩れると、大変なことになる。例えば、オーガの集落が襲われた。今回はオーガたちが逃げてきたが、オーガたちが全滅していたら、オーガたちが食べていた草食魔獣が数を増やす。草食魔獣が増えれば、草が少なくなる。それで草食魔獣が飢えて、ほかの魔獣を襲うかもしれない。そうなれば、スタンピードは大袈裟でも、人を襲うようになる」
「それ、大変じゃないですか」
うなずくケイナ。
「だが、今回は、オーガたちが生きていて、集落に戻った。それほどの変化はないはずだ」
「なるほど」
「だが」とオレ。「ほかに影響がないとも限らない。弱い魔獣なら、ほかの冒険者が退治できるだろう。しかし、強い魔獣の場合は、緊急依頼もある。みんなもそれは承知しておいて欲しい」
力強くうなずくみんな。
「ウーちゃんも今回はありがとう。緊急依頼のときはお願いするね」
「うむ」
そのとき、ヤルダさんがポットでカップにお茶を注ぎ込むのを視界に捉えた。
それであることを思い出した。
「忘れてた。ヤルダさん」
「はい」
「お土産があるんだ」とスクロールを出す。
「あれ」とダルトン。「まだ、渡してなかったの?」
「ああ。いろいろとあったから」
スクロールをヤルダさんに差し出す。
「こちらは?」
「エルフの里に行って、もらってきたものだよ。ハーフエルフの耳を人間族の耳にするものだそうだ」
「えっ」
「使うか使わないかは、君の自由だ。ハーフエルフから人間族になれるわけではないが、それでもハーフエルフと蔑まれることはなくなるだろう」
ヤルダさんは、スクロールを見て、みんなを見て、オレを見て、最後にセバスさんとネイリンさんを見た。
全員が笑顔だ。
セバスさんとネイリンさんが、うなずく。
それを見て、おずおずとスクロールを受け取るヤルダさん。
「注意して欲しいのは、もとに戻せないこと、変わるにはひと晩掛かること。それと、ほかのハーフエルフにも使えるそうだ」
「ありがとう、ございます」とスクロールを見つめている。
「使え、と強要することはないよ。君の自由だ」
「はい」
呆然としているヤルダさんに、セバスさんとネイリンさんが近付き、そっと抱いた。ふたりもよろこんでいるのだ。
みんなもそのようすを見て、ほんわりしている。
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