573【伝言仕事の彼の消息と魔獣襲撃】
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今話は、少し短めです。
ここから、魔獣襲撃編になります。
翌朝。
ガルラとキース君、ガーネスの三人は旅立った。それぞれに用があるとかで。
遅れて、オレたちもミゼス町へと向かう。冬籠りのために。
行きと同じく、二日で到着。
門衛からは、魔獣被害はないと聞いた。
みんなに屋敷に向かってもらい、オレとダルトンとランドルフで、冒険者ギルドに寄る。
そのまま執務室にとおされた。
「お帰り。それで?」とギルマスのドネリー。
「無事に送り届けました」
ホッとするドネリー。
ランドルフは、転送用の獣皮紙を受け取り、王都冒険者ギルド宛の書簡を書いている。
「ご苦労だった」
「こちらは、何も変わりなく?」
「ああ。アーマードベアもキラービーも発見されてない。ガーネスは?」
「依頼があったようで、そちらに」
「そうか」
ランドルフは書簡を書き終え、スタッフに渡す。
ひとつ思い出した。
「関係ない話だが」
「ん?」
「伝言仕事で、よく来てたガルドはどうしたんだ?」
「ガルド? あぁ、パーティーに誘われて、加入した。本人も冒険したいと言っていたからな。確か、護衛依頼を受けて出てるはずだ」
「そうか。ならいいんだ。最近姿を見ないな、と思ってただけだから」
「下級冒険者が育ってくれるのは、うれしいものだな。逆に心配でもあるが」
うなずく。
冒険者は、危険と隣り合わせだからな。
街なかの仕事なら、命に関わるようなケガを負うことはほぼない。だが、外に出れば、身を守るのは自分だけだ。
ビープ音が鳴った。魔導通信機だ。
スタッフが書簡を取り、宛先を確認すると、ドネリーに渡す。
ドネリーが受け取り、中を改める。眉間にシワ。オレたちを見る。
「サンタナ村が魔獣の襲撃を受けている」
サンタナ村は、ダイナーク国側の隣村だ。
索敵さんで調べてみる。
オーガだ。しかも……
「オーガの集団だ。五十を越える」
「ご」「五十!?」「なんでまた!」
「どうやら、次の集落を探しているようだ」
「その標的が、サンタナ村か!」
「どうすんの、サブ」
「ドネリー、あそこは数十人の村だったよな?」
「ああ」
「村を明け渡すことは可能か? 村人を保護したあとだが」
「そのあとに討伐するなら、一時的には」
「とにかく、村人たちを優先しよう。みんなを呼ぶ」とダルトンとランドルフに確認を取る。
ふたりともうなずく。
『ウーちゃん?』
『ん? サブかぁ』腑抜けた念。
『もしかして、お風呂中?』
『もしかしなくてものぉ』
『悪いんだけど、誰か呼んでくれない?』
『わかったのじゃ。キヨミ〜!、マナミ〜!』と大声ならぬ、大念。
『ウーちゃん、念話で叫んでも』
『おお、そうじゃった』
しばらくして、ウーちゃん。
『キヨミが来たぞ』
『わかった。伝えて。帰宅早々悪いが、緊急だ。人命救助に出る、と』
伝えると、返ってきた。
『全員かと』
『全員。ラキエルも一緒』
『ワシは?』
『エッへ・ウーシュカの存在は知られたくないから、そのままお風呂を楽しんで』
『……伝えたぞ』と少し怒っている。
『こっちは先行する、と伝えて』
『ほいほい』
あとで機嫌を取らなきゃな。
『ラキエル?』
『ん?』
『帰ってきて早々に悪いんだが、緊急で出て欲しい。人命救助だ』
『えぇ?』
『ゴブリン奮発するから』
『何匹?』
『五匹くらい?』
『行く!』と元気な念。現金である。
『みんながそっちに行くから、待ってて』
『ほいほぉい』
軽い。
「ランドルフは、みんなと合流。ダルトンは一緒に来てくれ」
「帰還早々、悪いな」とドネリー。「報酬は用意しておく」
「村人の受け入れ準備を頼む」
「おう」
挨拶もそこそこに、オレとダルトンはギルドを出た。
浮遊して、街道へと出る。
そこで、魔導バイクを出して、浮かばせると、乗り込んだ。
「ダルトン! ここへ!」と席を半分空けて、ポンポンする。
何も言わずに、そこに着くダルトン。
「これに乗るのかぁ」
「緊急」
「わかってる」
オレは、バイクを進ませた。速度を上げていく。
ものの十分で到着。
「あんなに来てるの!?」とダルトンが下を見て叫んだ。
サンタナ村の塀のまわりに、五十のオーガが取り巻いていた。門が破られ、侵入が開始されたところだ。
「ダルトンは、村人を指揮して、避難の準備を」
「サブは?」
オレは、噴霧器を出した。
それを見て、ダルトンはうなずき、バイクから飛び出した。
オレは、空中にバイクを停止させてから、飛び出す。同時に防護し隠遁する。
門から侵入したオーガに、次々と煉獄の粉を吹き付けてまわる。吹き付けられたオーガが絶叫を上げる。
それに反応したほかのオーガたち。だが、そこにも煉獄の粉が襲い掛かる。
武器の棍棒を振りまわしはじめると、仲間でも手応えがあれば、そこに攻撃を集中していく。相討ちとも知らずに。
それを見て、オレは強そうなヤツから、吹き付けていく。前後不覚になれば、まわりを攻撃してくれる。それだけ時間を稼げる。
ほかのオーガたちが、半狂乱になった強者達から距離を置きはじめた。襲撃どころではない。近寄れば、味方の武器の餌食になってしまう。
ひと通り、撒き終えると、オレは地面にしっかりとした線を引き、村の内側にいくつもの煉獄の実を置いていく。“これ以上、入るな”というメッセージだ。
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