572【仲間たちへの説明】
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今話は、長めです、
村の広場に、全員で到着。
三人を夕食に誘った。
道中、何も聞いてこなかったから、オレの話を聞きたいのか、受けてくれる。
オレたちのテントのそばに、自分たちのテントを立てる三人。
まずは、夕食を食べて、舌鼓を打つ。
それからお茶休憩。
「それで?」と切り出したのは、ダルトン。
「ハイエルフと会ってきた」
「はぁ!?」
みんなも驚いている。驚いていないのは一緒だった三人だけだ。
「会うには会ったが、言伝を頼まれたそうでな」
これには三人も首を傾げた。
「そうだ。ガルラ殿やキース君は、知っているが、ガーネスは知らなかったな。オレと若者四人は、異世界から召喚された勇者とその一行なんだ」
「異世界? 召喚?」とわからないガーネス。
「前国王は、何度も勇者召喚をしてきた。これは聞いたことはないか?」
「ある。その勇者だと?」
「そうだ。だが、オレたちは、前国王たちを信じられなくて、王城を脱出したんだ」
「なるほど」
「それで冒険者になって、王都を脱出。その際にランドルフと知り合い、その後、ダルトンとも知り合った」
「最初のパーティーになったわけか」
「そう。で、ここで今回の話につながるんだが、オレには神様から与えられた仕事があった」
「神様から?」
「そう。勇者召喚の魔法陣を使われる前に回収する仕事だ」
「なぜ?」
「頻繁に行なわれてきた勇者召喚だが、そのために世界が危険な状態だったんだ。どう説明しようかな。ここに家の壁があると想像してくれ。召喚を行なうごとに、この壁に亀裂が入っていく。やがて、大きな穴になり、魔獣に襲われるようになる」
「なるほど。外とつながるから危険になると」
「そうだ。それを神様は修復していたんだ。しかし」
「次から次へと勇者が召喚される。修復が間に合わないと」
オレはうなずいた。
「だから、召喚の魔法陣を回収してきたわけだ」
「わかった。それで?」
「ハイエルフのホルトは、その神様からの言伝を預かり、今日オレに伝えてくれた、というわけだ」
ガーネスは納得してくれた。
でも、なぜか、ガルラとキース君が唖然としていた。
「あれ? どうした?」
「サブ」とダルトン。「それ、たぶん、ふたりに話してなかったと思うよ?」
ふたりが、うんうんうなずく。
「ありゃ、ごめん」
「いや」とガルラ。「まさか、神様に役割を与えられていたとは」
「単なる勇者召喚だとばかり」とキース君。
「まぁ、そういうことだから。他言無用で頼むよ」
三人がうなずいた。
「んで?」とダルトンが話の先を促す。
「言伝は、先日のダンジョンでの働きを労うものだったよ」
「ほかには?」
「神様からは、それだけ。でも、ハイエルフからは、ふたつの贈り物をされた」
「ふたつ?」
手のひらに、例の半透明の白いものを出す。
「これを出せば、どのエルフでも便宜を図ってくれるらしい」
エルフふたりが、色めき立つ。キース君も。
エルフふたりは、魚のように、口をパクパクさせている。
「サブさん」とキース君。「それ、なんだかわかっていますか?」
「さっき話したとおりじゃないの?」
「それ、アダマンタイトですよ?」
「アダマンタイト?」
鑑定さん、よろしく。本当だ。
「だね。でも、君も持っているんだろう?」
「ボクのは、これです」と手のひらに出したのは、色からしてミスリルだ。彫刻は同じ。
「どういう違いがあるんだ?」
「少なくとも一段は違います。というか、アダマンタイトのそれは、最上級のものになります。ミスリルのものはあの里の里長からもらいました。民のひとりとしての許可証のようなものになります」
「ということは、これは」
「すべてのエルフの里で使えます。また、すべての里にいるハイエルフとも会えるかと」
キース君が師匠のガルラを見る。オレも。
「キースの言うとおり、それは最上級の印だ。里長は扱うことを許されていない」
「そんなもの、持ってる方が、危険じゃないのか? 誰かに奪われる気がするんだが」
「心配ない。ハイエルフから渡されると、その人物しか使えない。ほかの者が持つと、効力を失うのだ」
「取り返しても?」
「取り返せば、効力は戻る」
「へぇ」
「サブが、神様からの役割を持つから、与えられたのだろうな」
「サブ」とダルトン。「もうひとつは?」
「忘れてた」とスクロールを出す。「これは、ヤルダさんへのお土産」
「お土産?」
「ハーフエルフの耳を人間族の耳にしてくれるんだそうだ」
「はぁ!?」
「耳を変えるだけで、ハーフエルフでなくなるわけじゃない。そういうものだ」
「?」と首を傾げるダルトン。
「つまり」とエイジ。「“遺伝子”を変えるわけじゃない?」
「そうらしい」
「“遺伝子”とはなんだ?」とランドルフ。
「親から子に伝わる気質、ってところかな」
「なるほど」
「それで、なんで、それを?」とダルトン。
「ヤルダさんのことで、困ってるって言ったら、くれたんだ。ほら、セバスさんがぎっくり腰で動けなくなっただろう? それで、男手が欲しいって話になってさ。商業ギルドに相談したんだけど、ハーフエルフと一緒に働くのは云々ってことで、働き手はいないだろうって」
「そういうことか。で、相談したら、スクロールをくれたと」
「そう。まぁ、使うかどうかは、ヤルダさん本人に任せるがね」
「? ヤルダさん、ハーフエルフのままでいい、って感じのことを言ってたの?」
「いや。ハイエルフに言われたんだ。中にはハーフエルフのままを希望する者もいるって」
「いるの?」
「稀にいるらしい」
「ふぅん」
「ほかには、何を話したんだ?」とランドルフ。「そのふたつだけでもないんだろう?」
「そうだねぇ」と思い出す振りして、考える。
エルフ・獣人族・人間族の関係を言うのは憚られた。キメラ・メーカーなんて存在のことも。
「昔の戦争の話を聞いたよ。なぜ、エルフが人間族を嫌うようになったのか」
「なんで?」とダルトン。
「詳しくは聞かなかった。ただ、ちょっとした口論が、引き金になっての戦争だったらしい」
「へぇ」
「それ以来、エルフは人間族を嫌い続けているんだそうだ」
エルフふたりがうなずいている。
キース君が口を開く。
「そういえば、ボク、戦争の原因を知りませんよ、師匠」
「敢えて話さぬことにしたのだ。人間族のおまえでは、教える意味がないのでな」
「どういうことです?」
「寿命のことだ」
「あぁ」
「おまえがエルフならば、教えておく必要がある。しかし、人間族の寿命を考えると、そんな話をしたところで、どうしようもない」
「わかりました」
キース君は、わかったようだが、オレたちにはわからなかった。だが、ガルラに聞いたところで、同じ理由で、教えてくれない気がした。
その晩は、みな早めに就寝した。
*アダマンタイト
ウィキペディア参照
ここでは、特殊な金属として登場。
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