568【ハイエルフからの要請】
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今話は、少し短めです。
翌日。
朝食のあとのお茶休憩。
前日までの集中力のためか、頭がボーッしている。
そこへキース君が駆けてきた。表情が硬い。
みんなの空気が緊張をはらむ。
「サブさん、師匠が来てもらうようにと」
「わかった」
みんなも動く準備をする。
「あっ、サブさんだけお願いします」
オレが、みんなに待機するように伝える。
ガルラのもとへと行くあいだ、キース君は口を開かなかった。おそらく、口止めされているのだろう。
ガルラは、黒褐色の肌のダークエルフと待っていた。
「ガーネス、戻ったか」
「サブ、一緒に来てくれ」
「どこに?」
「里だ」
「えっ?」
「エルフの里だ。我らエルフの始祖ハイエルフがサブを呼んでいる」
「ハイエルフ?」
「知らぬだろうな」
「エルフの貴族様みたいなものだろう? オレ、知人でもなんでもないぞ」
それを聞いた三人がキョトンッとする。それからすぐに笑い出した。
「間違ってたか?」
「すまん」まだ笑っているガルラ。「ハイエルフは、確かに、尊いお方だ。しかし、貴族ではない」
「サブさん」キース君もまだ笑いが収まらない。「たぶん、イメージが違います。姿かたちは、確かにエルフです。でも違うんです。森の守り神とかの方が近いと思います」
「王族だろ?」
「いいえ。王侯貴族はエルフにはいません。土地を統べるハイエルフがいて、民を統べる長老たちがいるんです。あとは、民ですね」
「“映画”や“ゲーム”や“ラノベ”の世界と違うの?」
「違いますね」
「わかった」ガーネスに向く。「それでハイエルフがオレに会いたいと?」
うなずくガーネス。
「そうだ。サブを連れてくるように、と」
「そうか。だが、なんの用だ?」
「わかると思うか?」
「なんも聞いていないの?」
「うむ」
「今すぐ?」
これにもうなずくガーネス。
「しょうがない。この四人で向かうの?」
「案内人兼護衛だそうだ」
「仲間には? あぁ、いいや。ウーちゃんに頼もう」
ウーちゃんに念話して、みんなに言っといてもらう。連絡しろよ、とダルトンからの言伝ももらった。
「それとガルラ殿、大剣はどうする?」
ここで受け渡しをした。
四人で森に入る。
「ふたりは、入ったことがあるんだよな?」とガルラに尋ねる。
「もちろんだ。キースのことは、許可をいただいてから、入れた」
「小さなころですけどね」
「子どもでも人間族だから、入れないのかと思った」
「例外だったみたいですね」
しばらく、歩いていると、鑑定さんが反応した。“聖霊樹の結界”に入ったと。
「聖霊樹ってなんだ?」
三人が驚いて立ち止まった。
「あぁ、オレの鑑定スキルは、特殊でな。常時発動しているんだ。それに反応が出た。結界に入ったようだな」
「まだのはずだが」とガルラ。
「ボクも鑑定スキルはありますけど、そんなのわかりませんよ?」
「サブが呼ばれた理由のひとつかもな」
三人がそれぞれの言葉を呟く。
「それで聖霊樹って?」
「向こうで」とキース君。「言うところの“ユグドラシル”とか“世界樹”と呼ばれるものです」
「ああ」
「でも、大木ではありますけど、そんな巨大なものではありません」
「なるほど」
ともかく、結界を歩く。
「おかしいな」とガルラ。「警告の矢が飛んでこない」
「確かに」とガーネスも同意する。
「それどころか」とキース君。「地面を見てください。道が示されています」
見ると、地面には、草が左右に生え、道になっていた。
「草が生えてるだと!?」ガーネスが叫ぶ。
「おかしいのか?」
「ここは、森の中だ。木々が生い茂っていて、陽が差す場所は限られる。なのに、こんなに生えてるなんて、異常だ」
「植物魔法を使えるエルフなら、ふつうだろう?」
「レベルが違う」
「ガーネス」とガルラ。「これは単なる道ではないな」
「何!?」
「本当だ」とキース君も。「いつもの道じゃないですよ、これ」
「つまり」とオレ。「ハイエルフがここを通れって言ってるんだろ。行こう」
警戒しながら、その道を歩く。
*ハイエルフ
ピクシブ百科事典参照。
本作では、独特の存在。
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