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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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564/648

564【エルフと鍛冶師】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


今話は、少し短めです。


エルフの里編 になります。

 夕方。

 護衛組がやってきた。

 ケガを負ったようすはない。

 お帰り、と出迎える。

 向こうも、ただいま、と返してくる。

「大丈夫だった?」

「何度か、魔獣と鉢合わせしたけど、討伐目的じゃないから、逃げ道を用意したら、逃げてった」

「そうか。それで、子どもたちは?」

「無事に、ガーネスとともにエルフの里の警戒範囲に入っていったよ」

「よかった」


 夕食を食べ終わり、お茶休憩。

 そこで蹄鉄交換の話をした。

「へぇ、こんな村に鍛冶師がいたんだ」

「武器防具は作らないって、言ってたな」

「なんで?」

「生活のためのものを作っているってさ。エルフからも依頼が来るらしい」

「エルフから?」

「外を出歩く里出身のエルフだと」

「里のエルフって、金属を嫌うって話だったけど?」

「それでも必要なものもあるんだって。使わないといけない時は、グローブして使うってさ」

「あぁ、なるほど」

「難儀だよな」

 お茶を啜る。

「しかし」とランドルフ。「蹄鉄なんて、すっかり忘れていたな。本来ならば、オレたちが気付いて、連れていかねばならないところだったのに」

「オイラも忘れてた。ほとんど、空の旅だから、そういう意識がなくなってたんだね」

「オレも最初、ラキエルに言われて、キョトンッとしてしまってさ。向こうの世界じゃ、馬を扱うのは特定の人ばかりだったし」

「馬の代わりがいるんだろ?」

「あぁ、馬がいなくても走る馬車がな」

「魔導具だな」

「そうだな」


「それで」とランドルフ。「蹄鉄の交換は、無事に済んだのか? ラキエルが駄々をこねたとかは?」とほくそ笑む。そうなりそうだと思っているんだろう。

「それが鍛冶師と馴染みだった」

 ふたりが驚く。

「なんでも以前は定期的にやってもらってたらしい。でも、その鍛冶師に“ラキエルが生きてるわけねぇ”って、言われてさ。仕方なく、“ケルピーだよ”っと教えた」

「信じたの?」

「最初はダメ。だから、馬化を解かせた。それで信じてくれたよ」

「なんで、“今も生きてます”って言わないの」と呆れてる。

「ふつうの馬が生きてるわけがないって言われてるのに? ラキエル、そんな老馬じゃないじゃん」

「それもそうか。んで?」

「まぁ、そんなこんなで、蹄鉄の交換がはじまった。ああいうものなんだな」

「ずっと見てたの?」

「そう。だって、興味があったし。ヒマだったし」

「はいはい」

「終わったら、剣を見せろって言われた。もともと武器防具をやってたそうでな」

「ふぅん。それで?」

「けちょんけちょんに言われた」

 みんなが笑う。

「でも、ミスリル剣の配合をどうやって知ったか聞かれてさ。知識の書を見せた。お貴族様の邸宅から見つかったって話にして」

「納得した?」

「“お貴族様め!”って叫んでた」

 クスクスと笑うみんな。

「配合は、教えなかったの?」

「自分なりの配合があるんだろう。すぐに諦めた」

「頑固そうだね」

「そんな感じはなかった。だから、今後もラキエルの蹄鉄をお願いするつもり。旅の途中で寄れたらって、ラキエルにも言っておいた」

「そっか。いんじゃない。それでそのドワーフ、名前は?」

「デーク」

 ダルトンとランドルフが腰を浮かせた。驚いたようだ。

「デークって言った?」

「うん」

「おいおい、こんなところにいたのか」とランドルフが唖然としている。

「ふたりが知ってるってことは、有名人?」

「有名も有名。武器防具を作らせたら、ゴウヨークで一番と言われた鍛冶師だよ」

「それが突然、いなくなった。当時は他国に奪われたんじゃないかと噂になったもんだ」

「でも、調べた限りじゃ、そんな影もなかったから、不思議だったんだよ」

「ふむ」と少し考え、それからキツく言った。「全員、このことは、他言無用だ」

 みんなが、ビクッとして、背筋を伸ばす。

「なんでさ」

「デークがここを選んだんだ。“武器防具を作らない”と宣言している以上、なんらかの理由でそうしてるってことだ。そこに“デークがいるぞ”とわかったら、どうなる?」

「殺到するな」とランドルフ。

「だろう。いち鍛冶師として、静かに生活しているのに、騒々しくされたら、また姿を消すしかない。違うか?」

「確かにな。わかった。他言無用だ」

「オイラも同意するよ」

「頼む」


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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