表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

563/648

563【蹄鉄の交換】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


今話は、ふつうです。

 蹄鉄の交換をそばで見せてもらう。

 ドワーフは、名前をデークと名乗った。オレも名乗る。

 デークは、ラキエルの蹄を上げさせて、蹄鉄を確認する。

「前に交換して、どのくらいだ?」

『どのくらい?』とオレに聞いてくるラキエル。

「おまえ、オレに買われる前は?」

『交換したばっかり』

「とすると、そろそろ三年?」

「おいおい、会話できるんか」

「人間の言葉は、充分わかりますし、テイムしてるからやり取りできるんです」

「ほぉ、便利だな。しかし、三年だと! なってねえな、おまえのご主人様はよ」

 首を縦に振るラキエル。

「おまえなぁ、今まで蹄鉄変えたいって言わなかったじゃないか」

「そういうのはな、飼い主の責任だぞ! 馬のせいにするな!」

 怒られちった。

 そこでデークに、蹄鉄について教えてもらった。


 蹄鉄は、主に蹄の保護と運動能力向上のために使われる。

 蹄鉄を付けることで蹄が削れるのを防ぎ、蹄が裂けることや病気の予防になるし、地面をしっかり蹴ることができるようになり、速く走ったり障害を跳ぶ際に安定性が増す。馬の足元のバランスを整え、着地の衝撃を吸収する効果もあるそうだ。


 デークが、ラキエルの脚を股に挟んで、ベンチのような道具で、蹄から蹄鉄をグイグイと力強く外していく。それから小さな鎌のような道具で、足裏を削っていく。どんどんと白い蹄が露わになる。ペンチみたいな爪切りでまわりを切っていく。そうしてヤスリ掛け。まるで料理の上でチーズを削っていくようだ。それを四つ足すべてに施す。

 一旦離れ、デークは奥から真っ赤な蹄鉄を持ってきた。それを鉄の台(金床というらしい)の上で、ハンマーを打ち付けていく。見た目にはわからないが、おそらく微調整だろう。

 それからラキエルの前脚を股に挟んで、その蹄鉄を蹄に押し付けた。ジューッという音とともに白い煙が発生する。焼いているのだ。

『熱くないの?』

『温かいだけ』

 ラキエルから離れ、金床の上で、さらなる微調整。

 また、ラキエルの前脚を股に挟んで、蹄鉄を当て、釘を打ち付けていく。

『痛くないの?』

『全然』

 知識の書を出して、知識を得る。

 なるほど、人間の爪の白い部分だから、痛みはないのか。しかも、釘は白い部分から飛び出させるとか。えー?

 蹄を焼いたのも、蹄鉄を密着させるためらしい。

 蹄から飛び出た釘を、曲げたり削ったりと手順を進めていくデーク。

 それで一脚が終わる。

 次の前脚へと移行。


 四肢が終わるまで、見ていた。時間が経つのが早い。

 最後にワックスを掛けて、終了。

 ラキエルなんか、途中気持ち良くて、寝てたしね。

 言い値を支払う。

「本当は、ひと月ふた月を目安に交換すべきだぞ」

「はぁ」

「ラキエルの蹄鉄は、それほど削れてはいなかったから、半年くらいが目処だと思え」

「はい」

「それにしてもふつうに走らせているのに、なんで蹄鉄が減らんのだ?」と首を傾げるデーク。

「それは、魔法で、地面の上を走ってるからです」

「地面の上を?」

「ラキエル、浮いて見せてあげて」

 ラキエルが少し走りながら、浮き出す。地面から二十センチほど浮かぶ。

 それを見たデークが、ほぉっとアゴヒゲを撫でる。

 立ち止まると、地上に接地。

「こんな感じです」

「ほかのケルピーでもこんなことが?」

「わかりません。こんなことができるのは、ラキエルしか見たことがありませんから」

 本当は、ウーちゃんもいるけどね。

「まぁ、それもそうか。ところで」とオレを見る。「その剣を見せてみろ」と手を差し出すデーク。

「武器防具は作らないんじゃ?」

「もともとは、そっちの職人じゃ。ほれ」

 ごねても仕方ないので、剣を抜き、柄を向けて、渡す。

「ほぉ、ミスリル剣か。ほどよい配合だな。しかし、切れ味は良さそうだが、今ひとつの出来だな」

 そう言って、柄を向けてきた。

 受け取って、鞘に収める。

「でしょうね。自作なんですよ」と苦笑する。

「自作? 鍛冶師なのか?」

「素人に毛が生えた程度です」

「配合はどうやって決めた?」

「先人の記録が残っていまして、そこから」

「鍛冶師の宝だぞ! おいそれと記録を残すわけがあるか!」

「ここに」と知識の書を出す。

 渡すが、当然開かない。

「それ、魔導具らしくて、ほかの人に渡っても、開かないようになっているんですよ」

「いったいどこで」

「とある貴族の邸宅から」

「お貴族様か!」

 知識の書を突っ返してくるデーク。

 どれもウソだけどね。

 配合は鑑定さんだし、出どころはウチの屋敷だし。


「で、なんでこの村に?」

 さっきまで憤慨していたデークが、気を取り直して聞いてきた。

「実は、エルフを護衛して来たんです」

「エルフを?」

「エルフの子どもが拐われて、それを助けたんです。で、エルフの冒険者とともに来たんです。今ごろは里に着いているんじゃないかと」

「そうか。子どものケガは?」

「ありません。少し栄養失調気味でしたが、それなりに回復しています」

「良かった」とホッとしている。

「エルフの里と交流が?」

「里との交流はない。だが、とあるエルフと知り合ってな。たまに依頼をくれるんだ」

「依頼?」

「生活道具のあれこれだ」

「なるほど」

「彼らは金属を苦手にしている。しかし、必要不可欠ならば、使う。そのへんは、時と場合によるわけじゃ」

「やっぱり苦手なんですか」

「うむ。そのへんにいるエルフはそうでもないが、里のエルフは直接触らずにグローブを付けるそうだ」

「そこまで」

「まぁ、自然を友とする民だからな」

 お礼を言って、別れた。

『ラキエル』

『ん?』

『また、デークにやってもらいたいか?』

『もちろん!』

『旅に余裕があったらな』

『やった!』


 広場に戻ると、ラキエルは蹄をふたりに見せる。

「うわぁ、きれいになりましたね、ラキエル」とラーナが褒める。

「ほぉ、こんなものを付けとるのか。変わっとるの」とウーちゃんはあまり良く思っていないみたい。

「野生馬だと付ける必要はないそうだけど、人に飼われてる馬は、蹄が弱いんだそうだ。まぁ、ラキエルには必要ないだろうけど」

「だが、機嫌が良いのぉ」

「途中から寝てたよ」

「寝た!? コヤツが!」

「気持ちが良かったみたいだね」

「わからん」とウーちゃんが首を振る。


*蹄鉄

  ウィキペディア参照

  交換場面もYouTube動画にありました。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ