556【商隊を襲撃した魔獣】
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今話は、少し短めです。
商業ギルドを出る。すると、ウーちゃんからの念話。
『どうした?』
『冒険者に招集が掛かったそうじゃ』
『みんなは?』
『今、玄関じゃ。ダルトンが連絡しろと』
『了解。冒険者ギルドで会おう、と伝えて』
『わかったのじゃ』
念話が切れた。
オレは冒険者ギルドを目指して歩く。索敵さんを働かせながら。
冒険者ギルド到着は、ほぼ同時だった。
すでにたくさんの冒険者が集まってきていた。
「マナミ、キヨミ、門に行ってくれ。ケガ人が多数出ている。ミリンダ、一緒に行って、手助けを」
三人が門に向かう。
「サブ」とダルトン。「話は?」
「商業ギルドで聞いた。商隊が街道で魔獣に襲われたそうだ」
「具体的には?」
「知らされてない。だが、索敵さんが見つけた」そこで小声にする。「キラービーだ」
「キラッ」そこまで言って、口を手で押さえるダルトン。まわりを見る。誰も気付いていない。ホッとして追加情報を尋ねてくる。「で?」
「クイーンビーが新たに巣を作った。できた巣が街道脇で、縄張りに入ると、攻撃してくる。おそらく、それでやられたんだろう」
「うわぁ、運がないね」
「エイジ」
「はい」
「ギルマスに、オレとダルトンは斥候に出たことを伝えてくれ。すぐ戻るから安易に冒険者を動かすな、とも」
「わかりました」
オレとダルトンは、うなずき合い、何も言わずに、浮遊する。
街道を索敵さん頼りに進む。
現場に到着すると、ひとりの冒険者らしき人物が倒れていて、そのまわりに十センチ弱のキラービーが何匹かうごめいていた。集団は巣に戻ったか?
「サブ、彼は?」
鑑定さんで調べる。
「毒による麻痺状態。生きてはいるが、危険な状態だ。ここで待っててくれ。隠遁で助けを試みる」
「気を付けてよ」
「もちろんだ」
隠遁のローブとマスクをして、ゆっくりと近付く。索敵さんにそこにいるキラービーの状態をチェックさせながら。
動かそうとすると、キラービーが若干反応するのを索敵さんが知らせてくる。
先にキラービーをなんとかしないとダメか。
一旦、戻る。
隠遁を解く。
「キラービーをなんとかしないと、動かせない」
「どうすんの?」
「鑑定さんによると、火魔法で焼くらしいな」
「そだね。でもそれやると、彼も焼けちゃうよ?」
「だよな。まぁ、魔導ライターで羽を焼けば、飛べなくなるから、それでもいいけど、その前に動き出しそうなんだよなぁ」
鑑定さんによれば、キラービーは羽音で仲間を呼ぶそうだから、迂闊に動けない。
アイテムボックスに何かあったかな?
「とりあえず、やっつけるよ」
「へっ?」
ダルトンを置いて、ふたたび隠遁して、冒険者のもとに。
まずは、彼の半径三メートルに結界と遮音の魔導具をセットして起動。もちろん、オレもキラービーも一緒だ。これでキラービーを逃さないし、羽音で仲間を呼ばれもしない。
次に、ゴブリンを出す。
すると、キラービーが仲間を呼ぶための羽音をうるさく鳴らす。そうして、ゴブリンに飛び付き、腹部の毒針をゴブリンに何度も刺す。
オレはそんなキラービーに、ヒュージアントに使った閃光発生器を使ってみた。とりあえず、次々に。
キラービーたちは、黒かった複眼が白くなり、固まった。ヒュージアントと同じだ。だが、回復秒数を知るつもりはない。
ハサミで、次々に首を切っていく。
討伐完了。
すぐにアイテムボックスにゴブリンごと収納する。
冒険者の彼を抱え上げて、歩いて戻る。
隠遁を解くと、彼を仰向けに横たえた。
彼を抱え、開いた口へと、解毒ポーションを流し込む。
むせ返ることなく、飲ませ終え、ようすを見る。もちろん、鑑定さんで。
「どう?」
「毒の量が多いからか、効きが遅い。だが、命は取り留めたようだ」
ホッとするダルトン。
「よかった。それで何をしたの? ゴブリン出して、閃光発生器が光ったのはわかったけど」
「ヒュージアントと同じだった。目が白くなって、固まった。復活する前に、ハサミで首を切り落とした」
「あぁ、なるほどねぇ」
「まぁ、その前に、結界を張って逃さないのと、遮音して仲間を呼ぶのを止めたがな」
「遮音して?」
「鑑定さんによると、羽音を鳴らすと、仲間が来るんだそうだ。応援要請だな」
「ありゃ。それで遮音か」
「うん。そろそろ動かせそうだな」
移動する前に、百人の騎士をオーガの村に導いた際に使った柵を、街道に置いて、地面にメッセージを残す。“キラービーの巣がある。注意して進め”と。
*キラービー
蜂型魔獣。
現実世界では「アフリカナイズドミツバチ」
の別名であり、強い攻撃性を持つ交配種の
ミツバチ。
本作品では、大きなオオスズメバチのイメ
ージです。
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