555【ハーフエルフは不吉の象徴】
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翌日の朝食後に、ガーネスを運動場へと案内する。
「これが飼い慣らされた鳥型魔獣か」とガーネスがニワトリ小屋を見る。
ニワトリの朝は、小屋の中で目覚めるようで、まだ小屋から出ていない。
シャインによると、追い込まなくても、自然と入ってくれるそうだ。手間が掛からず、ありがたい。
シャインが、採卵するときに、小屋を出るとか。
「そういえば」とガーネス。「ケルピーもいるんだよな?」
「あの馬がそうだよ」
「馬?」
「馬化してるんだ。長年、人間相手に騙してきたから、ふつうはわからないよ」
「騙す?」
「ラキエルは、川から出て、馬の姿になって、意図的に人間に捕まって、世話させてきたんだ」
「なんでまた」
「川が住みにくくなったみたいだな」
「そんなことがあるんだな」
「それでいろいろあって、オレが購入したら、ケルピーだとわかったんだ」
「どうやって?」
「この町は、温泉地だが、冬場は雪に閉ざされる。で、オレたちはここで冬籠りするわけだが、それでも鍛えておくわけだ。ある日、外で遊んでいたら、ラキエルが出てきて、魔法を使い出したんだよ」
「魔法を?」
「雪玉を作って、オレたちにぶつけはじめたんだ。その前から雪を投げつけて遊んでたからな」
「それで発覚したのか」
「そ。そんな馬、いるわけないから、鑑定士に見せたら、ケルピーだったわけだ」
「なるほどな」
「で、オレが従魔にした」
ガーネスの視線がラキエルからトリリーに向かった。トリリーは軽く伸びをしたりして、柔軟体操的なことをしている。
何かを言いたかったようだが、ガーネスは諦めて、首を振った。
表に出てきて、彼は口を開いた。
「しかし、変わった建物だな」と運動場を見ている。
「雪に押し潰されないように設計したからな」
「設計? 誰が?」
「オレが」
「サブ、おまえはいったい何者なんだ?」
そこで、これまでの仕事を挙げていく。
「何がしたいんだ?」
「さぁね。オレも知りたい。冒険者だって、やるつもりはなかったんだ」
「リーダーだろ?」
「結果的に、そうなったってだけ。魔獣だってテイムするつもりはなかったんだ」
「後悔しているのか?」
「後悔してもはじまらないさ。ただ、どうしてこうなった、って思ってるだけ」
「ああ」
ガーネスは、少し会話をすると、宿屋へと向かった。
泊まればいい、とは言ったのだが、断られた。
飯が美味すぎて、腰を据えたくなる、と笑って。
セバスさんの容態をチェックする。順調に回復してきている。もちろん、まだまだ本調子ではない。
「そういえば」と彼に話す。「男手が欲しいよな。今回のことで、誰かを雇おうかと考えているんだが、どう思う?」
セバスさんの表情が翳る。
「ぎっくり腰は毎年なります。そのことを考えると、必要かと」
「だよね。セバスさんがどうこう言うつもりはないからね?」
「あ、はい」と顔を上げる。
要望を聞いて、メモを取る。
商業ギルドを訪ねる。
受け付けのスタッフに、用件を告げると、彼女は二階へと向かった。
すぐに彼女に名を呼ばれ、ギルマス執務室へと入る。
当然ながら、ギルマスのラーニャさんがいた。
「お久しぶりですわね、サブ様」
「ラーニャさんもお元気そうで」
「昨日のアーマードベアの件、ご苦労様でした」
「私は見てただけです。若者ふたりと、トリリーの活躍です」
「聞き及んでおります。それで今回は人を雇いたいと?」
「はい。セバスさんからも、イザというときのためにと」
「屋敷の勤め人、ですの?」
「ええ。いい人がいないでしょうか?」
「……」
彼女が言い淀む。だが、決心したようだ。
「サブ様、ご要望には添えないかと思われます」
オレは、思わず首をひねった。
「ヤルダさんのことをよく思われていないのです。ハーフエルフだからと。もちろん、彼女が悪いわけではありません。しかし、古くからの教えは残っています」
「あぁ、忘れてました。それでも彼女は許容されていますよね?」
「はい。その点は、大丈夫です。ただ、一緒に働くかと問われますと――」
「難しいと」
「はい」
まいった。ふつうに接する分には大丈夫だが、一緒に働くとか住むとかは難しいのか……。
「ほかのところから来てもらうことは?」
「それでも、彼女のことを受け入れるかどうか」
「ですよね」
ふたりでウンウンと唸っていたが、いいアイディアも浮かばない。
淹れてもらったお茶をひと口飲んだ。
ホッと息を吐く。
そこへ、ノックの音。
ラーニャさんが入室を許可すると、ひとりのスタッフが入室してきた。
「お話中、失礼します。ギルマス、こちらを」と書字板を渡してくる。
受け取り、それを読むラーニャさん。眉間にシワが寄る。それから、オレを見た。
「街道で魔獣が出現しました。移動中の商隊が襲われ、さきほど町にたどり着いたそうです。町にいる冒険者が招集されました」
「被害は?」
「ケガ人多数。重傷者もいるようです」
「魔獣は?」
「わかりません」
オレは失礼して、商業ギルドを出た。
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