549【“マヨネーズ”と魔獣被害】
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2話連続投稿します(2話目)
翌朝、厨房を訪れた。そこでは女性たちが朝食の調理を進めていた。
「おはよう」と挨拶に、全員から同じように返される。
「マナミ、できたよ」とハンドミキサーを渡す。
「えっ、昨日の今日で? もしかして、徹夜したんですか?」
「してないよ。ちゃんと寝ました」
「それならいいですけど」
「一応、クリアしたけど、一度洗ってから使って」
「ありがとうございます」
「“マヨネーズ”を待ってるよ」
「はい」
食卓には、軽い感じの量の料理が並んでいた。それぞれに小さめの器にマヨネーズがあった。それがふたつ。
「もしかして、“マヨネーズ”?」とハルキ。
「サブさんに」と説明するマナミ。「ハンドミキサーを作ってもらいました。ひとつはお酢を、もうひとつはビネガーを使いました。味の比較をしてみてください」
それでいただきますの挨拶して、食事となった。
やはり、お酢の方が優しい感じがする。ビネガーも悪くはないが、おそらく料理次第だろう。
「どっちも美味いな」とダルトン。
「うむ。どちらがいいかと言われたら、こっちだな」とランドルフ。指差したのは、ビネガー。
全員の意見を聞くと、こっちの世界の人間は、ビネガー派らしい。食べ慣れているからだろう。
「お酢も」とマナミ。「多くはないので、ビネガーと混ぜたものを試してみます」
「念のために」とオレ。「すべてのレシピを残しておいて。あとで、公表するかもしれないから。卵は、最初はここから。ニワトリを増やして、人に任せようと思う」
「なるほど。わかりました」
オレは執務室で、ケイナとミリンダの下着作製を続行する。ほかの面子は、町へと買い出しに行かせた。店が冬季閉店する前に買わないと、あとで困るからな。
昼食を食べて、お茶休憩をしていると、玄関ドアを叩く音が聞こえてきた。ヤルダさんが出てから、リビングへと来た。
「サブ様、冒険者ギルドからこちらが届きました」と書簡を差し出してきた。
受け取ると、そこには緊急討伐依頼の文字が。簡単な詳細には、アーマードベアが複数体が現れた、とある。
すぐに索敵さんで調べる。全部で四体いる。鑑定さんでそれぞれを調べると、一体は成長期を過ぎ、人間で言えば、中年クラス。もう三体は若い個体だ。だが、固まって行動している。
「サブ様」とヤルダさんに声掛けられた。そちらを向く。「使いの者が待機しております」
「わかった」
玄関へと赴く。そこには知らない少年。
「サブだ。返事を待っていたんだな?」
「はい。ギルマスから返事を聞いてこいと」
「だな。もう少し待ってくれ」
「はい」
ヤルダさんにシャインの居場所を尋ねる。
彼女は、ニワトリ小屋の掃除をしていた。
「シャイン」
「はい」と顔を上げて、オレを見る。
「トリリーに聞いて欲しい。アーマードベア討伐に行くか、と」
「魔獣討伐、ですか?」と真剣な顔。
「ああ。四体いる。被害が出る前に討伐したい」
「わかったそうです。私はどうします?」
「来てくれると助かる。トリリーとのやり取りが必要かもしれない」
「わかりました」
「もちろんだが、オレが君を守るから」
彼女はただうなずいた。
伝令の少年に、大黒猫を動かす、とドネリーに伝えてもらう。
オレとシャインは、冒険者の服を着て、トリリーとともに屋敷を出た。
シャインには、町を出るまで、トリリーに乗っていてもらう。
街なかを歩いていくと、人々がトリリーの姿に驚く。だが、オレとシャインがいるため、大騒ぎにはならない。
途中、そのことを聞きつけた仲間たちが集まってきた。
「どったの?」とダルトン。
「魔獣討伐だ。詳細は冒険者ギルドでな」
冒険者ギルドに入ると、冒険者たちが騒動に緊張していた。スタッフが入ってきたオレを見ると、すぐさま二階へと走っていった。もちろん、ギルマスを連れてきた。
「サブ、すまんな!」
「状況はわかっています。被害は?」
「森に狩りに出ていた冒険者が、獲物のツノウサギを何羽か取られただけだ。ただ、複数体を見たらしくてな。それで《竜の逆鱗》に依頼しようと思ったんだ。それなのに、なぜトリリーを?」
「みんな、買い出しに出てて、オレしかいなかった。被害が出る前に討伐した方がいいと判断した」
「わかった。まさかとは思うが、シャインの嬢ちゃんは?」
「連れていく。必要だからな」
「そうか。面子が揃っているのは? あぁ、買い出しだったな」
「装備は全員持ってるから、出られるよ?」とダルトンがウエストのポーチをポンポン叩く。みんなもうなずいた。
「云々している時間が惜しい。ギルマス、部屋をふたつ貸してくれ。男女で分かれて着替える」
「おう」
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