542【ベズーラたちの帰還】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
ここから、ランドルフの知り合い編です。
2話連続投稿します(1話目)
今話は、短めです。
それから二日して、広場で建設中だった、冒険者ギルドの仮庁舎が出来上がった。
決して大きくはないが、ギルドとしては充分に機能的だ。
「あとは様子見だ」と親方。
「お疲れ様でした」
おう、とひと言答えた親方。おのれの仕事の出来を見て、感慨にふけっている
ふとゴトゴトと音が聞こえてきて、そちらに向くと、建築作業をしていた人たちが、何やら作業をはじめていた。
「木材の乾燥小屋だ」と親方。そちらを見ている。
「乾燥小屋?」
「雨に降られたり雪に埋もれても、大丈夫なようにな。風通しもよくしておく必要もある」
「ああ」
小屋の建て方を見ていると、三角屋根にするようだ。への字の屋根と言えばわかるだろうか。
小屋は、屋根と柱で構成されたもので、ドアや窓などはない。壁がないのだから、ないのは当たり前だが。
三日後の夕方。
《守護獣の誇り》が村に帰ってきた。
報告は後回しにして、汗を流させて、夕食を振る舞う。
彼らは、舌鼓を打ち、腹を満たした。
お茶休憩。
そこで、狩人たちにも集まってもらって、ベズーラたちの報告を聞く。
手描きの地図を出して、ポイントごとに説明してくれるベズーラ。
みんなで、質疑応答を繰り返し、必要ならば地図に書き込んでいく。
狩人たちを呼んだのは、これからのことを考えてのことだ。
今後は、彼ら村人だけで村を運営しなければならない。いつまでも我々が留まるわけではないのだから。
彼らは、長年この土地に住んではいるが、ここまで本格的に調査したことはない。地図という存在も初めてだ。それを自分の中で擦り合わせて、今後に活かす必要がある。
報告を終え、解散。
ベズーラは、オレに話がある、と残った。
「それで?」と促す。
「調査も終わったことだし、一緒に戻りたい」
「わかった」
「それでなんだが、やはり一瞬で移動することになるのか?」
「ん? あぁ、移動方法か」
うなずくベズーラ。
この村までは、ウーちゃんの空間魔法に収めての移動だったからな。
「おそらく」と答える。
ベズーラが、やはりという顔。
「その、難しいだろうか、ふつうの旅は」
「ふつうに旅して帰るのか? それは君たちの自由だが」
「いや、違う。サブたちの旅に同行できないかと聞いている」
ん?とオレは首を傾げた。言ってる意味がわからない。
「確か、ふつうではないのだろう、サブたちの旅は」
それで話が見えた。
「そういうことか。つまり、オレたちの旅の仕方を知りたいのか」
うなずくベズーラ。
「もちろん、《竜の逆鱗》の秘密なのだと理解はしている。しかし、どうにも気になってな。たった数日でここまで来たんだ。それなりの方法だと思う。オレを眠らせることなく、連れてきたことも、理解できないのだ。おそらく、今後もずっと頭を悩ませることになる」
真剣なベズーラに、オレは頭を抱えたくなった。
人というのは、理解できそうでいて、理解できないことをなんとかして理解したいと思う生き物だ。たいていは途中で諦めるものだが、仲間からたびたび話が出れば、諦める前に再燃してしまう。
「わかった。説明はするが、一緒の旅は勘弁してくれ」
「仕方ないな。わかった」
「オレたちには、空間魔法使いがいる」
「空間魔法使い……エルフが使うとは聞いたことがある」
「それだ。それでベズーラたちを吸い込んだ。時間経過はとてもゆっくりだ」
「そういうことか」と納得顔。だが次の疑問。「それで移動方法は?」
「瞬間移動とか転移魔法とかじゃなく、空を飛んで移動した」
「あの浮遊する魔導具か? それは納得できんぞ。あんな速度じゃ、かなりの日数が必要だろ」
「違う。オレたちには、ドラゴン並みの魔獣が同行している。そいつを呼び出して、乗せてもらっているんだ」
「ドラゴン並みの魔獣、だと?」
顔が引きつれるベズーラ。
「ああ。魔獣の種類は言えない。その姿も見せるわけにもいかない。そういう契約を交わしたんだ」
ベズーラは、オレの目を見ながら、今言ったことを自分自身の中で噛み砕いている。
もちろん、オレはベズーラの瞳を見つめ返す。
じっとお互いに見つめ合っていたが、ベズーラが諦めたようにうなずいた。
「仕方ない。わかった」
その答えにホッとする。
そのあと、旅程の話に変更した。
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




