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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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542/648

542【ベズーラたちの帰還】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


ここから、ランドルフの知り合い編です。

2話連続投稿します(1話目)

今話は、短めです。

 それから二日して、広場で建設中だった、冒険者ギルドの仮庁舎が出来上がった。

 決して大きくはないが、ギルドとしては充分に機能的だ。

「あとは様子見だ」と親方。

「お疲れ様でした」

 おう、とひと言答えた親方。おのれの仕事の出来を見て、感慨にふけっている

 ふとゴトゴトと音が聞こえてきて、そちらに向くと、建築作業をしていた人たちが、何やら作業をはじめていた。

「木材の乾燥小屋だ」と親方。そちらを見ている。

「乾燥小屋?」

「雨に降られたり雪に埋もれても、大丈夫なようにな。風通しもよくしておく必要もある」

「ああ」

 小屋の建て方を見ていると、三角屋根にするようだ。への字の屋根と言えばわかるだろうか。

 小屋は、屋根と柱で構成されたもので、ドアや窓などはない。壁がないのだから、ないのは当たり前だが。


 三日後の夕方。

 《守護獣の誇り》が村に帰ってきた。

 報告は後回しにして、汗を流させて、夕食を振る舞う。

 彼らは、舌鼓を打ち、腹を満たした。


 お茶休憩。

 そこで、狩人たちにも集まってもらって、ベズーラたちの報告を聞く。

 手描きの地図を出して、ポイントごとに説明してくれるベズーラ。

 みんなで、質疑応答を繰り返し、必要ならば地図に書き込んでいく。


 狩人たちを呼んだのは、これからのことを考えてのことだ。

 今後は、彼ら村人だけで村を運営しなければならない。いつまでも我々が留まるわけではないのだから。

 彼らは、長年この土地に住んではいるが、ここまで本格的に調査したことはない。地図という存在も初めてだ。それを自分の中で擦り合わせて、今後に活かす必要がある。


 報告を終え、解散。

 ベズーラは、オレに話がある、と残った。

「それで?」と促す。

「調査も終わったことだし、一緒に戻りたい」

「わかった」

「それでなんだが、やはり一瞬で移動することになるのか?」

「ん? あぁ、移動方法か」

 うなずくベズーラ。

 この村までは、ウーちゃんの空間魔法に収めての移動だったからな。

「おそらく」と答える。

 ベズーラが、やはりという顔。

「その、難しいだろうか、ふつうの旅は」

「ふつうに旅して帰るのか? それは君たちの自由だが」

「いや、違う。サブたちの旅に同行できないかと聞いている」

 ん?とオレは首を傾げた。言ってる意味がわからない。

「確か、ふつうではないのだろう、サブたちの旅は」

 それで話が見えた。

「そういうことか。つまり、オレたちの旅の仕方を知りたいのか」

 うなずくベズーラ。

「もちろん、《竜の逆鱗》の秘密なのだと理解はしている。しかし、どうにも気になってな。たった数日でここまで来たんだ。それなりの方法だと思う。オレを眠らせることなく、連れてきたことも、理解できないのだ。おそらく、今後もずっと頭を悩ませることになる」

 真剣なベズーラに、オレは頭を抱えたくなった。

 人というのは、理解できそうでいて、理解できないことをなんとかして理解したいと思う生き物だ。たいていは途中で諦めるものだが、仲間からたびたび話が出れば、諦める前に再燃してしまう。

「わかった。説明はするが、一緒の旅は勘弁してくれ」

「仕方ないな。わかった」

「オレたちには、空間魔法使いがいる」

「空間魔法使い……エルフが使うとは聞いたことがある」

「それだ。それでベズーラたちを吸い込んだ。時間経過はとてもゆっくりだ」

「そういうことか」と納得顔。だが次の疑問。「それで移動方法は?」

「瞬間移動とか転移魔法とかじゃなく、空を飛んで移動した」

「あの浮遊する魔導具か? それは納得できんぞ。あんな速度じゃ、かなりの日数が必要だろ」

「違う。オレたちには、ドラゴン並みの魔獣が同行している。そいつを呼び出して、乗せてもらっているんだ」

「ドラゴン並みの魔獣、だと?」

 顔が引きつれるベズーラ。

「ああ。魔獣の種類は言えない。その姿も見せるわけにもいかない。そういう契約を交わしたんだ」

 ベズーラは、オレの目を見ながら、今言ったことを自分自身の中で噛み砕いている。

 もちろん、オレはベズーラの瞳を見つめ返す。

 じっとお互いに見つめ合っていたが、ベズーラが諦めたようにうなずいた。

「仕方ない。わかった」

 その答えにホッとする。

 そのあと、旅程の話に変更した。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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