536【ランドルフたちの苦戦と強力な魔獣】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
2話連続投稿します(1話目)
今話は、少し短めです。
拠点には、まだ誰もいなかった。
「みんなは、どうしてる?」とダルトンが聞いてきた。
索敵さんで、チェック。
「闘ってるね。相手は……オーガ五匹」
「ありゃ。形勢は?」
ランドルフチーム全員の状態を鑑定。オーガの方も。
「双方とも疲れが見えるね。まともにやり合っている感じかな?」
「念のために、行こうか」
みんなでうなずくと、浮遊して向かった。
ランドルフチームが見えてきた。索敵さんの教えてくれたとおりの状態。どうやら、みんなは大きなケガはしていないようだ。
「一応、声掛けてみる?」とダルトン。「何も言わないと、人の獲物を横取りする行為になるからさ」
そう、それは冒険者同士の礼儀だ。もちろん、彼我の差が開いている場合は、人命優先で助けに入るが。
「そうだな」ランドルフに声を掛ける。「ランドルフ! 助けが必要か!」
オーガを盾で押さえているランドルフが、こちらを見ずに答える。
「もう少し! やらせてくれ!」
「わかった!」
オーガたちもこちらに気付く。
そのスキを突いて、ハルキとエイジがそれぞれのオーガに深手を負わせた。
「決まったね」とダルトン。
そこから彼我の戦力差が開き、次々と屠られるオーガたち。
声掛けからおよそ十分で、闘いは終わった。
ランドルフを含めた五人がへたり込む。
念のため、索敵する。
「オーガの生死を確認した。危険な魔獣もいない」
「了解」とダルトン。「みんな、ポーションを飲んどけよ」
彼らは返事の代わりに、ポーションを取り出して、グイグイと飲む。
「あー、しんどかった〜」とハルキ。
「あのくらいなら」とダルトン。「手こずるほどでもないだろ?」
「いや」とランドルフ。ひと息ついたようだ。「最初は三匹だったんだ。一匹倒したところで、また三匹。もう一匹倒したら、また三匹。計九匹だったんだ」
「索敵してなかったの?」
「それが」とマナミ。「最初の三匹は、薄い反応しかなくて。ほかの六匹も接近するまでわかりませんでした」
「ありゃ、狩人だったか」
狩人は気配を消すのがうまい。本来の気配では、獲物に気付かれてしまう。狩りには必須能力だ。
「大型の獲物を探していたんだろうな」とランドルフ。体調が戻ったようで、立ち上がっていた。
すべてのオーガをオレが収納する。
「サブ」とダルトンに声掛けられた。「索敵で、オーガの集落を見つけて」
すでにチェックしてある。
「もっと奥の方にある。中規模だな」
「ほかに狩人は?」
「あとひとつ。似たような編成で動いているな。別方向に向かってる」
「なら、かち合わずに済むな」
「ああ」
とりあえず、拠点に戻ってきて、食事の準備をしながら、簡単な報告会。
ランドルフチームは、オーガ戦の前に、オークの十匹ほどと交戦して殲滅したそうだ。
「それ、群れ?」とダルトン。
「いや」とランドルフが否定する。「なんか遊んでいた感じだ。それほどの技量もなかったしな」
「へぇ。集落があるのかな?」とオレに振る。
索敵さんは、それをすでに見つけてた。
「さっきのオーガの狩人が向かった先にあるよ」
「あー、狙ってた?」
「そうみたいだな」
「全員で行けばいいのに」
「矜持が許さなかったとか、競争してたとかじゃない?」
「あいつらに?」そこで少し考えるダルトン。それから「まぁ、なくもないか」
「とりあえず、こっちには来てないから安心だよ」
「わかった」
「そっちはどうだった?」とランドルフ。
そこで報告。
「この森は、魔獣の種類が多いみたいだな」
「環境がいいんだろうね」とダルトン。「オーガたちがたらふく食べられるくらいだし。森のようすもほどよく日が差してるから、小型の魔獣も住みやすい。それを食べる中型の魔獣も」
「サブ」とランドルフがオレに声掛ける。「オーガ以上の魔獣はいるか?」
「ドラゴンの亜種がいるな」
「はぁ!?」とダルトン。「亜種って何!」
「ワイバーンレベルの知能のドラゴンだよ。空も飛ばないし、怒らせなければ大人しいよ。名前はアースドラゴン。知ってるか?」
「アースドラゴンかぁ」とホッとしてるダルトン。「話には聞いてるよ」
「オレは初めて聞くな」とランドルフ。「大丈夫なのか?」
「大丈夫。人間がイタズラしても怒らないって話。表面が岩みたいに硬くて、たいていの剣は通じないって」
「大きさは?」
「聞いた話だと、人が六人くらいは乗れて、それでも動けるって」
「大岩か小山かって感じかな」
「たぶんね」
「それ以外は」とオレ。「ユキオウ並みの大きさのウルフ系の魔獣が二匹いる。フェンリサル・スュニル、“フェンリルの息子たち”?」
「フェンリル!?」と男子ふたりが反応する。有名な魔獣?神獣?だからね。
「フェンリルじゃないよ」と笑いながら答えたのは、ダルトン。「見た目が伝説のフェンリルそっくりだから、そう言われるだけ。討伐依頼は出たことないし。依頼が出ても、相手にはしたくないから、誰も受けないけどね」
「発見報告はあるんですか?」とエイジ。
「あるよ。でも縄張りを侵さない限りは襲われることもないから」
鑑定さんが、その個体の情報を教えてくれる。
番のようだ。こちらの森を縄張りにしており、縄張りとしては広範囲なので、街道の向こう側に出ることはない。
サナル村に悪さすることはなさそうだ。
縄張り内にいくつかの寝床があり、そこを転々としている。
今は、だいぶ離れていて、遭遇するとも思えない。
不寝番の順番を決めて、身体を休めるために寝る。眠りは浅いが、野営では仕方ない。
※アースドラゴン
名称自体はあちこち使われているが、
本作でのイメージは巨大なリクガメ。
※フェンリサル・スュニル
Fenrisar synir。
『北欧神話』に登場する。
北欧神話における狼の兄弟。
スコルとハティが有名。
ウィキペディア参照。
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




