524【マーカス・アイアンハート】
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2話連続投稿します(1話目)
今話は、少し短めです。
城下だけあって、兵士御用達関連の鍛冶屋や用品店が多い。冒険者もありがたい物品が得られやすいようだ。
そうした店々を見てまわり、いくつか購入していく。
町巡りを終えて、オレたちは広場にやってきた。宿屋もそれなりにあるため、少し狭い。そのため、冒険者たちのテントとテントの間隔が近接していて、ストレスが溜まりそう。
それでも暗黙の了解なのか、比較的静かだ。
広場の管理は、兵士が担っていた。そのおかげかもしれない。
「泊まるのか?」とひとりの兵士に問われた。
「御苦労様です」とオレ。「私たちはアキタ村に滞在してまして、こちらには今後の参考にと」
「アキタ村? 珍しいな。あそこに宿屋はなかったはずだが」
「空き地にテントを張らせてもらっています」
「そうか。メシにも困っているのでは?」
「いえ。一般宅で食べさせてもらっています。美味しいですよ」
「美味しい? あぁ、すまない。あそこは変なものしか食べないと噂されていてな」
「確かに独特ですが、不味いものはないと思いますよ」
「そうなのか。しかし、出す店もないからな。真偽のほどがわからんのだ」
「なるほど。こちらの方々は、あのアキタ村のことに興味はあるんです?」
「興味というよりは、あまりよくないイメージだな。言葉が通じないこともあって、あそこに行きたがる人間はいない」
「まぁ、そうですよね」
「しかし、あそこに泊まるということは、理由があるのだろう?」
「ええ、いろいろと。それで商売にはなりませんがね。個人的にものの購入をしています」
「いったい何を? 言っては悪いが、あそこは麦らしいものを育てたりはしているが、村人しか食べないと聞いている。ほかに何かあるとも聞いたこともない」
「その食べ物を余った分だけ購入しています」
「余るのか?」
「これまでは、余ったら、保存食にしてたみたいですね」
「そういうことか。それを購入しているのだな」
そこで考え込む兵士。
「なにか?」
オレの声掛けで思考から抜け出る兵士。
「すまない。アキタ村での滞在は、どのくらいを?」
「数日はお世話になろうかと」
「ならば、お邪魔しても構わぬだろうか」
「私たちは構いませんが。何用で?」
「あぁ、すまぬ。アキタ村をこの目で見ておこうと思ってな」
「はぁ」
オレの気の乗らない返事に、その兵士が何かに気付いた。
「名乗っていなかったな。このチタラ城を預かることになった元兵士団団長のマーカス・アイアンハートだ」
「すると、この土地の領主様と?」
うなずく兵士。
「とはいえ、一時的なものだ」と気楽に言う。「領主代行というべきか。ゴウヨーク国からの正式な後継者が来られたら、お任せするつもりだ」
「それは失礼を。ですが、ここにいてもよろしいのですか?」
「うむ。書類仕事は任せておけるのだ。身体を動かしている方が性に合っていてな」と笑う。
「なるほど。それでアキタ村を見てみたいと?」
「そうだ。一度は見ておきたいとは思っていたからな。しかし、言葉も通じぬとなると、そうもいかぬ」
「確かに。そこに我々が来たと」
「言葉もわかるのだろう?」
「多少」
「それでもきっかけにはなる」
それで了承し、明日の朝に、村門で待ち合わせることになった。ミサトさんに尋ねてみてダメならば、城の門衛に伝言を頼むことも約束して。
「しかし」とオレ。「テントが多いですね」
「ん? ああ。商人とその護衛の冒険者たちだ。ゴウヨーク国側の町や村に駐屯している騎士相手に商品を運んでいるのだそうだ」
「ああ」
「どうやら騎士たちの中に、商人にツテのある者がいたらしい」
「彼らもよろこびますね」
「彼ら?」
「私たちは、ゴウヨーク国から来たのです。途中途中の町や村に寄りましたが、元エルゲン国の騎士隊の方々が守られておりました」
「ほぉ。では、道中は安全なのだな」
「街道に魔獣は出ますが、盗賊の存在は確認していません」
「ありがたい情報だ。あとで商人たちに話しておこう」
もう少し話して、オレたちは広場を離れた。
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